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『青天を衝け』35話。千代「ぐるぐるいたします!」明治の女性たちがアメリカ前大統領接待で大活躍

  • 2021.11.20
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吉沢亮主演NHK大河ドラマ「青天を衝け」。「日本資本主義の父」とも称され、幕末から明治を駆け抜けた実業家・渋沢栄一を主人公に物語が進みます。明治政府を辞め、第一国立銀行の総監役として、新たな道を歩み始める栄一(吉沢亮)。35話のサブタイトルは「栄一、もてなす」、アメリカからグラント前大統領夫妻が来日します。民側の接待の責任者となった栄一たちは贅を尽くした華やかな趣向を考えますが、グラントは日本の家を訪問してみたいと希望、渋沢家に白羽の矢が立って急展開。妻の千代(橋本愛)を中心に「おもてなしプロジェクト」が発動、千代の才覚が輝きました。

吉沢亮主演、大森美香脚本の大河ドラマ「青天を衝け」第35話。
アメリカのグラント前大統領が来日。大統領経験者が日本にやって来るのははじめてのこと。諸外国に日本を一等国と認めさせ、不平等条約を改正する糸口としたい政府にとっては絶好の機会。おもてなしに気合が入るのも当然だろう。

官と民が一体となって歓迎することが重要ということで、民間側の接待委員は渋沢栄一(吉沢亮)が務めることに。妻・千代(橋本愛)たちも“おもてなし”に駆り出されることとなる。

キャッキャウフフと明治の女子会が盛り上がる

千代をはじめ、渋沢喜作の妻・よし(成海璃子)、平岡円四郎の妻・やす、徳川慶喜の妻・美賀君と、本作では女性側の目線もたびたび描かれてきた。
ただ、明治維新に突っ走る男たちと、それを待っている妻という構図が基本。女性はあくまで〝見守る〟ポジションだった。
しかし、明治がはじまって10年以上がたった。女性たちも主体的に動きはじめる。

井上馨(福士誠治)とともに2年間ヨーロッパを回り、帰国したばかりだという妻・武子(愛希れいか)を中心に、女性陣による西洋風おもてなし講座が開かれた。
シェイクハンドやハグ、親愛の証として歯を見せて挨拶をする方法。
とまどいながらも笑顔の練習をする千代たちにニヤニヤしてしまう。
やがて、おもてなし講座そっちのけで女子会モードに突入。

「はじめて夫の洋装を見たときはゾッとしました」
「マゲって粋だったわよね~!」
「私は明治男のあのヒゲもイヤ!」
「井上さんも、武子さんのことを“ワイフ”とお呼びなのよ~!」

ワーキャーウフフな女子会に、保守的だった千代も「おなごも変わらなくてはならねぇ!」と前のめりに西洋対応していく。

ぐるぐるいたします!

グラントの気まぐれで、突然、渋沢家を訪問することになった際も、栄一は「どうすんべぇ~」とうろたえるばかりだったが、千代は「ぐるぐるいたします!」とがぜん張り切っていた。
日本では一般男性にすら参政権のない時代。女性解放運動がはじまるのはまだまだ先のこと。

しかし、これまでは「お国のことは男の問題」と蚊帳の外に置かれていた女性が、アメリカ前大統領のおもてなしという、国にとって重要な役割を担うことができる喜びに「ぐるぐる」していたのではないだろうか。

これまでは栄一の「ぐるぐる」に振り回されるばかりだった千代だが、立場が逆転し、この“おもてなし”では栄一を引っ張っていく。
まだ完成していなかった飛鳥山の家を大急ぎで仕上げ、血洗島名物・煮ぼうとうを振る舞うなど大活躍。

各国で派手な接待を受け続けてきたグラントが、本当に喜んだのは煮ぼうとうのように、素朴で心のこもったおもてなしだった……という、ベタな展開だった。
ただ、ドラマ中でも語られている通り、このグラントのおもてなしが、日本が一等国として認められる足がかりにはなりそうもない。

「これほど大がかりにもてなされても
日本の期待に応えるようなことなど何もできない」

グラントは大統領時代、数多くの汚職やスキャンダルで急速に支持を失い、「最悪の大統領」の一人とも称されている。

大統領辞任後、アメリカから追われるように、日本を含む世界旅行に出ているので、ホントに何の実権もないのだ。
それでも栄一は「意味なんかどうでもいいか。何よりお千代のあんな顔を見るのははじめてだ」と、これまで暗い顔をすることの多かった千代が嬉しそうに働いているのを見て満足げだった。

……まあ、暗い顔をしていた原因の大半は栄一なんだけど。

千代ちゃんの運命は……

千代は前回も、思い上がった書生たちを一喝したり、養育院の運営に携わったりと、“よくできた妻”感を放ちまくっていた。
栄一も一連のお千代大活躍にはグッときたようで、

「お千代は世界に冠たるおなごだ。極上だ。かけがえのねぇ奥さまだで! どうしても言いたくて言いたくてしかたねぇ! 惚れ直した、ありがとうお千代!」

なんて柄にもないことを言ってる。
で、一緒に住まわせている愛人と子はどうしたんだとも思ってしまうが……。

さてこの時期、日本ではコレラが大流行している。
現在の日本政府の新型コロナ対策と同じように、当時の明治政府もコレラに対して有効な対策を打つことができず、民衆の不満がたまりまくっていた。この不満が、自由民権運動につながっていくこととなる。

予告編で思いっきりネタバレしてしまっているので書いてしまうが、この流行のせいで千代もコレラに感染して……という展開が待っている。

栄一と結婚したと思ったら、尊王攘夷にかぶれて家を飛び出してしまい、やっと生まれた長男は早逝。ようやく家族一緒に暮らせると思ったら、栄一の不倫が発覚。そして不倫相手&その子と一緒に暮らすことになる……。

つらい思いばかりしてきた千代が、ようやく自分を活かせる場所を見つけ出したのに、この展開はあんまり(史実なんだけど)。

最期にちょっとでも幸せになってもらいたいところだが……

■北村ヂンのプロフィール
1975年群馬生まれ。各種面白記事でインターネットのみなさんのご機嫌をうかがうライター&イラストレーター。藤子・F・不二雄先生に憧れすぎています。

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