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女優・石橋静河の大切なもの「豚のお守り」

  • 2021.10.19
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クローゼットにひそむ、どうしても手放せないものはありますか?かけがえのない“記憶”が刻まれた物語を紹介します。

内面の豊かさが美しい表現を生む
それを思い出させてくれるもの

手のひらにちょこんと乗せた、三本足の豚。女優の石橋静河さんが大切にしているのはチリの小さなお守りだ。出合いは2011年。バレエを学びに16歳でボストンへ留学し、町にも学校にもなじめないまま2年目を迎えた頃のこと。

「次はヨーロッパの学校を受けようと決めて、毎日ひとりぼっちで練習していたんです。そうしたらある日、同じ建物に通うプロのバレエダンサーのご夫婦が、みてあげるよと声をかけてくれた。バレエは表現なんだからもっと楽しそうに、と厚意でレッスンをしてくれました」

やがてオーディションへ向かう石橋さんに、2人から手渡されたのがこのお守り。 「時間も力も費やして、見知らぬ相手に無償の愛を渡せる人がいる。その出来事のすべてが衝撃で、心から救われました。アーティストとして秀でた人は内面も強く優しい。だからこそいい表現ができるということを教わった気がします」 それはファッションも同じ、と石橋さんは言う。人として豊かでいることが装いにも表情や深みをもたらすのだ、と。

「この豚さんを見るたびに、私も優しい人でありたいと切に思うんです。最近は明るい色の服を着たくなることが多く、自分も誰かも元気になるような装いに惹かれます。服に助けられることもありますよね。可愛いものを着ると楽しくなるし、長く着続けて肌みたいになった服を身につけると、心が休まります」

映画から演劇まで、全身全霊で表現し続ける毎日を、支えるものが身近にあるのは幸せだ。 「舞台では常に、〝君はどういう人間なの?〟と問いかけられている気がします。内面が全部さらされてしまう。そんな時は豚さんと、バレエダンサーの奥さまがギュッと手を握って励ましてくれた、大きな愛情を思い出すんです」

GINZA2021年6月号掲載

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