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文学『ブルックリン・フォリーズ』ポール・オースター:やさしい気持ちになれる、心がふっと温かくなる珠玉の名作選Vol.13

  • 2021.12.5
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文学『ブルックリン・フォリーズ』ポール・オースター

不器用な人たちの悲惨な人生慰めや労いの言葉はなくともそこにはいつも、誰かがいる

『ブルックリン・フォリーズ』ポール・オースター

主人公は、60歳を前に生きることに絶望し、静かに死を迎える場所として故郷へ戻ってきた中年のネイサン。彼は人生最後のプロジェクトとして、自分や周囲の人々の愚行を書き留めようと思い立つ。

描かれるのは、国文学者としての将来を嘱望されながら挫折し、タクシー運転手になった甥や、宗教家の夫に監禁状態にされた姪など、不器用な人物たちの半ば悲惨な生き方。人生は色々あるなと思う一方、彼らの側には、特段慰めるわけでも、労うわけでもなくとも、必ず別の誰かの存在があることに救いを感じる。

一人ではないことの心強さがじんわり胸に沁みるとともに、読み終わると自然と誰かに、やさしくしたくなる。

一人の人間としての長い、波乱含みのキャリアのなかで、
自分が犯したあらゆる失態、ヘマ、恥、愚挙、粗相、
ドジを極力シンプルで明快な言葉で綴ろうと思ったのである。

『ブルックリン・フォリーズ』より

談・サヌキナオヤ

Information

『ブルックリン・フォリーズ』ポール・オースター

故郷・ブルックリンに戻り、人生の集大成として「人間愚行の書」を書くことを決めたネイサン。古本屋で甥のトムと再会したことを機に、思いもかけない冒険が始まる。柴田元幸訳。新潮文庫/¥880。

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