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「一時金を辞退すれば誰とでも結婚できる」眞子さんの"先例"が佳子さまにもたらす深刻な影響

  • 2021.10.30
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秋篠宮家の長女眞子さんと小室圭さんが10月26日、結婚した。この結婚で眞子さんは皇籍を離れ、民間人となった。武蔵大学社会学部教授の千田有紀さんは眞子さんの結婚について、「皇室の今後を考えるうえで、非常に大きな意味がある」という――。

結婚後、記者会見に臨む小室圭さん(左)と眞子さん
結婚後、記者会見に臨む小室圭さん(左)と眞子さん=2021年10月26日、東京都千代田区
心の病に苦しんだ皇室の女性たち

眞子さまが結婚されて、小室眞子さんになった。おめでたいことだ。眞子さんの願いがかなって、よかったと思う。

一連の騒動を振り返れば、自分の意思、恋愛で結婚相手を選んだ眞子さんのこの結婚は、皇室のあり方に大きな一石を投じたと言えるだろう。皇室という制度のあり方に、ここまで根本的な疑問が投げかけられたことは、これまでなかったのではないか。

もちろんこれまでも、お世継ぎが問題になったことなどはあった。しかし、天皇皇后陛下に男のお子さんができなかったことは、いわば仕方のない事態であって、個人の意思でどうこうできるものではない。それに対して、眞子さんが自らの意思で結婚一時金を辞退し、降嫁したことがもたらす影響は、皇室の今後を考える際に、非常に大きな意味をもつ。

そのことを象徴しているのが、眞子さんが患ったとされる複雑性PTSDだ。眞子さんは、「中学生のころから、身近な方々やご自身に対する誹謗中傷と感じられる情報を日常的に目になさり、精神的な負担を感じておられた」のだという。その頃から、結婚一時金を辞退することを考えていたというのだ。衝撃だった。

なぜなら、上皇陛下と結婚された美智子さま、皇后の雅子さまが非常な苦労をなさって、それぞれ失語症や適応障害を患われたことは皆が知っている。女性が「民間から皇室に嫁ぐ」、しかも皇位継承者と結婚するのは、並大抵なことではないのだと思われてきた。

「長男の嫁」と「次男の嫁」

以前、「眞子さま駆け落ち婚で“母の評価”が逆転、紀子さまと雅子さまの『子育て』シーソーゲーム」でも書いたように、雅子さまがバッシングされている間、次男である秋篠宮家は相対的にうまくやっているように見えた。

当時の皇太子妃殿下が長期の静養を続けており、いわゆる「人格否定発言」についてどう思われるのかという記者の問いかけに対して、秋篠宮は「少なくとも記者会見という場所において発言する前に、せめて陛下とその内容について話をして、その上での話であるべきではなかったかと思っております」と苦言を呈した。そのうえで、「東宮御所での生活の成り立ちに伴う苦労ですね、これは私はどういう意味なのか理解できない」と発言されている。

つぎに「主に私というよりも家内に関係するのかなと思います」と水を向けられた紀子さまは、「結婚してからの生活は、新しく出会う務めや初めて経験する慣習などが多くございました。どのように務めを果たしたらよいか、至らない点をどのように改めたらよいかなど、不安や戸惑いなどもございましたが、その都度人々に支えられ、試行錯誤をしながら経験を積み、一つ一つを務めてまいりました」と述べたあと、上皇夫妻と秋篠宮に感謝を述べたが、雅子さまに対する同情や理解の言葉はまったくなかった。皇位継承の可能性が少ない宮家は、それ相応の苦労はおありでも、「長男の嫁」のようなプレッシャーは少ないのだろうなと推察した次第である。

雅子さまに浴びせられた罵声

一方、病気で御静養中だった雅子さまには、心無い言葉が投げつけられていた。お出ましのときに、「税金泥棒」という罵声が浴びせられたという報道には、さすがに胸が痛んだ。適応障害という心の病であるのに、「公務をしない」「ワガママ」といった批判が上がるのは、一線を越えて行き過ぎではないかとも思われた。

察するに、中学生だった眞子さんは、こうした事態を目にして心を痛め、トラウマになったということなのだろう。一時金を辞退することを考えていたというのは、雅子さまに向けて発せられた「税金泥棒」という誹謗中傷が、心に刺さったのかもしれない。

ストレスを受けた女性
※写真はイメージです
皇室と日本からの脱出

皇族に嫁いだ女性たちのみならず、皇室に生まれて、何不自由なく暮らしているようにみえる女性皇族でさえも、複雑性PTSDになるほど辛い思いをしているという事実は、私にとっては大きな衝撃であった。眞子さんはもちろん小室圭さんを愛しているのだと思うが、それと同時に、なんとしても皇室を出たいという強い意志も感じた。これは、あながち間違いではないだろう。

つまり、眞子さんの結婚をめぐる一連の動きは、皇太子妃時代の雅子さまバッシングにまでさかのぼることができる出来事だといえる。そう考えれば、眞子さんが、きらびやかな家柄や財力のある人ではなく、小室圭さんを結婚相手として選んだことは腑に落ちる。格式のある相手では、辛い現状は何も解決されない。普通の男性、しかし英語が堪能で、海外で暮らすことのできる能力のある相手と一緒に、眞子さんは日本から脱出したかったのだ。

先例を作った眞子さんの結婚

私たちが敬愛する皇室が、そこにいる女性たちが傷ついているという状況によって成り立っているとしたら、と考えてしまう。そして、ミーハーに皇室報道を楽しんでいること自体を非常に申し訳なく思う。

今では、皇位継承者を育てている秋篠宮家も、大変な状態にある。皇族の方々には幸せに暮らしていただきたいのだが、現状の制度ではそれは難しいのだろうか。

このような現状を踏まえれば、眞子さんが結婚一時金を辞退したことは、非常に大きな意味を持つ。今後、女性宮家を創設するにしろ、旧宮家の男性を復帰させるにしろ(民間人として暮らしていた方々が、いきなり皇族になれるのか、また国民が敬愛できるのかと問われれば、非常に非現実的な選択肢であるようにも思われるが)、これから結婚する女性皇族は、結婚一時金を受け取るのか辞退するのか、問われることになる。別の見方をすれば、眞子さんの結婚は、結婚一時金さえ受け取らなければ、(もし女性宮家が設立されるとしても)好きな相手と結婚し、そこから離脱することも可能になるという先例になるのではないか。

女性皇族は、皇室のルールにのっとって結婚するか、しないか、それとも自由に離脱するのかを、結婚のときに選んでもいいのだという先例を、眞子さんのケースは作ったとも言えそうだ。

現在26歳の眞子さんの妹、佳子さまを含め、今後の女性皇族は、どのような選択をなさるのだろうか。

千田 有紀(せんだ・ゆき)
武蔵大学社会学部教授
1968年生まれ。東京大学文学部社会学科卒業。東京外国語大学外国語学部准教授、コロンビア大学の客員研究員などを経て、武蔵大学社会学部教授。専門は現代社会学。家族、ジェンダー、セクシュアリティ、格差、サブカルチャーなど対象は多岐にわたる。著作は『日本型近代家族―どこから来てどこへ行くのか』、『女性学/男性学』、共著に『ジェンダー論をつかむ』など多数。ヤフー個人

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