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ニューヨークでは20%が閉業!ホテルがコロナ禍で生き残るための「驚くべき選択」とは?

  • 2021.10.12
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2020年3月新型コロナウイルスの大流行により、ニューヨークのホテルは感染拡大防止のため営業を停止しました。商用や観光の旅行客が激減し、ニューヨーク市内のホテルは20%が閉業、2025年まで回復は難しいといわれています。コロナ禍のニューヨークで閉鎖したホテルの傾向、そして生き残ったホテルが取った驚くべき策とは?

閉業したホテル New York Marriott East Side 2021年10月2日撮影

コロナ禍によりNYCのホテルの多くが閉業

ニューヨーク市都市計画局(2021年1月発表データ)によると、2020年1月〜9月の間 ニューヨーク市では総数705のホテルの20%にあたる135のホテルが閉業、客室総数12万7,810室の31%にあたる39,244室が閉鎖。閉鎖したホテルの96.3%は、マンハッタンにあるホテルでした。

オフィス街に近いミッドタウンイースト クライスラー・ビルディングが望める 2021年10月2日撮影

大企業のオフィスが多数集まるミッドタウンイーストには、国賓も宿泊した高級ホテル「ウォルドーフ・アストリア・ホテル」を中心に多くのホテルが存在しました。商用のビジネス旅行客をはじめ、グランド・セントラル駅にもほど近い立地の良さから観光客も多かったのです。

ところがコロナ禍による観光及びビジネス客の激減で、現在改装工事中のウォルドーフ・アストリア・ホテル(2014年中国企業が買収)を除き、近辺のホテルは軒並み閉業。夜に近くを通りがかると、怖いほどひとけがなく、閉業したホテル街は真っ暗。コロナ禍以前は、早朝からホテルのレストランで朝食を楽しむ人がいて、ニューヨークらしい光景が見られたものでした。

エンパイアステートビルの建築家が設計した「ニューヨーク・マリオット・イーストサイド」

閉業したホテル New York Marriott East Side 2021年10月2日撮影

ニューヨーク・マリオット・イーストサイドは、エンパイアステートビルを手がけたアーサー・ルーミス・ハーモンによって設計され、1924年、シェラトンホテルとして建設。開業当時は、世界で最も高い(118m)ホテルといわれました。2020年10月閉業。

【閉業】New York Marriott East Side(569室)

525 Lexington Ave, New York, NY 10022

ブティックホテルの先駆け「マックスウェル・ホテル」

閉業したホテル The Maxwell 2021年10月2日撮影

閉業したホテル The Maxwell 入り口は閉鎖 2021年10月2日撮影

マックスウェル・ホテルは、旧Wホテルでブティックホテルの先駆け。2020年4月閉業。

【閉業】The Maxwell (formerly W New York) (688室)

541 Lexington Avenue, New York, NY 10022

コロナ禍の中でさえ100年近く明かりを灯してきた「ルーズベルト・ホテル」

(C)Roosevelt Hotel

ルーズベルト・ホテルは1924年創業。100年近く一度も閉じることなく、コロナ禍の中でさえ営業を続けてきました。コロナが大流行の2020年4月と5月は、感染者や医療関係者の宿泊を引き受けていたそうです。パキスタン国際航空の所有で、2020年12月廃業。

【閉業】The Roosevelt Hotel (1,025 室)

45 E 45th St, New York, NY 10017

臨時休業中の「ダブルツリー・バイ・ヒルトン ホテル メトロポリタン・ニューヨーク」

臨時休業中 The DoubleTree Metropolitan New York City hotel 2021年10月2日撮影

ダブルツリー・バイ・ヒルトン ホテル メトロポリタン・ニューヨークは、 2020年11月30日〜2021年10月14日まで臨時休業中(10月15日より再開予定)。

【臨時休業中】

DoubleTree by Hilton Hotel Metropolitan

569 Lexington Ave, New York, NY 10022

臨時休業中 The National(The Benjamin ホテル内のレストラン) 2021年10月2日撮影

The Benjaminホテル併設のレストラン“The National”は臨時休業中(2021年10月11日現在)。ホテルは営業していますが宿泊客が多くないため、レストラン利用客が少なく、休業しているものと思われます。

コロナ禍でホテルが生き残るために行った苦肉の策

●医療スタッフの宿泊施設(人手が足りずアメリカ各州から助けを呼んだ、家族に感染させないなど自宅通勤ができないため)

●重症でない感染者の隔離施設

●ホームレスの宿泊施設(感染防止のためシェルター(保護施設)からの移動)

2020年3月に大流行した新型コロナウイルス感染拡大防止のため、ニューヨーク市のホテルは閉鎖、営業を停止しました。感染が最盛期の2020年3月と4月には、医療スタッフと重症ではない感染患者の宿泊施設に。さらにニューヨーク市政府は、シェルター(保護施設)に住む何千人ものホームレスの人々をホテルの部屋に移しました。NYCのローカルテレビ局NY1(2020年6月25日記事)によると、ニューヨーク市内には1万7,000人以上のホームレスがおり、現在1万3,000人がホテルに住んでいるそうです。ホームレスが宿泊しているホテルは全体の20%にも及び、しかも安ホテルではなく、ブティックホテルやラグジュアリーホテルであることが驚きです。

ホームレスの引き受けなど、ホテルが望まないであろうニューヨーク市からの提案をなぜ受け入れたかといえば、ニューヨーク市が宿泊費を支払うからにほかなりません。コロナ禍の宿泊客の激減で、ホテルも賃料やローンが払えず経済的に困窮しており、生き残るための選択であったと思われます。

閉業したニューヨーク市マンハッタンのホテル

閉業したニューヨーク市マンハッタンのホテル

ホテル名(住所)客室数Ace Hotel Sister City(225 Bowery, New York, NY 10002) 200室

AKA Tribeca(85 W. Broadway)100室

AKA United Nations(234 E. 46th St.)95室

AKA Wall Street(84 William St.)132室

Best Western Bowery Hanbee(231 Grand St.)102室

Bryant Park Hotel(40 W 40th St.)128室

Comfort Inn Manhattan Bridge(63 Chrystie St.)60室

Courtyard New York Manhattan/Herald Square(8 Herald Square)167室

Excelsior Hotel(45 W. 81st. St.)116室

Gramercy Park Hotel(2 Lexington Ave, New York, NY 10010)190室

Hilton Times Square(234 W. 42nd St.)460室

Hudson Hotel(356 W. 58th St.)876室

Marmara Manhattan(301 E. 94th St.)109室

Maxwell Hotel(541 Lexington Ave.)698室

New York Marriott East Side(525 Lexington Ave.)636室

Novotel Times Square(226 W. 52nd St.)480室

Omni Berkshire Place(21 E. 52nd. St.)399室

Roosevelt Hotel(45 E. 45th St.)1,025室

Salisbury Hotel(123 W. 57th St.)196室

The Blakely(136 W. 55th St.)118室

W Hotel(8 Albany St.)217室

上記の閉業した高級ホテルやブティックホテルの中には、一部がホームレスの収容施設になっていたホテルもあります。利用客はホームレスと同じ屋根の下で宿泊とは、知る由もありません。

閉鎖したホテルは、売却先を待つ場合や、住居用にコンドミニアム(高級マンション)として販売する場合があります。

閉業したホテルのレベル

(C) New York City Department of City Planning 2020年9月時点

ニューヨーク市都市計画局(2021年1月発表データ)によると、閉業したホテルのレベルは下記の通り(上記参照)。

●ECONOMY(エコノミー) 2.9%

ベストウエスタン、デイズイン、ラマダなどのエコノミーホテル

●UPPER MID-SCALE(アッパー・ミッドスケール)13.3%

コンフォート・イン、ハンプトン・インなどの中級ビジネスホテル

●UPSCALE(アップスケール)57%

ラディソン、ハイアットプレース、ヒルトン・ガーデンイン、ダブルツリーなどの上級ホテル

●UPPER UPSCALE(アッパー・アップスケール)UPSCALE(アップスケール)の57%に含む?

ヒルトン、ハイアット・リージェンシー、マリオットなどの高級ホテル

●LUXURY(ラグジュアリー)26.8%

リッツ・カールトン、コンラッド、グランド・ハイアット、インターコンチネンタルなど5つ星のラグジュアリーホテル

閉業したホテルの57%が高級・上級ホテルで、次が26.8%のラグジュアリーホテルです。ニューヨーク市マンハッタンのホテルは高額で、高級・豪華ホテルで一泊400ドル(アメリカの場合、人数ではなく一部屋の価格)以上、ラグジュアリーホテルは一泊800ドル以上します。スーツケースを広げられないほど狭く、設備が古いのにホテル税や諸雑費が加算されることを嫌い、ホテルからAirbnbに乗り換えた人が多いことも原因と考えられます。

次期市長が計画する閉業したホテルの利用案

市内のホテルの20%以上が現在閉鎖されていますが、エリック・アダムズ次期市長(予定)は、精神疾患や薬物中毒の問題がある人たちと刑務所から出所した人たちを支援する住宅にする計画を提案。マンハッタン郊外の区(クイーンズやブロンクス、ブルックリン)のホテルを想定しているようですが、筆者をはじめとする地域住民にとっては治安の悪化が懸念され、ありがたくない提案です。すでに各地では、下記のような問題が起きていました。

ホームレスの移動による地域住民の困惑

2020年7月新型コロナウイルス感染拡大防止のため、ニューヨーク市は283名のホームレスをシェルター(保護施設)から、マンハッタンアッパーウエストの4つ星ホテル“The Lucerne Hotel”へ移動させました。その結果、精神疾患や薬物中毒のホームレスが、通りで薬物使用や盗難、住民を脅迫するなど治安が悪化。ホテル近隣の地域住民は、ニューヨーク市に対して訴訟の準備をしていました。デブラシオNY市長が訪れ「容認できない状況である」ことを認めた結果、ニューヨーク市は、ホームレスをウォール街の“The Raddison Hotel”へ移動を発表。ウォール街の地域住民は移動を阻止するため、非営利団体を組織して、ニューヨーク市を提訴(2021年1月5日勝訴)。

ニューヨークのホテルの約20%にホームレスが住んでいる

ニューヨーク市は、ホームレスをシェルターからホテルに移動させることに対して、ホテル側とは話をつけていますが、地域住民に対して事前通告をしていませんでした。ホームレスの中には、刑務所を出所して居所がない人や性犯罪者も含まれるとのことで、ニューヨーク市民はホテルをシェルター化する行政に怯えています。

ニューヨーク観光の環境が戻り、あなたがホテル探しをする時には、宿泊料や場所だけで選ばず、ホテル名に「homeless(ホームレス)」や「shelter(シェルター)」の言葉を加えて、インターネット検索で確認することをお勧めします。ニューヨークのホテルの約20%はホームレスが住んでいるといわれており、知らずに同じホテルを選ぶ可能性を避けたほうがよさそうです。

参照記事

米ヒルトン、NY高級ホテルを中国企業に売却 AFP 2014年10月7日

The rich history of New York Marriott East Side New York Marriott East Side

コロナ渦に営業を続けるホテル ホテリスタ 2020年7月21日

SAD LIST: ALL THE HOTELS IN NEW YORK CITY THAT HAVE CLOSED FOR GOOD DUE TO COVID Your Mileage May Vary 2021年2月26日

NYC Hotel Market Analysis New York City Department of City Planning 2021年1月

Homeless Men Lose Court Battle to Stay in Upper West Side Hotel The New York Times 2021年6月3日(7月26日更新)

Eric Adams, N.Y.C.’s likely next mayor, wants to turn shuttered hotels into permanent housing for the homeless. The New York Times 2021年9月21日(10月3日更新)

Exclusive: Close to 20 Percent of NYC Hotels are Housing the Homeless NY1 2020年6月25日

[All Photos by Hideyuki Tatebayashi ] Do not use images without permission.

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