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もしも眞子さまが結婚式をしていたら...

  • 2021.11.2
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眞子さまのご結婚と関連がありそうな本がいくつか出版されている。本書『日本の婚礼衣裳――寿ぎのきもの』(東京美術)は眞子さまとは全く関係なく、別個に独自企画されたものだが、きわめて興味深い一冊だ。日本女性の婚礼衣裳の歴史を、豊富な写真と解説で振り返っている。10月16日から全国巡回がスタートした「ジャパニーズ・ウェディング展」の公式図録にもなっている。

家と家のつながりを重視

「花嫁はなぜお色直しをするのか?」というキャッチコピーがついている。

本書によれば、色直しは室町時代には始まっていたという。2日間は白無垢を着て、3日目は色地の着物に着替えた。嫁が色直しをするのは、婿の家の人間になったということを表していた。江戸時代になって、色直しは結婚当日にするのが普通になったそうだ。

色直しでは、嫁は婿方から進上された小袖などに着替え、婿も嫁方から贈られた小袖などに着替えたという。当時の武家の婚礼は、家と家のつながりが重視され、婚礼衣裳のしつらえにもそうした関係が反映されていた。

本書は「1章 江戸時代の武家の婚礼」、「2章 江戸時代の町人の婚礼」、「3章 伝統の継承と革新」、「4章 幸せを祈る心」の4章構成。「武家の婚礼」で越前松平家や宇和島伊達家など大名家の婚礼が登場する。

江戸時代、「町人女性の婚礼」では、「武家女性が着用したものの中では最も格の低いものを用いる」というのが基本だったという。

江戸時代の婚礼料理の再現写真も

本書で興味深いのは、2~3章に登場する信州の豪商、田中家にかかわる多数の婚礼用品だ。田中家は現在の長野県須坂市で江戸時代に穀物、綿花、酒造、菜種油などを商い、北信濃屈指の豪商として知られた。多数の史料が残っており、それらは現在、「田中本家博物館」で保存されている。

文政5年(1822年)に行われた田中本家婚礼料理の再現写真も掲載されている。献立の詳細な記録が残っているからだ。海から遠く離れた土地柄にもかかわらず、どうやって調達したのか、多数の海産物のメニューが並んでいる。魚だけで10種類、貝などが7種類。驚嘆せざるを得ない。婚礼の儀は1か月も続いたという。

本書の編著者、長崎巌さんは共立女子大学家政学部教授、同大学博物館館長。専門は日本染織・服飾史。世界の美術館が所蔵する日本染織品の調査・研究をライフワークとしている。東京国立博物館学芸部工芸課染織室長を経て、2002年より現職。2005年、きもの文化賞受賞。『きものの裂とことば案内』(小学館、2005年)、『Kimono Beauty』(東京美術、2013年)『ヨーロッパに眠るきもの』(共著、同、2017年)など著書多数。

本書のもとになっている「寿(ことほ)ぎのきもの ジャパニーズ・ウェディング―日本の婚礼衣裳―」展は横浜市のそごう美術館で11月14日まで開催されている。本書で紹介されている婚礼衣裳を実際に見ることができる。同展は22年に奈良県や福井県への巡回も予定されている。

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