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ネットとリアルを行き来する。“売らない”売り場で変わる買い物スタイル

  • 2021.11.13
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時代によってユーザーの嗜好や行動は変わる。それに合わせて新たな業態や店舗デザインが生まれてきたなかで、いま注目されているのが、オンラインとオフラインが融合した「OMOストア」だ。利便性や体験、出会いというさまざまな観点から私たちユーザーに新たな発見を与えてくれる、話題の3店舗を紹介する。

80年代のカタログ通販から90年代のテレビショッピング、そしてテン年代のECと、時代とともに進化する買い物の仕方。さらにここ数年はEC通販を発展させた新しい買い物のスタイルが生まれている。それが「OMOストア(Online Merges with Offline)」といわれる、オンラインとオフラインが融合した買い物の業態だ。もともとは消費者の行動を促す施策として生まれたマーケティング用語であるものの、“良質な買いもの体験”という点で私たちユーザーにとっても大きなメリットがある。

日本におけるOMOストアの先駆けとして昨年上陸したのが、有楽町に本店を構える「b8ta TOKYO」だ。

売ることを目的としない最新ガジェット店「b8ta TOKYO」

アメリカ、シリコンバレー発の「b8ta TOKYO」は、最新技術を用いたデジタルガジェットを中心に、コスメやアパレル、食品などさまざまなジャンルのアイテムを扱う、いわばセレクトショップのような業態だ。なかでも「b8ta TOKYO」の面白さは、“商品を購入するのではなく、体験する”ことに特化しているところにある。

まず、店内に並ぶアイテムに共通するのが、発売直後の海外製品やクラウドファンディングで展開されているということ。ECでの取り扱いがメインで普段店舗に売ってないアイテムを「b8ta TOKYO」限定で試せる。さらに「b8ta TOKYO」最大の特徴は、その場にある商品はその場で購入することができないようになっている点。一聴すると不便なようだが、そこですぐに購入しなければならないというプレッシャーがない。気になるアイテムが見つかったら、一度持ち帰って本当に必要か検討する時間をたっぷり取れる。

さらに店内の商品は多いときには月に40以上が入れ替わるそうで、訪れるたびに新しい発見があるのも面白い。ネットのクラウドファンディングで気になった商品はもちろん、特に目的がなくとも定期的にフラッと立ち寄って最新のガジェットをチェックしたくなる。今月末には、有楽町、新宿に続き渋谷に3店舗目がオープンするため、“買わない買い物”の楽しさをぜひ味わってみてほしい。

b8ta Tokyo – Yurakucho
東京都千代田区有楽町1-7-1 1F
https://b8ta.jpHarumari Inc.

見て・読んで感じるメディア型ストア「CHOOSEBASE SHIBUYA」

新しい商品に出会えるOMOストアとして話題なのが、今年の9月に西武渋谷店パーキング館にオープンした「CHOOSEBASE SHIBUYA」だ。同店のほかにはない見どころは、リアルな売り場とネットを両立したメディアのような発信力を持つ点にある。「意味に出会い、意志を買う」というコンセプトが反映された店内の2つのエリアは、それぞれのテーマの打ち出し方や世界観づくりがかなり明確なのが特徴。訪れたユーザーの共感や理解を促すための仕掛けが店内にちりばめられている。コンセプティブな商品の数々は、まるで売り場からメッセージを発しているように見える。

この仕組みのカギとなるのが、商品の横に置かれているQRコードだ。商品のコンセプトやバッググラウンドはこのQRコードのリンク先に詳しく掲載されている。商品説明から販売まで従来、販売員の役割だったことのすべてを、ここではスマートフォン=スマホが担っているのだ。スマホを片手に、ゆっくりと美術館の展示を回遊するような感覚で店内を見たり、時間がないときは気になるアイテムをQRコードで確認してから家でゆっくり買いものしたりできる。

また、商品は店頭で決済しそのまま持ち帰ることも、WEBで決済し店頭で受け取ることも可能。ユーザーの都合に合わせて選択できるのも、ECでの買い物に慣れてしまった現代人には便利である。

店のテーマや商品のコンセプトに共感する人たちが売り場に集まり、つくり手の意味や意思を選びとっていく新しい売り場「CHOOSEBASE SHIBUYA」。強くコンセプトを打ち出した売り場は、ファッションのテイストや趣味などではひとくくりできない、同じ思想を持つ人たちが自然と集まってきそうだ。

CHOOSEBASE SHIBUYA
東京都渋谷区宇田川町21−1 西武渋谷店パーキング館 1階
https://choosebase.jpHarumari Inc.

作り手の想いを伝えることに特化した新しい売り場のかたち「明日見世」

さらに、「CHOOSEBASE SHIBUYA」がオープンした1ヶ月後に大丸松坂屋百貨店の4Fイベントスペースにも新たな体験型ショールーミングスペース「明日見世(asumise)」が誕生。テーマを変えながら、出品ブランドを3ヶ月毎に入れ替えを予定をしているという。

こちらも「CHOOSEBASE SHIBUYA」と同様に、店頭のPOP内QRコードから出品ブランドのECサイトを見ることができる。しかし大きく違うのが、同店ではアンバサダーと呼ばれる接客経験豊富なスタッフから、作り手の想いや商品の説明を直接聞くことができる点だ。ユーザーと1対1でしっかり向き合い、手厚い接客をしてもらえるのは百貨店ならではの強みともいえよう。ECの購買履歴や “おすすめ”などから類推されるものとの出会いはある程度、想定内のこともある。実店舗で商品を見て、人に教えてもらうことで得られる想定外の物との出会いがここにはある。

1月11日(火)までの期間は“社会を良くするめぐりと出会う”をテーマに19ブランドが出品。QRコード経由で出品ブランドサイトへ飛べば商品を購入できるが、店のECサイトで購入できるわけではない。同店では、いろいろな商品が試せる場、熱量をもって伝えるアンバサダーと、リアルの強みを生かし、商品購入前の体験に力を入れている。

明日見世
東京都千代田区丸の内1丁目9-1大丸東京店 4F
https://dmdepart.jp/asumise/Harumari Inc.

ここでピックアップした3店舗をはじめ、「OMOストア」が“売る”ことに固執しなくていいのは、商品を販売して利益を得るのではなく、そこに商品を出品したブランドの出品料から利益を得ているから。またそこに出品するブランドは、クラウドファンディングやD2Cブランドをはじめユーザーとリアルなタッチポイントを増やしたい新進気鋭なアイテムが多いのが特徴である。この仕組みによって、結果、ユーザーにとっては新しいものと出会うことができるうえ、買い物がしやすいという利点にもつながっている。

利便性だけではない買い物本来の体験にデジタルの要素を加えることで、買い物が新しい形に生まれ変わりつつある。家でのネットショッピングに食傷気味な人こそ、デジタルとリアルを融合した買い物体験を一度味わってほしい。

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