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Twitterがドラマの満足度を高める。共感で広がるコミュニケーションの場

  • 2021.12.1
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2011年の『天空の城ラピュタ』の放送時に「バルス現象」が起こって以来、地上波のTVドラマの盛り上がりはTwitterなしには語れない。Twitterでの反響が視聴率に直結することもある。その背景や楽しみ方はどのようなものなのか。Twitter Japan(以下Twitter社)のマーケティング・インサイト&アナリティクスチームに所属する佐藤建一郎さんの話から、ユーザーのマインドを考える。

娯楽の多様化によってTwitterで仲間を探すように

『半沢直樹』(TBS系)や『カルテット』(TBS系)、『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)など、ここ数年のドラマのヒットに大きく貢献しているのが、Twitterだ。いまやSNSやYouTubeのチャットなどで同じ興味を持つ人たちと盛り上がりながら動画を鑑賞するのは当たり前のこと。なかでもリアルタイムのコミュニケーションに強いTwitterは、テレビを観ながら番組への意見や感想をツイートしたり、他のユーザーのツイートを楽しんだりするのに適している。

今回お話しをうかがったTwitter社の佐藤建一郎さん。Harumari Inc.

Twitter上で誰かと一緒に番組を観るというスタイルがここまで広がったのには、コンテンツが多様化しひとりでテレビを観ることが増えたことが影響している、と佐藤さんは分析する。

「ネットの普及によって動画配信コンテンツやゲームなど、自宅でできる娯楽が多様化しています。そのためひとりでテレビを観る人も多くなりました。こどもの頃、お茶の間で家族と盛り上がりながらTVを観ていたような感覚を求める人が増えていて、その役割をTwitterが担うようになったんだと思います」

その際、Twitterへの参加の仕方は人によってさまざまだという。積極的に番組の感想をツイートする人も入れば、ただタイムラインを追いかけているだけの人もいる。使い方の正解はなく、他人のツイートを観ているだけでも十分楽しめると佐藤さんは語る。

「テレビだけのデータではないのですが、Twitterを毎日使っている人は全ユーザーの25%ほど。一方で、全ユーザーの3割はほぼツイートせず見るだけのアカウントなんです。話題に対して人の感想が気になることがあるように、ドラマでも『泣いた!』『ハマった』などのコメントを見るだけで満足することがありますよね。意見を語りたい人だけではなく、人の意見を知りたいタイプの人のニーズも満たしているようです」

ドラマとTwitterを組み合わせると脳の満足度も高まる

さらに、Twitter社ではこの現象が本当に人の満足度を高めているかどうか、脳波で感情を測定する実験を行ったそうだ。2020年にTBS日曜劇場で人気を博した『半沢直樹』の最終話において在宅型ニューロリサーチ(脳波を活用した感性把握技術)を活用し、脳の活性度、集中度、ワクワク度、興味度、好き度、満足度、ストレス度、ポジティブ度の8つのカテゴリを計測。調査対象者は、Twitterを使用しながらドラマを視聴するグループとTwitterを使用していないでドラマを観る2組のグループだった。両者を比較したデータがこちらだ。

「『半沢直樹』視聴者に対する脳波計測調査」(2020年9月):電通サイエンスジャムHarumari Inc.

データから、「テレビのみで『半沢直樹』を視聴したグループ」と比べて「Twitterを使いながら番組を観ているグループ」の方が番組による「満足度」や「ポジティブ度」が高く、反対に「ストレス度」が低いことが読み取れる。

「『Twitterを使いながら『半沢直樹』を観ている人の方が、視聴満足度が高い』という私たちの仮説を実証するために行った実験です。数値だけでなく感情を分刻みでみると、ほぼすべての時間帯においてTwitter利用者の「満足度」がテレビ番組のみを視聴するグループと比べて高いのがわかります。また、番組が盛り上がるシーンに合わせて満足度が上がっているので、山場とTwitterの盛り上がりが連動しているのも面白いと思います」

「『半沢直樹』視聴者に対する脳波計測調査」(2020年9月):電通サイエンスジャムHarumari Inc.

この脳波計測の実験によって、「ドラマとTwitterを一緒に楽しむ」という視聴スタイルが、一種のトレンドではなく脳科学的にも満足度を高めていることがわかった。ちなみに、『半沢直樹』はTwitterでも驚異的な盛り上がりを見せており、全10話連続でTwitter世界トレンド1位を獲得している。テレビのリアルタイム視聴とTwitterでの盛り上がりはさまざまなコンテンツで見受けられてきたが、この威力からも番組を観ながらTwitterへアウトプットをする人が多いことがわかる。

テレビとTwitterの楽しみ方は2つのパターンがある

『半沢直樹』は“リアルタイムで番組を視聴する”ことでTwitterが盛り上がったが、佐藤さんいわく、Twitterを使ったドラマの楽しみ方は、みんなで一緒に同じタイミングで番組を視聴する「スタジアム/劇場型」と、ドラマの考察をツイートしたり人の感想を読んで共感したりする「同好会/サークル型」の2つのパターンがあるという。

Twitter社より引用Harumari Inc.

「スタジアム/劇場型」とは、スポーツ観戦でシュートが決まった瞬間に歓声が上がるのと同じようにみんなで同時に呟き一体感を楽しむもの。番組のクライマックスや盛り上がりに合わせて自然発生的に生まれることが多く、『天空の城ラピュタ』の「バルス現象」もそのひとつだという。

「ラピュタの『バルス』のように、ネット上で繋がって何かをみんなでやってみようというのは日本独自の文化ですよね。たとえば、アメリカの場合、タイムゾーンが複数あるうえに、カルチャーも州によって多様なので、なかなか同じタイミングで同時に盛り上がることはないんです」

テレビはリアルタイムで楽しむというよりも、録画して好きなときに観るという視聴方法が主流であったが、「スタジアム/劇場型」の楽しみ方によってドラマをリアルタイムで観るという見方が再び広がっているという。佐藤さんいわく、共感できるコメントがタイムラインに並び、同じ空間を心地よく消費する感覚が味わえるそうだ。

「最近ではドラマや作品の公式アカウントの活躍もめざましいです。たとえば、『金曜ロードショー』の公式アカウントでは、映画放送中にリアルタイムでみどころや裏話をツイートし、視聴を盛り上げています。公式アカウントが率先してコミュニティ感を作っていくような動きが面白いですよね」

一方で、同じ興味や趣味を持った人たちが集まり、より深く意見や感想を共有するのが、「同好会/サークル型」といわれる盛り上がり方だ。こちらは、リアルタイムであることはさほど重要ではないという。

「『同好会/サークル型』は2つのパターンに分類されます。ひとつめは、日本の『コミケ文化』に通ずる同好会的なもの。たとえば、ファンが人気ドラマのスピンオフ作品を勝手につくってTwitterで公開する。そこにファンたちが乗っかってまた輪が広がっていきます。ふたつめが、NetflixやPrime Videoの作品について何かツイートして、それに対して誰かが『いいね』を押すという簡単なアクション。自分の感じたことを誰かに聞いてほしいという文化は日本に限らずあるので世界的に共通していえることです」

このような盛り上がり方があるなかで、Twitterで盛り上がりやすい作品の傾向やジャンルはあるのか。佐藤さんは、Twitterで盛り上がるためには、楽しむための切り口がどれだけ作品に用意されているかが重要だと話す。近年でいうと、2019年にテレビ東京系の深夜枠で放送された、『きのう何食べた?』がその条件を満たしているそうだ。

切り口が多い&少しニッチなものがウケやすい傾向

いまでは映画化されるほど人気な『きのう何食べた?』も、初回の視聴率はあまり高くなかったという。しかし、深夜枠にもかかわらず、Twitterでは初回放送時に世界トレンド1位を記録。このTwitterでの盛り上がりが注目され大きなバズとなり、後半に向けてグングン視聴率を伸ばしていったそうだ。

「『きのう何食べた?』は、もともと原作コミックが人気だったのですが、BLであり、料理の話や人間ドラマを描くなど楽しむための切り口が他のドラマよりも多かった印象です。興味を持つきっかけとなる入口が色々あるので、どんな人でも入りやすい。それから、メジャー作品ではなく少しニッチな作品だった点もよかったのかもしれません」

Twitterではややニッチなジャンルであればあるほど、バズ化する傾向があるそうだ。マスメディアでは抑えられないような興味関心のあるジャンルの受け皿としてTwitterが機能しているという。趣味が多様化している現代において、ハッシュタグを辿ればどんなジャンルも情報収集できて盛り上がれる、気持ちの置きどころとなっている。

ドラマ×Twitterの盛り上がりはさまざまなパターンがあり、作品のジャンルによっても楽しみかたも違う。しかし、共通するのはみんな誰かと共感し盛り上がりながら楽しく作品を観たいと思っているということ。同じドラマを見ているという共通点があるだけでどんどん輪が大きくなっていく。これから年末にかけてドラマをはじめスペシャル番組が増えていく時期。Twitterを活用して共感の輪を広げよう。

協力:佐藤建一郎さん(Twitter JAPAN)
https://twitter.com/TwitterJP

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