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吉高由里子×松下洸平『最愛』9話。母から子への愛が事件を起こしたのか?謎のまま最終回

  • 2021.12.17
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殺人事件に関与したのは誰か。そして何も知らないと思っていた大輝にも秘密が……? ドラマを愛するライター・釣木文恵とイラストレーター・オカヤイヅミが『最愛』9話を振り返ります。いよいよ最終回!

加瀬がペンを探す27秒

梨央(吉高由里子)が持っていた、この世に5本しかないペン。そのペンが殺人現場に残されていたと大輝(松下洸平)から知らされる。つまり梨央以外でそのペンを持つ母・梓(薬師丸ひろ子)、兄・政信(奥野瑛太)、加瀬(井浦新)、後藤(及川光博)の中に事件に関与している者がいるのだ。

まず、梨央は加瀬にペンのありかを聞く。最終回直前、1時間のうちにいろんなできごとが展開していくこの9話の中で、加瀬がペンを探す時間がしっかりとられているのがすごい。「あるはずだけど」と言ってからペン入れを探し、さらに鞄の中を探して、実際にペンが出てくるまでたっぷり、実に27秒。その間、梨央と同様、視聴者もドキドキさせられた。ほっとしたのもつかの間、梓の「(ペンが)見当たんないのよ」に不安を募らせる梨央。

梓が内々で済ませようとしていた寄付金詐欺について、週刊誌に記事が出る。身の危険を感じていたしおり(田中みな実)が、編集部にPCを預けていたのだ。8話で後藤が壊していたPCを見て、8話レビューに疑いなく「しおりのPC」と書いてしまったが、誤りだった。おそらくは詐欺の証拠が残っている後藤自身の、あるいは関係者のPCなのだろう。制作側のミスリードに乗っかってしまった。

ここにきて暴かれる? 大輝の嘘

週刊誌の記事はまたたく間に広がり、真田ウェルネスはまたも窮地に陥る。SNSで話題が広がっていく様子がリアリティある描かれ方をしていて、『最愛』と同じ新井順子プロデュース、塚原あゆ子演出の『MIU404』を思い出させる。YouTuberらしき男性二人が「寄付金詐欺をしている会社が脳の薬を開発してるって怖くないっすか」と訴えかける様子。これまでの梨央を観てきた視聴者としては寄付金詐欺と新薬開発に全くなんの関係もないことがわかる。けれど、週刊誌の報道でしかこのことを知らなければ、自分もドラマの中の人々と同じように企業ごと信用ならないと拒絶してしまいそうだ。

スポンサーを押さえるという相変わらず強引なやり方で週刊誌の連載を止める加瀬。しかし「うちを潰したところで収まりますかね」とデスクに吐き捨てられた通り、真田ウェルネスの寄付金詐欺の話題はワイドショーに取り上げられてしまう。株価は暴落し、梨央の家にも会社にも マスコミが押し寄せる。

大輝に頼んで姉に料理を届けさせるという優(高橋文哉)の機転で、大輝はマスコミから梨央を守り、ひとときあたたかな時間を過ごす。料理を温める電子レンジ一つとっても、よぶんな機能のついていないターンテーブル型で、彼女が本当に新薬開発を目指して質素な暮らしをしてきたことが伝わってくる。息詰まる展開のなか、二人の時間だけが安らぎかと思いきや、終盤で大輝が15年前、事件の現場にいたかもしれないことが判明する。大輝だけは信じていたのに……!

二人の母親、その愛情のかたち

8話で声だけ登場した大輝の母親は、いわゆるイメージとしての「田舎の母親」らしい雰囲気だ。息子にどぶろくなどの荷物をいつも送っている様子。息子が心配で電話をかけながらも、「クビになったんやってぇ?」と事態をざっくりとしか把握していない感じ。梨央と電話できて、うれしそうにどんどん話すところ。どれも、梓が持ち合わせていない“母親らしさ”だ。

8話からどうも怪しい雰囲気を出していた梓。9話では、昭(酒向芳)としおり、二つの事件両方でアリバイがない人間として警察にマークされるまでに。そしていよいよ真田ウェルネスが危うくなったとき、梓は会見を開き、社長として後藤の犯した詐欺をまるごと自分でかぶる。その直前、梨央に電話して「私、やっぱりお母さんには向いてないみたいね」と伝える梓の手帳には、おそらく梨央の入学式の写真が挟み込まれている。一般的な“母親らしさ”とは違う形で、梓にしかできないやり方で、彼女は最愛の娘を守った。

会見で「娘も、真田家の人間も、誓って殺人事件には関わっておりません」と梓が宣言した瞬間、ペンを持つ5人の顔が映し出される。梓の言葉は本当か、だとしたら誰までを「真田家」に含めているのだろうか。

会社に殉じる後藤、衝撃の階段落ち

あんなに冷徹に見えた後藤が、9話ではもはや人間味しかない。自分のしたことも全て梓がかぶったと知って冷静ではいられなくなり、止める梨央を振り切って警察に向かおうとした結果、階段から転げ落ちてしまう。

階段落ちは衝撃の映像だった。このシーンで、スタッフは後藤が落ちる瞬間をきちんと映すほうを選んだ。再び立ち上がってふらふら歩き出し、真田ウェルネスのロゴマークの上で倒れる後藤は、自分の最愛の対象である会社に殉じるかのようだ。

1話冒頭、血まみれの手で髪をかきあげた梨央の姿はこのシーンにつながるものだった。頭を打った後藤の血で手を汚しながら、警察の出頭要請に応じる梨央。梨央が罪を犯したシーンではなかったことに安心したいが、後藤の姿がショックでなかなか落ち着かない。

「大丈夫」と告げる似たもの親子

梨央は加瀬に「大丈夫じゃない時も大丈夫っていうよね」と見抜かれていた。
全ての罪をかぶり、毅然とした表情で警察に向かいながら加瀬に「1人で大丈夫よ」という梓。
後藤の事故を知らせる電話のさなか警察に声をかけられ、加瀬に「1人で大丈夫」と伝える梨央。
やはり二人は親子なのだ。

大輝の大学時代の同級生で富山県警の藤井(岡山天音)は梓となぜ会っていたのか。大輝は15年前、どこまで知っていたのか。あらゆる糸がもつれたまま、最終回がやってくる。

『最愛』公式サイト(TBS)

脚本: 奥寺佐渡子、清水友佳子
演出: 塚原あゆ子、山本剛義、村尾嘉昭
出演: 吉高由里子、松下洸平、田中みな実、佐久間由衣、高橋文哉 他
主題歌: 宇多田ヒカル「君に夢中」

『最愛』1イメージイラスト/オカヤイヅミ

(イラストでも全話振り返ります)

『最愛』2イメージイラスト/オカヤイヅミ

『最愛』3イメージイラスト/オカヤイヅミ

『最愛』4イメージイラスト/オカヤイヅミ

『最愛』5イメージイラスト/オカヤイヅミ

『最愛』6イメージイラスト/オカヤイヅミ

『最愛』7イメージイラスト/オカヤイヅミ

『最愛』8イメージイラスト/オカヤイヅミ

『最愛』9イメージイラスト/オカヤイヅミ

吉高由里子×松下洸平『最愛』9話

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