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「扶養の範囲内で働く」ではジリ貧に?! 「共働きの壁」乗り越えるには

  • 2021.10.16
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フルタイムの正社員として働く女性が出産を機に会社をやめ、子どもが幼稚園や小学校に入ったらパートで復職する、というケースは少なくない。会社をやめずとも、産休・育休後に時短勤務で職場に復帰し、収入が大幅に減った、というのもよく聞く話だ。いずれのケースも、そこからフルタイムへの復帰は簡単なことではない。

しかし、親世代とは環境ががらりと変化している今、従来のような「男は仕事、女は家庭」といった考え方のままでは、夫が定年退職を迎えるころには、ジリ貧になってしまうかもしれない。

『お金・仕事・家事の不安がなくなる 共働き夫婦最強の教科書』(東洋経済新報社)は、人気ファイナンシャルプランナーの内藤眞弓さんが、共働き家庭のよくある悩みについて、3000人以上の家計を診断してきた経験から、解決策を提案する子育て世代のバイブルだ。

時短勤務で年収140万減。仕事量は変わらないのに...

「共働きでやってきたが、もう限界。(妻が)仕事を辞めても(あるいはパート勤務になっても)大丈夫か」という相談を頻繁に受けるという内藤さん。出産や仕事のたいへんさ、小1の壁、中学受験などの理由から、「限界」を感じる夫婦が多いという。

こうした相談に対し内藤さんは、妻が仕事をやめた場合の「本来得られる収入」を可視化したうえで、個々の家庭の事情に合った解決策を示していく。

20年前から男性の平均年収は27万円減、しかも手取りは70年代の8割超から7割弱に減っている。退職金も右肩下がりの今、内藤さんは「共働きは選択肢の1つではなく、デフォルトだと考えた方がいい」と言う。そのうえで、妻が夫の扶養の範囲内で働く、もしくは時短勤務に切り替えることは、「慎重に判断すべき」と説く。

パートにせよ時短勤務にせよ、いったん下がった賃金を正社員時代のレベルに戻すのはかなり難しい。本書によると、フルタイムで約314万円だった年収が、時短勤務にすると約178万円になるという試算があるという。収入が140万円近く減ったにも関わらず、仕事量は減らず自宅に仕事を持ち帰る→やっていられない、とパートになる→さらに収入減......という道をたどる。そして、フルタイム正社員への復帰にはより大きな壁が立ちはだかる。

妻が時短勤務をすることによって、夫は主たる稼ぎ主の座を降りられませんから、「男は仕事、女は家庭」の役割分担は固定化される可能性が高まります。出産前には平等に家事を担っていた夫婦であっても、一度固定化してしまうと、もとに戻すためには相当のエネルギーを要します。

小1・小4の壁、中学受験の乗り越え方も

内藤さんは、「夫の仕事も妻の仕事も大事にしつつ、子育て期を乗り越えるほうが建設的」という。本書には、そのための解決策が項目ごとに具体的に提示されている。以下はその一例だ。

お金:
できる夫婦が「ライフプラン表」を使う理由
「扶養の範囲で働く」ではジリ貧に
「貯め期」に貯められないと貯蓄は右肩下がり

家事:
便利家電を今すぐ買うべき理由
料理も掃除も「シンプル化」「外注」が即効薬
家庭内マウンティングは慎もう

育児:
意外に知らない「子育てサポート」サービスあれこれ
習い事の時間を有効活用
突然の子どもの発熱にはこう備える

職場:
短時間勤務は最後の手段にする
突然の保育園からの電話に慌てずに済む交渉術
「子どもを犠牲にしている」という呪文

人間関係:
「パパ友」「ママ友」との正しい付き合い方
両親に無理のない範囲でサポート依頼
夫が役員を引き受けて妻がサポート

家計管理のコツから、パパ友・ママ友との付き合い方まで、女性が仕事を手放さずに済むよう、夫婦で協力して乗り越える術を伝授する。さらに、産休・育休期を「準備期間」ととらえた過ごし方や小1・小4の壁、中学受験など、子どもの成長に従って次々と立ちはだかる壁を乗り越える方法も、具体的に書かれている。

「家族に迷惑をかけない働き方」ではいつまでも対等になれない

「共働きの壁」を克服すべき理由として、内藤さんは、人生におけるリスクヘッジのため、人生における選択肢を広げるため、パートナーと大人同士の対等な関係を保つため、子どもと大人同士の対等な関係を作るため、そして、男性らしさ女性らしさではなく「私のまま」を生きるため、の5つを挙げている。

中でも「パートナーと大人同士の対等な関係を保つ」ことは、これからの時代、大きな意味を持ってくる。

男性は家族を養うための稼ぎを求められ、女性は家事を完ぺきにこなしたうえで、家族に迷惑をかけないように働くことが求められるのは、対等な関係とはいえません。お互いの仕事を尊重し、家庭役割を2人で担っていき、差し迫るピンチには支え合って対処する、その積み重ねの先に成熟した大人同士の関係が形成されるのだと思います。

とはいえ本書は、何が何でもフルタイム正社員を死守すべき、と説いているわけではない。

一人一人は弱いから、毎日毎日がんばり続けられないから、せっかく縁あって家族になったのだから、歯を食いしばるのではなく「笑顔で支え合うためのヒント集」としてご活用いただくことを目指しました。

共働きで家事・育児を協力しながら乗り越えている夫婦もいるが、まだまだ「男は仕事、女は家庭」という社会通念がなくならないのも事実。がんばりすぎず、肩の力を抜いて、できることから始めたい。

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