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新型コロナ禍で「濃い味付け」を好む若者が増加したワケ

  • 2021.12.8
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私たちのライフスタイルに大きな変化をもたらした新型コロナ禍。実は、人々の味付けの嗜好も以前と比べて変わっていたようです。ホットペッパーグルメ外食総研・上席研究員の稲垣昌宏さんが、独自調査を基にリポートします。

ホットペッパー総研の調査で明らかに

2021年11月とある土曜日の午後。東京・銀座の人気ラーメン店には、若者の行列が。

新型コロナ禍になって久しく繁華街に出かける機会が激減していましたが、ようやく緊急事態宣言も解除され、飲食店も条件付きながら通常営業をできる環境となり、久しぶりに活気が戻った風景を目にしました。

コロナ禍で、味付けに対する若者の嗜好に変化が?(画像:写真AC)

ただ、一時期は若者と同じくらいの勢いで行列に加わっていた外国人旅行者の姿は、まだありません。都内飲食店の本格的な景気回復には、まだしばらく時間を要しそうです。

リクルート(千代田区丸の内)の外食市場に関する調査・研究機関「ホットペッパーグルメ外食総研」ではこのたび、長引くコロナ禍の影響で食生活や味の嗜好にどのような変化があったかを調査しました。

その結果を、冒頭のラーメン店の行列とも関わりのありそうなデータから紹介します。

コロナ禍で若者の味付けの好みについて、どうやら変化があったようです。

コロナ禍で「濃い味付けを好むようになった・計」(※)が全性年代では7.8%、「薄い味付けを好むようになった・計」が同8.0%と均衡している中、20代男性では「濃い味付け」派が計14.3%と「薄い味付け」派の計6.9%を大きく上回っています。

※「濃い味付けを好むようになった・計」は、「やや好むようになった」と回答した人との合計。以下、同じ。

若者は濃い味、年配者は薄味を好む

また、20代女性でも「濃い味付け」が計10.5%とふた桁に達しています。一方、60代女性では「薄い味付け」が計11.8%、「濃い味付け」が計4.3%と逆の傾向にあります。

濃い味付けを好む傾向は、20代の女性にも見られた(画像:写真AC)

総じて、男女ともに年代が若くなるほど「濃い味付けを好むようになった・計」が多くなる傾向にあります。

さまざまな制約があった生活の中で、「激辛」がブームになるなど濃い味付けで刺激を求める傾向が若年層にあるのかもしれません。

外食で濃い味や激辛の代表とも言えるのが、ラーメンやカレー。緊急事態宣言解除とともに、行列が戻るのも納得なわけです。

若い女性は間食・ブランチが増加

また、基本となる食事の回数と食べる量についても調べました。

食事の回数で目立ったのは「間食をとる回数」で、「増えた・計」(※)が17.5%と多く「減った・計」との差も大きいことです。

※「非常に増えた」「やや増えた」の合計。以下、同じ。

コロナ禍で高まった食事の自由度

また、「朝食と昼食を兼ねる食事(ブランチ)をとる回数」も「増えた・計」が7.2%とやや多い結果でした。食べる量については、「夜食で食べる量」で「減った・計」が8.9%と「増えた・計」との差が目立ちました。

自宅で過ごす時間が長くなったことや、飲食店が深夜まで営業していないことなどが背景にありそうです。

「間食」について、より詳しく見ると「増えた・計」の多さ、また、「減った・計」との差においても、男性よりも女性で間食の増加が目立っており、「増えた・計」の最多は20代女性で31.1%。

また、男女ともに年代が若くなるほど「増えた・計」が多くなる傾向です。

コロナ禍ではテレワークの合間の間食が増えたという若年層も(画像:写真AC)

コロナ禍では、食事の時間の自由度が高まったと考えられます。

在宅勤務やリモートワークの増加で、ランチ時間を12~13時にきっちり食べる必要性がなくなったり、朝の始業時間も9時ちょうどスタートでなくてもよい柔軟性が高まったことで、朝ご飯の時間も固定されなくなった可能性があります。

また、夕食の時間も、飲食店の営業時短により、早い時間にシフトしたことも考えられます。

食事の変化、マリトッツォ人気にも影響?

夕食が早まると、昼に量を食べ過ぎると夕方までにおなかが空かないといったことが起こったりもします。

そのため、朝昼を兼ねたブランチを12時より前に食べる、または昼食を抜いて、間食(おやつ)で済ます、といった食事バリエーションの増加が起こっているのではないかと思います。

コロナ禍でマリトッツォが流行したことと関連も?(画像:写真AC)

2020年から流行している商品と言えばマリトッツォ(イタリア発のパンにクリームを挟んだ伝統的なお菓子)ですが、スイーツともご飯とも言えるボリューム感が、こうしたコロナ禍の需要にはまったことも流行のひとつの要因かもしれません。

たくさん摂取するようになった食品とは

また、主要な食物・栄養素について、摂取する意識の変化も尋ねました。

「摂取する意識が高まった・計」と「摂取しない意識が高まった・計」の各スコアやその差を見ると、「摂取する意識が高まった・計」の割合が高かったのは、食物では「野菜類」(46.5%)、「発酵食品」(34.5%)。

栄養素では「善玉菌(乳酸菌・ビフィズス菌など)」(34.2%)、「食物繊維」(32.4%)などでした。

摂取しなくなったのは酒、糖質、脂質

一方で、「摂取しない意識が高まった・計」の割合が「摂取する意識が高まった・計」を上回った項目は、食物では「酒類」(22.0%)、栄養素では「糖質・糖分」(18.3%)、「脂質・油分」(17.6%)などでした。

こうした食習慣の変化は、緊急事態宣言が解除されたからといって、簡単にもとに戻ることはなく、しばらくは続く消費傾向だと考えられます。

仕事柄、よく「いつ外食が元の通りに戻りますか?」と聞かれますが、元に戻るというよりは、どちらかというと未来が加速して訪れたという感覚の方が強いです。

テイクアウトやデリバリーと外食は今後も使い分けが進むと思いますし、食べる時間帯や量の自由度が上がることも将来起こったであろう変化がコロナ禍で今、前倒しで起こっているという感覚です。

「食べ方の進化」に合わせて、飲食店もまた、進化してくことに期待したいと思います。

稲垣昌宏(ホットペッパーグルメ外食総研・上席研究員)

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