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だいすけお兄さんが絵本作家のヨシタケシンスケさんと対談。大人が弱さを出していい。それが子どもの選択肢を増やす。【だいすけお兄さんのパパシュギョー!・5(前編)】

  • 2021.11.5
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絵本で伝えたいのは、自分が子どもの頃に教えてほしかったこと

だいすけお兄さん(以下だいすけ) ヨシタケさんは、よく自分の「弱さ」を言葉にしていますよね。「弱さをちゃんと出す」、そういう生き方を示してもらえることって、これまではなかなかなかったと思うんですよ。ヨシタケさんの言葉は、何かを押しつけるのでなく、こちらに寄り添ってくれたり、寄りかかれるようでもあったり、安心できるなあって感じるんですよね。

ヨシタケさん(以下ヨシタケ) ありがとうございます。僕は、自分が言ってほしいこと、子どもの頃に思っていたことや教えてほしかったことを、絵本にしたいと思っていて。 できないことがたくさんあるから、できる人に対する憧れや嫉妬、悔しさに、人一倍時間をとられてしまう。じゃあ自分は、何を言われたらホッとするのか、ちょっとは気が晴れるのか、自分のために一生懸命考えないといけないんですよね。それが、僕と同じようにちっちゃいことにつまずいてしまう人の役に立てば、うれしいし。 でもそういう弱さみたいなものって、実は意外とたくさんの方が抱えていたようで。強いと思っていた人も、弱さを乗り越えた上で大人になっているってわかったというか。逆に言うと、僕はそのみんなが乗り越えるべき弱さを乗り越えないまま、48歳になっちゃったんですけど。

だいすけ いやいやいや(笑)。

だいすけお兄さんが絵本作家のヨシタケシンスケさんと対談。大人が弱さを出していい。それが子どもの選択肢を増やす。【だいすけお兄さんのパパシュギョー!・5(前編)】の画像1

「みんな一緒!」「がんばろう!」で救われない子もいる

ヨシタケ じゃあどこまでなら補正できるのか、いい方向に考えられるのか、考え方の選択肢を増やしたいっていう思いはやっぱりあって。僕がもっとポジティブで「人間大好き!」みたいな人だったら、こうした絵本は絶対描いてないんですよ。世の中を楽しめないからこそ、「どうすればちょっとでも前向きに楽しめるんだろうか」って考えざるをえないんですよね。それがたまたま仕事として絵本の形になっているから、「楽しそうですねえ」みたいなこと言われるんですけど、全然そんなことないんですよ(笑)。

だいすけ アハハハハ。いや、でもそういうものじゃないのかなって思います。やっぱり隣の芝生は青く見えるっていうか、みんな楽しそうに見えるし、充実しているように見える。でも、当人の中のものは、当人にしかわからないし。たまたまヨシタケさんがそうやって発信してくれるからこそ、「あっ、そうだったんだ」って共感して、より深く知ることができると思うんです。

ヨシタケ そうですね。意外と人って自分と違わないし、でも、同じでもない。「こういう部分は共通してるだろうな」ってところがしていなかったり、「ここは全然違うだろうな」と思ったら実は同じだったり。そういう自分の見積もりとのズレみたいなところが、生きることのおもしろさなのかもしれないです。同時にまあ、苦しみや哀しみみたいなものを生み出すっていうところでもあって。 「みんな一緒だよな、がんばろうぜ」みたいなことも必要なのはよくわかるんですよ、大人として。ただ、それで全員が救われるわけではなくて、僕みたいにひねくれた人間は、「ケッ」って思ってしまう。多分全人口の2割、3割ぐらいはいるであろうそういう人は、じゃあ、何て言われたら納得するのか、おもしろがれるのか。その選択肢を増やすっていうことが、大人がやるべきことのひとつだとは思うんですよね。 「一般的にはこう言われてるけれど、みんなが納得するわけじゃないよね」「こういう言い方もあるし、こんなことで救われる人だっているんだよ」「自分が一番腑に落ちる考え方、生き方っていうのを選べばいいんだよ」って。こういうことを僕がちっちゃい頃に言ってもらえていたら、もうちょっと楽に悩めていただろうなって思うんです。 やっぱりいつの時代でも、僕みたいな子ってある一定数いるんですよね。そういう子たちに向けて「人の意見って、参考にならないよねえ」「自分で選べって言われても、困るんだよねえ」と、誰かがちゃんと言ってくれれば、ちょっとだけホッとできるんじゃないかなって。

だいすけお兄さんが絵本作家のヨシタケシンスケさんと対談。大人が弱さを出していい。それが子どもの選択肢を増やす。【だいすけお兄さんのパパシュギョー!・5(前編)】の画像2

子育ての日々を軽くするきっかけが、絵本の中にある

だいすけ 親の立場になるとまさに、自分のことと子どものことで、悩み事は倍以上になっちゃいます。答えも見えないし、気軽にいろんなことを調べられちゃう時代だからこそ、より迷走してしまう。そんな中で、ヨシタケさんの本の中のいろんな言葉に、僕自身がハッと気づく瞬間っていっぱいあるんです。子育ての日々が少し軽くなるきっかけが、絵本という形でお母さんやお父さんに近いところにあるのは、すごくステキだなあって思うんですよね。

人生で何度も読みかえせる。それが絵本のすばらしいところ

だいすけお兄さんが絵本作家のヨシタケシンスケさんと対談。大人が弱さを出していい。それが子どもの選択肢を増やす。【だいすけお兄さんのパパシュギョー!・5(前編)】の画像3

ヨシタケ そうですね。絵本ってお子さんが読むのはもちろんですけど、やっぱりその近くには大人がいるんですよね。だから同じ絵本であれば、大人が読んでもおもしろいものの方がお得だし。大人になってから読んだときに、「あ、子どもの頃はわかんなかったけど、意外とこれ、深いこと言ってんじゃないか?」みたいな絵本なら、おもしろいですよね。人生で何回も、同じ作品を違うものとして読むことができる。それが絵本のすばらしいところのひとつだと思うので。そういう現象が起きてくれたら、一番うれしいですね。

だいすけ 子どものときに読んだ絵本って、絶対もう一回帰りたくなるんですよ。そのときに気づけることが、いっぱいあって。ヨシタケさんの本は、自分が子どもの頃にはもちろんまだなかったですけど、小さいときに体験したことをもう一度反芻できる、その歳によって楽しみ方が変わる、長くつきあっていける本だと思います。

インタビュー/原 陽子 撮影/大森忠明 スタイリング/吉岡ちさと(だいすけさん) ヘアメイク/安藤千浪(だいすけさん) だいすけさん衣装/ノルディックセーター40700 円(COOHEM)、チェックカーゴパンツ25300円(BLUE BLUE) / 全てHOLLYWOOD RANCH MARKET 、靴/スタイリスト私物

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