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「住まいの臨床医」が「各部屋に洗面所」を勧める理由とは?

  • 2021.11.2
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テレワークやオンライン学習など、家がオフィスや教室の役割を果たすようになった。一方で、私たちの家はもともと「そんな仕様」にはなっていない。仕事や勉強の環境、各自のプライバシー、ひとりの時間......。何かを「がまん」するしかないのが現状だ。

建築士の水越美枝子さんの著書、『がまんしない家 これからの生活様式への住まいリセット術』(NHK出版)は、これからの快適な住まいづくりとは何か、「自分も家族もストレスを感じない家づくり」を提案している。

子ども部屋はあるのに夫婦の居場所がない

現代の都市生活では、子どもには個室を与えるものの夫や妻には自分の居場所がない、というケースが多い。会社員の夫が定年して家にいるようになってからリフォームを考えるというのがこれまでのよくあるパターンだった。

しかし、最近は男女共働きが普通のこととなり、家事や育児を夫婦が分担して行うのが当たり前となった。さらに、在宅で仕事をする人も増えた。そうなると、家の問題が浮き彫りになる。

家が「快適な場所ではない」と感じる背景には、日本人の意識の変化が影響しているのではないかと水越さんは考える。これまでは、家の中でも集団生活が求められていた。しかし、現代では「個人」の生活が優先されるのがスタンダードだ。テレビを囲んで家族団らんよりも、家族がそれぞれ別々の端末で好きなコンテンツを楽しむ光景も当たり前となっている。そうなると、昔ながらの家の間取りだと「片付かない」「居心地の悪い」家で暮らすことになってしまう。

欧米型の住まいでは、寝室に、専用の洗面室、浴室、トイレが一室になった水回りが備え付けられた、ホテルのようなプランが主流。家族一人ひとりに、完全なプライベート・スペースが確保されている。パブリックな場とプライベートな場が分離され、朝目覚めたら、洗面やトイレ、着替えなどの個人の用事をすませてから、ダイニングやキッチンに出ていくことができるのだ。

30年前、タイのバンコクでこうした欧米スタイルの家での暮らしを体験した水越さんは、日本と欧米との「個室」の考え方の違いを実感。「水まわりの動線を見直すことが、生活をしやすくするカギになる」と気づき、設計者としての「大きな転機になった」と振り返る。

日本でも、「昼間はみんな留守」という生活から、「誰かしら一緒に家にいる」という生活に変わったいま、「各部屋に洗面所」がスタンダードになるかもしれない。

「住まいの臨床医」が提案するこれからの家づくり

本書にはほかにも、収納、家事動線、断熱、インテリアなど、居心地のよい住まいの条件が、コンパクトにわかりやすく解説されている。リフォームしなくてもすぐに実用できるアイデアも。

著者の水越さんは、多くの人たちの住まいの悩みを解決してきた「住まいの臨床医」。『理想の暮らしをかなえる50代からのリフォーム』(大和書房)や『いつまでも美しく暮らす住まいのルール』(エクスナレッジ)、『人生が変わるリフォームの教科書』(講談社)など、時代に合った「暮らしやすさ」を重視した住まいづくりを提唱してきた。本書では、新しい生活様式が定着した「これからのスタンダード」になりうる家づくりを提案している。

本書の目次は以下の通り。

<目次>
第1章 家は生きている
第2章 これからの生活様式に合った住まいへ
第3章 がまんの原因を取り除く
第4章 快適さをあきらめない
第5章 「片づく」の先にある理想の住まい方

長い時間を過ごす場所だからこそ、リラックスできる自宅にしたい。忘れがちだが、家庭内であってもプライベートな場を用意することも安心につながる。これから自宅のリフォームや新居への引っ越し、戸建ての新築を考えている方には、ぜひ読んでいただきたい1冊だ。

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