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まずは食事ケア! 加齢で筋肉量が減少する「サルコペニア」の改善法

  • 2015.7.22
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【ママからのご相談】

40代。研究職の夫と高校生の娘、義理の母親(夫の実母)と私の4人家族です。義母に関して相談があります。5年前に義父に先立たれた義母は、70代後半になりますが、頭はしっかりしています。ところがこの半年ほど、「体を起こしているのがツラい」「すぐ近くのスーパーへ 歩いて行くのにも休み休みでないと行けない」「ペットボトル飲料のフタがなかなか開けられない」などと言うようになり、何となく弱ってきました。

整形外科で診てもらうと、「サルコぺニアという言葉を聞かれたことはありますか? 加齢によって筋肉量が低下した状態です」と言われましたが、これって病気というよりも高齢の女性に共通の課題なんじゃないでしょうか。高齢女性が必要な筋肉量を維持し、いつまでも元気で健康に過ごすにはどうしたらいいのか、教えてください。

●A. 栄養と運動で筋肉量の減少(サルコぺニア)に対処し、元気を維持しましょう。

こんにちは。エッセイストでソーシャルヘルス・コラムニストの鈴木かつよしです。ご相談ありがとうございます。

ご相談者様がおっしゃるように、加齢によって筋肉量が減少し、歩行や運動といった身体機能が低下していくことはどんな高齢者にとっても共通の課題です。

この概念は1989年にアーウィン・ローゼンバーグという人が米国栄養学会雑誌にてギリシア語の“サルコ(筋肉)”と“ぺニア(減少)”を組み合わせた“サルコぺニア”という造語を発表した際に初めて提唱されました。

その後、2010年に欧州のEWGSOPという作業部会によって提案された、『サルコぺニアとは進行性かつ全身性の筋肉量と筋力の減少によって特徴づけられる症候群で、身体機能障害や生活の質(QOL)の低下や死のリスクを伴うものである』という定義が、現在においては定着しています。

わが国ではサルコぺニアの明確な定義がありませんが、整形外科や脊椎外科の医師らがそれぞれの定義に基づき、臨床の現場でこの言葉が用いられる場合があります。

サルコぺニアは女性に限ってみられる症候群ではありませんが、男性よりも筋肉量が少ない女性の方がその症状にさらされやすいことから、高齢の女性に共通の健康上の課題として近年注目されつつあります。

現在試みられているサルコぺニアの治療法は、栄養療法、運動療法、薬物療法に大別されます。今回は、一般的な対処法としての栄養療法と運動療法について、都内の総合病院に勤務する整形外科の医師にうかがったお話を交えながら、考えてみたいと思います。

●タンパク質・アミノ酸・ビタミンDをできるだけ摂取しましょう

『タンパク質やアミノ酸の摂取が、高齢者においても筋肉量と筋力を増加させることは言うまでもありませんが、それらを栄養補助食品で安易に取ろうとすれば、通常食の摂取量低下にもつながりかねないため、あまり賛成できません。最近の研究では、ビタミンDが骨量の増加だけでなく横紋筋(おうもんきん)内のビタミンD受容体に結合することによって筋肉中のタンパク質合成を促進し、筋力・筋量を増加させることがわかってきたため、高齢者を対象としたビタミンDの投与はサルコぺニアの治療に有効であると考えられます。

とはいえ、やはり食事を通してバランスよく摂取する方がベターです。サンマやしらす干しなどの魚介類は、ビタミンDがタンパク質と一緒に取れるのでお奨めですが、中でも“しらす干し”は筋肉を増加させるビタミンDと筋肉を修復する必須アミノ酸のリジンがたっぷり入っているため、高齢者の筋力増強には非常に効果的です。もし、ご相談者様のお義母様が、「歳のせいもあってそんなに食欲がない」とおっしゃるのであれば、医師の診察のもとで“小柴胡湯(しょうさいことう)”のような食欲不振を和らげる効果がある漢方薬などを処方してもらうのもいいでしょう』(30代男性/都内総合病院整形外科医師)

●無理な運動療法は高齢者にはリスクが大きい。楽しみながら軽い運動をしましょう

『タンパク質・アミノ酸・ビタミンDの補給と筋力トレーニングを併用することは、理論上は加齢によるサルコぺニアの治療に最も効果があると言えます。しかし、現実問題として70代後半の高齢者にマシンを使ったレジスタンストレーニングやジョギングなどの持久性トレーニングといった、いわゆる運動療法を若い人と同じようにそのまま施行することは、転倒その他の事故予防という観点から言えばあまりにもリスクが大きいため推奨いたしかねます。

転ばない体をつくろうと思うあまりに転んで大ケガをしていたのでは、元も子もありません。ベッドや椅子に腰かけたまま膝を曲げ伸ばししてみる、水を入れない空っぽの樹脂製ウォーターダンベルを上げ下ろししてみる、といったような軽い運動を、楽しみながらやっていただければそれだけでも十分ではないかと、私は思います』(30代男性/前出・整形外科医師)

●ロコモティブシンドロームに陥らないためにも、サルコぺニアの段階で対処しましょう

加齢によって身体機能が低下し、やりたいことが思い通りにできなくなってくるのは、誰もが迎えなければならない局面です。けれども、ご相談者様のお義母さんのように、まだ何とか日常生活が自力で送れているのと、寝たきりの状態にまでなってしまうのとでは、人生を楽しく過ごすという意味において格段の違いが出てきます。

お義母様はまだ筋肉の量と力に低下が起きる“サルコぺニア”の状態ですが、これが筋肉のみならず骨や関節にも支障をきたし、日常生活を自力で送ることが困難になる現象のことを“ロコモティブシンドローム(略称:ロコモ)”といい、こうなるとご本人もそうですが家族も大変な思いをすることになるため、ささいなことが家族の感情に傷をつけることにもなりかねません。

ご相談者様のお義母様にはぜひ、今回ドクターにうかがった“サルコぺニア対処法”を参考にしていただいて、お義母様なりにアレンジした食事と軽い運動で元気を維持していただき、ロコモへ進んで行くことのないように心がけていただきたいと思います。

●ライター/鈴木かつよし(エッセイスト)

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