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作り手たちが集うアートな街・大分県竹田市へ。個性豊かなクリエイターをたずねる

  • 2021.11.12
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江戸時代の街並みが残る城下町として知られる大分県竹田市。山々に囲まれ、湧水や温泉など自然に恵まれていることもあり、創作の場として移住するクリエイターが増えています。彫刻やレザー、3Dプリントのデザイナーなど、さまざまなジャンルの作り手たちが集うアートな街・竹田を訪れてみませんか。

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竹田の先駆け的な作家のギャラリー「gallery 傾く家」
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ユニットとして活動する加藤亮さん(左)と児玉順平さん(右)、古民家を改装したギャラリー

竹田でいち早く活動をはじめ、作家として周囲に一目置かれるのが、加藤亮さんと児玉順平さんによる美術ユニット「オレクトロニカ」です。2011年に竹田市に移住し、アトリエを構えました。城下町の一角にある古民家を改修したギャラリーでは、自身の作品をはじめ、自らがセレクトする骨董品や古道具を販売。彼らの世界観にふれることができます。

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「人と彫刻」をテーマに作られる彫刻作品。木のほかに錫やブロンズなどさまざまな素材で作る

2人が手がけるのは、彫刻作品を中心に空間デザインやイベントのプロデュースなど多岐に渡ります。代表作の5cmほどの人型の彫刻作品は、そのほかのオブジェクトに会うことで一つの作品になるように考えられたもの。小さいからこそ細部の精巧さが際立ち、その世界観に引き込まれます。

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熊本現代美術館では巨大な作品を展示し、世界観を空間全体で表現

かと思えば、美術館や屋外では4mを超える巨大な作品を展示し、空間自体をひとつの作品としています。手法にとらわれずに生み出される作品は、物語を感じる不思議な魅力を持っています。さらに、町に増えてきた空き家を利用して作家作品を展示するアート・クラフトイベント主催。創作だけでなく、周りの作家や町を巻き込み、竹田に新たなムーブメントを起こしています。

「オレクトロニカ」が手がけるショップ「猿竹工芸商會」
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黒い看板が目印に立つ細い通り沿いにある

「gallery 傾く家」から徒歩すぐの場所にあるのが、オレクトロニカの2人が主催するセレクトショップ「猿竹工芸商會」です。「作ること」だけでなく「流通させること」に向けて、作り手とデザイナーの視点を取り入れたプロジェクトとしてスタートしました。

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木皿(中・12375円〜)、木鉢(小・9075円〜)、タンブラー(小・5170円〜)、急須(5508円)

プロダクトデザイナー猿山修さんと竹田市のクリエイターが共同開発した作品を販売しています。アウトドアをテーマにしたオリジナルシリーズを展開。専用の革箱や布袋付きなど持ち運びを意識した仕様になっています。ガラスや木工など、シンプルで生活になじみやすいアイテムがそろっています。

美しく、味わいのあるレザー小物の工房「paisano」
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革製品のほか器や木工品など国内外の作家作品を展示販売するショップ(右)、小財布19800円、長財布38500円(左上)、柿渋染の麻で作った巾着(左下・小12650円、大14850円)

城下町の一角にある築140年の古民家を改装したギャラリーショップが、革作家の小河眞平(おがわしんぺい)さんが営む「paisano」です。栃木県の老舗ランドセル製造メーカーで経験を積んだ後、竹田市に移住して工房を構えた小河さん。財布や名刺入れなどの革小物やカバンを中心に制作しています。

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表面をヤスリがけしたマットな質感の牛革を使ったロングウォレット(右)35200円とミニウォレット(左)25300円

植物タンニンでなめした牛革や柿渋染めのリネンなど厳選した素材を選び、素材感を生かすため余計な装飾のないシンプルなデザインが特徴。時間をかけてオイルを染み込ませる古典的ななめし技術で作る作品は、使うほどに革の深みのある色合いが楽しめます。細部に及ぶ丁寧な造りが際立つ逸品です。

倉庫をリノベーションしたギャラリー喫茶「素物と喫茶 古跿coto」
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中国茶と季節の菓子のセット(右・800円)、ひとつ一つの所作に無駄がない尾込さん(左上)、この日はほのかに柑橘を感じる柚子香烏龍茶や芳醇な香りの阿里山烏龍茶など

城下町の中心部から少し離れたひっそりとした場所にあるのが、店主の尾込真貴子さんが作る作品や古道具を展示販売するギャラリー兼喫茶「素物と喫茶 古跿coto」です。もとは倉庫だったという店内には、余計なものを置かず、わずかな照明の中で作品を展示。静けさのなかで作品に没頭できる空間です。

中国茶を学んでいるという尾込さん。店内では、作品を楽しみながら尾込さんが淹れる中国茶や季節のお菓子を味わうこともできます。お茶は、その日にある数種類の茶葉から好みのものをセレクト。茶器は、尾込さんが県内外から集めたものの中から選ぶことができます。

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作品の世界観に浸れるひっそりとした空間(右)、粘土で形づくった土台に枯葉を装飾した小鳥のオブジェ(左上)、古紙で作られた2頭の馬(左下)

「朽ちゆくもの」にひかれるという尾込さんが作るのは、枯れ葉や古紙などで造形するオブジェなど。無機質で、はかなさの中に静かな存在感が感じられます。

廃校の校舎を活用したアトリエ「竹田総合学院」
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濁淵川沿いにあり、橋を渡った先にある

廃校となっていた旧竹田中学校を改修し、2014年から作家の工房として提供するのが「竹田総合学院」です。現在、彫刻や木工など13名の作家が創作活動を行っています。作家の人材育成にも積極的に取り組み、多数の作家をここから輩出。竹田市中心街の空き家を活用し、作家が起業する支援なども行い、城下町の再生と活性化も図っています。

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竹ならではの温かさと繊細さを感じる中臣さんの作品
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城下町にある竹田市歴史文化館・由学館の企画展で展示された作品

竹藝家として活動する中臣一(なかとみはじめ)さんもその一人です。中臣さんが作るのは、空間を装飾するオブジェが中心。校舎というゆとりある空間で創作するようになって、より大きな作品を作るようになったのだと言います。美しい曲線と洗練された造形美が際立つ作品は、国内外で高く評価されています。

最新のテクノロジーを駆使したものづくり工房「ヘソラボ」
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自然に囲まれた山奥に佇む工房

竹田市の中心部から離れた自然豊かな場所にある古民家を改装した工房「ヘソラボ」。プロダクトデザイナー西村和宏さんが営む工房です。デザイナーの西村さんは、竹田の自然に惹かれて8年前に移住。3Dプリンターやレーザーカッターなど、デジタルの工作機械を使ってオリジナルのプロダクトを制作、販売しています。

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竹田の杉を使用したピアス(右・各1850円)、同市内にあるラムネ温泉館のキャラクターをデザインしたミニ行灯(右)2000円と、ミニ行灯(左)2050円(左上)、杉のコースター(左下・各1240円)

作るのは、UVレジンやプラスチックなどを素材にしたインテリア小物が中心。葉脈や湧水が流れる水面など、竹田の自然をヒントに作品のアイデアが生まれることも。不規則で繊細な自然美を、デジタルだからこそ実現できる緻密なデザインで表現しています。

個性豊かなクリエイターたちが集まる、アートな街へと進化している城下町・竹田。ぜひ、町に点在する作家の工房を訪ねて、それぞれの思いがこもった作品の魅力にふれてみてくださいね。

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