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国民に審査される最高裁の裁判官任命は国民が知らないところで

  • 2021.10.26
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最高裁の判事は長官を含めて15人

2021年10月31日、最高裁判所の裁判官に対する国民審査が行われる。有権者が「やめさせたい」と思う裁判官に×印をつける仕組みだ。×が有効票の半数を超えた裁判官は解職される。

つまり、国民には「罷免」の権利がある。だがそもそも最高裁判事は、誰がどうやって選んでいるのだろうか。

司法の独立は?

最高裁の判事は長官を含めて15人。長官は内閣の指名に基づいて天皇が任命し(憲法6条)、判事は内閣が任命する(憲法79条)ということになっている。

そこでいくつかの疑問が生まれる。法律関係の専門サイト「弁護士ドットコム」に以下のような質問が出ている。

「最高裁判所裁判官の任命を内閣が行うことになっているのはなぜなのでしょう? 三権分立の理念には反しないのでしょうか?」
「内閣に指名・任命される最高裁判所の裁判官が、政府の作った法律に違憲判決を出すのは容易なことではないのでしょうか? そうだとすると、制度に問題があるようにも思うのですがいかがでしょう?」

司法は、はたして独立しているといえるのだろうか、というのがこの質問の主旨だ。

出身分野は決まっている

たしかに「内閣の任命」を巡っては、最近も一騒動あった。「週刊ダイヤモンド」2017年2月25日号「司法エリートの没落 弁護士 裁判官 検察官」が内幕を詳細にレポートしている。

それによると、最高裁判事15人の出身分野は決まっている。裁判官6、弁護士4、学識者5(大学教授1、検察官2、行政官1、外交官1)の枠が長年の慣例だ。70歳が定年となっており、定年者が出ると、元の出身分野から後任が決まるパターンだ。

例えば弁護士枠の裁判官が定年になると、従来は日本弁護士連合会(日弁連)が推薦した候補の中から後任に決まっていた。最高裁は日弁連の推薦を受け、「最適任候補者」を内閣に意見するからだ。最高裁判事の任命権はあくまで内閣総理大臣にあるが、これまで「弁護士枠」では日弁連の推薦した人物が任命され続けてきた。

ところが17年1月、定年になる弁護士出身者の後任に、日弁連推薦ではない人物が任命された。長く学者生活を送っていた人で、弁護士の資格を取得したのは前年8月。実務経験はほとんどなかった。従来の「弁護士枠」とはズレがあった。

同誌は「安倍政権が司法に介入」という切り口で、この問題を報じている。

司法試験をスルーする人も

最高裁判事に関して、もう一つの疑問が、しばしば取り沙汰される。司法試験に合格していない人が混じっていることだ。

この問題については2009年5月12日、衆議院で鈴木宗男議員が以下のような「最高裁判所裁判官の指名等に関する質問主意書」(抜粋)を提出している。

「内閣としてどの様な基準を基に『最高裁裁判官』を指名または任命しているのか説明されたい」
「内閣として、司法試験に合格する等の法曹資格を有していない者をこれまで『最高裁裁判官』に指名または任命したことはあるか。あるのなら、過去十年に渡るその人数並びに『最高裁裁判官』就任以前の官職等について全て明らかにされたい」
「『最高裁裁判官』は司法の最高地位を占める者であるが、・・・内閣として法曹資格を有していない者を『最高裁裁判官』に指名または任命しているのなら、それは適切か。法曹資格を有していない者が『最高裁裁判官』の任に就くことは、我が国の司法の水準向上、裁判の適正な執行等に鑑みて適切であるか。政府の見解如何」

麻生太郎首相(当時)による答弁書は、以下のように答えている。

「最高裁判所の裁判官の任命資格については、裁判所法(昭和二十二年法律第五十九号)第四十一条第一項において、『識見の高い、法律の素養のある年齢四十年以上の者』と規定されており、これを踏まえ、最高裁判所の裁判官にふさわしい人物を指名し又は任命している」「過去十年間に最高裁判所の裁判官に任命された者で、司法試験に合格していないもの又は司法試験に合格していても司法修習を終了していないものは六人」

鈴木氏は、一部の最高裁判事ポストが、官僚の天下りになっているのではないかとも質している。答弁書は「『天下り』とは、一般的には、各府省で退職後の幹部職員を企業、団体等に再就職させること」と回答、最高裁判事は公的仕事なので再就職には当たらないとしている。

「夫婦別姓」問題で身近になった

最高裁は、普段は多くの国民にとって縁遠い存在だ。裁判官は国民の知らないところで決まる。しかし、「国民審査」で国民はノーと言える仕組みになっている。

最高裁は今年6月、「夫婦別々の姓での婚姻は認められない」という決定を出している。これは、多くの国民にとって身近な問題だ。15人の裁判官のうち11人が夫婦同姓を定めた民法の規定は合憲、4人が違憲と判断は分かれている。

今回の国民審査では、「夫婦別姓」についての判断結果が、何らかの影響を与えるのかなど、これまで以上に関心が高まる要素がある。

朝日新聞によると、今回の国民審査の対象は15人の裁判官のうち、18年1月から今年9月に就任した11人。審査を受ける裁判官の実績や心構えを書いた「審査公報」が投票日の2日前までに各世帯に届く。最高裁のウェブサイトにも同様の情報が掲載されている。

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