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英女王が愛用!世界最高峰のダイヤモンド「カリナン」の歴史

  • 2021.11.8
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「バーミーズ・ルビー」「ブラジリアン・アクアマリン」「ケンブリッジ・エメラルド」「ケント・アメシスト」「ジョージ6世のサファイア」など、目を見張るようなジュエリーを所有しているエリザベス女王。

1952年に即位して以来、女王は数多くのジュエリーを相続し、贈られ、オーダーしてきました。とはいえ、ウィンザー家の宝物庫にある宝石のなかでも、「カリナン・ダイヤモンド」に匹敵するものはほぼありません

1905年に南アフリカで発掘された、重さ3106カラット(約621グラム)の「カリナン」。鉱山会社の会長であるトーマス・カリナンにちなんで名付けられたこの原石は、今なお世界最大のダイヤモンド原石の称号を保持しています(ちなみに、2番目に大きいのは2019年にボツワナで発見された1758カラットの「スウェロ」で、現在はルイ・ヴィトンが所有している)。

一説によると、カットされていないカリナンの原石は巨大だったうえに、とんでもない透明度で、独特の青白さをたたえていたそう。鉱山のマネージャーは当初、水晶だと勘違いして窓から捨てたと言われています。

それが、現在王室で最も価値のある大粒のダイヤモンド9石(と、小粒の約100石)になるまでには少し時間がかかったが、水晶だと思ったものを改めて見直したのが非常に賢明だったことは、誰が見ても明らか。

鉱山があったのは南アフリカのトランスヴァール地方で、20世紀初頭はイギリスの植民地だった場所。そこで原石はバッキンガム宮殿に送られ、鑑定のためにエドワード7世に献上されます。

しかし、世間からの関心の高さ(リッチな貴族たちも興味を寄せていた)にもかかわらず、カリナンは2年間も売れ残ってしまいます――なぜなら、それほど巨大な石をカットする方法を誰も知らなかったから。

かわりに、トランスヴァール植民地政府は、第二次ボーア戦争(大英帝国と、オレンジ自由国&トランスヴァール共和国間の帝国主義戦争。実際のところはダイヤモンドを巡る戦争でもあった)の後、1907年に、誠意と忠誠心を示すものとして国王エドワード7世にこの石を献上することに。

国王は政治的な体裁を気にしており、またおそらく責任の重さもあって、石を受け取るのをためらっていたようですが、当時植民地の事務次官だったウィンストン・チャーチルが、王に受け取るよう説得しました。

その後、エドワード7世はオランダの有名な宝石商の末裔である、ジョセフ&アブラハム・アッシャー兄弟を呼び寄せます。このジョセフこそが、1902年にアイコニックな「アッシャーカット」を発明した人物。

盗難対策のため、イギリス海軍は北海を渡って原石を輸送するよう偽装したが、運んでいた箱の中身は空で、実際はアブラハムがコートのポケットに原石を入れ、ロンドンからアムステルダムまで電車で移動。

当時は技術力が不足していたため、一つひとつのカッティングを間違いなく正確に行わなければならず、ジョセフがカリナンのカットを完了するまでには8カ月もかかったという!

1909年には、ようやくエドワード7世のもとに大きい方から2つの宝石――530.2カラットのカリナンⅠ(ペアシェイプカット)と、317.4カラットのカリナンⅡ(クッションカット)――が届きます。

後に、カリナンⅠは十字架の王笏へ、カリナンⅡはインペリアル・ステート・クラウン(大英帝国王冠)へと組み込まれる。エドワード7世はまた、妻のアレクサンドラ王妃のために、11.5カラットのマーキスカットのカリナンⅥを購入し、残りを報酬としてアッシャー兄弟に残しました。

では、残りのカリナン・ダイヤモンドはどうやってウィンザー家のもとに戻ったのでしょうか? まずは、メアリー王妃の働きのおかげ。そして、残りのカリナン・ダイヤモンドをアッシャー兄弟から買い取り、1910年に新しい王妃に献上した、南アフリカ政府のおかげでもある(エドワード7世は同年5月に亡くなり、王位は息子でありメアリー王妃の夫であるジョージ5世へと移った)。メアリー王妃は後に、カリナンⅥをアレクサンドラ王妃から相続しています。

ジュエリーをこよなく愛したメアリー王妃はもちろん、カリナン・ダイヤモンドも見事に活用してみせ、その壮麗な輝きを披露するチャンスをほぼ逃さなかったそう。たとえば、王妃にとって初めての国会開会式では、カリナンⅢとⅣをペンダントとして着用し、さらにⅠとⅡをブローチとして使い、計1005.6カラットのきらめきをこれでもかと見せつけました。

王妃が1953年に逝去すると、孫のエリザベス女王がその宝石を受け継ぎました。では、カリナン・ダイヤモンドⅠ~Ⅸを順番に見ていこう。

カリナンⅠ

重さ530.2カラット、ペアシェイプカットのカリナンⅠは、「偉大なアフリカの星」の名でも知られており、今でも世界最大の研磨済みダイヤモンドとして君臨している。クラウン・ジュエルのひとつである十字架の王笏にセットされており、戴冠式や国会の開会式で使われない際は、インペリアル・ステート・クラウンとともにロンドン塔に保管されています。

カリナンⅡ

インペリアル・ステート・クラウンで星のように輝くのは、「黒太子のルビー」(実際にはルビーではなくスピネルで、その出自は14世紀にまでさかのぼる)。だが、そのすぐ下にセットしてあるカリナンⅡ(「アフリカの第2の星」とも呼ばれる)にも同じくらいの価値が。

加えて、ルビーのサイズはわずか170カラットだが、ダイヤモンドの重さはその2倍。2016年以降、女王は国会の開会宣言での王冠着用をやめ、代わりにベルベットのクッションの上に置くようになった。理由はいたってシンプル――3ポンド(約1.4kg)は重すぎるから。

カリナンⅢ&Ⅳ

94.4カラットでペアシェイプカットのカリナンⅢと、63.6カラットでスクエアカットのカリナンⅣ。どちらももともとは、ジョージ5世の戴冠式でメアリー王妃が着用した王冠にセットされていたもの(王冠には有名なダイヤモンド「コ・イ・ヌール」も使用されていた)。

後に王妃は2つをクリスタルのレプリカと交換し、ときどき「デリー・ダーバー・ティアラ」にはめ込んで着用したが、ブローチとしての使用がほとんどだった。エリザベス女王も現在子同様の使い方をしており、別名「おばあちゃんの小さなかけら(Granny's Chips)」と呼ばれています。

カリナンⅤ

1911年、メアリー王妃はブローチに18.8カラットのハートシェイプカットのカリナンⅤを固定するようオーダー。もともと王妃はこのダイヤモンドをデリー・ダーバー・パリュールのストマッカー(ドレスの胸元に着装するパネル状のアクセサリー)として使用していました。

ただしストマッカーは時代遅れとなってから久しく、エリザベス女王はカリナンⅤを常に単体のブローチとして愛用中。2018年のユージェニー王女の結婚式や、2020年6月のフィリップ殿下の99歳の誕生日のポートレートなど、何年にもわたって大切な機会にはそのブローチを着用しており、間違いなく女王のお気に入りのジュエリーのひとつとなっている。

カリナンⅥ&Ⅷ

インペリアル・ステート・クラウンのためにカリナンⅠとⅡを受け取ったエドワード7世は、11.5カラットのマーキスカットのダイヤモンド、カリナンⅥを、妻アレクサンドラ王妃のために購入。

王妃はそれを冠にセットして使用していたが(上の写真参照)、王妃の死後はメアリー王妃(アレクサンドラ王妃の息子ジョージ5世の妻)の手に渡る。

メアリー王妃は、カリナンⅥをカリナンⅧのブローチからぶら下げてペンダント(6.8カラットのエメラルドカットが特徴)として使用。カリナンⅤと同様に、王妃はカリナンⅧを、ドロップシェイプのケンブリッジ・エメラルドと一緒にデリー・ダーバー・ストマッカーにつけて使うのを好んでいた。現在、エリザベス女王は下の写真のようにカリナンⅥとⅧを組み合わせたブローチとしてのみ使用している。

カリナンⅦ

他のカリナン・ダイヤモンドと同様、メアリー王妃もデリー・ダーバー・パリュールのどこかしらにカリナンⅦを取り入れていた。この8.8カラットのマーキスカットのダイヤモンドは、ケンブリッジ・エメラルド・ネックレスに組み込まれ、カボション・エメラルド・ドロップの隣にペンダントとして吊り下げられた。

マキシマリストだったメアリー王妃は、カリナンⅦをはるかに大きなカリナンⅢに交換することもあったものの、これらを受け継いだより謙虚なエリザベス女王は、もともとのセッティングのほうを好んでいるよう。

カリナンⅨ

カリナンコレクションにおける末っ子的存在のカリナンⅨは、メアリー王妃が指輪にセットした4.39カラットの比較的小さなペアシェイプカットの一粒ダイヤ。これは、残念ながら滅多にお目にかかれることはありません。

※この翻訳は抄訳です。

Translation: Saeco.Y

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