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久々に発見!人間の天才!ほぼ100%の人が、大好きになる人!

  • 2021.10.6
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私は決して謙虚じゃないと否定する人こそ、本物の謙虚

謙虚であることは素晴らしいけれど、実はその分、謙虚になるって難しい。意地悪な言い方だけれど、謙虚ぶることはいくらでもでき、それは大体、人にバレているから。嘘の謙虚がバレるほど格好悪いことはないからだ。

おそらくそこまでわかっていて、“この人”は「あんな発言」をしたのだろう。東京オリンピックの女子ボクシングで金メダルを取った入江聖奈さん。「カエルが大好き」発言とか、「ベリーセンキュー」の挨拶で話題となり、決勝戦に今まさに向かう時にも茶目っ気たっぷり、満面の笑顔だったことなど、数々の話題を振りまいた人である。

この人が、試合中も試合の前後も、終始いろんな人にペコペコと頭を下げていて、それを褒められた時、「いやあれは(特にレフェリーに)反則の減点をされたくなくて、印象をよくするためで。全然いい子じゃないです」と答えたのだ。

ペコペコすることと謙虚は、もちろんイコールではないけれど、どこまでも礼儀正しいことを褒められて、「減点されたくないから」と即答したのは、何だか痛快だった。

笑いを取るつもりもないのだろうが笑いを取り、本心はうやむやにして終わったが、このことで好感度がさらに上がったのは確か。なぜなら、謙虚であるのを否定することで、実はなおさら謙虚であることが浮き彫りにされたから。もっと言うなら、謙虚であるのを認めてしまうと、結局は謙虚って嘘っぽくなることまで、この人は知っていたかもしれないからである。

その証拠に彼女は他のインタビューで、「自分は本来、金メダルを取れるような選手ではない」と言った。メダルが取れたなんて信じられないという表現はよく耳にするが、彼女のこの極めて冷静なコメントはとても印象的だった。本当の意味で謙虚でないと出てこない表現である。

ふと、近頃MCとしてブレイクしている佐藤栞里さんの存在を思い出した。あるドラマに出演した時、その撮影現場での栞里さんの口癖がいっときの流行語になったというが、その口癖とは何と、「ありがとうございます!」。なぜそれが流行語になるのかと不思議に思うはずだが、それだけたくさん心のこもった「ありがとう」をどんな場面でも、おそらく別にありがたくない場面でも、ひたすらにこやかに言える。そういう人柄が周囲によい形で伝播していったのだろう。

言い換えるなら、それが心優しい謙虚な人柄から自然に出てくる本物の「ありがとう」だからこそ、聞き流せなかったのだ。当たり前の言葉を口にすることの大切さを全員で共有し、見習わなければいけないと思ったから、いっそ大げさに流行語にしたのだろう。そのことが話題になった場面でも、佐藤栞里さんは、ただいつものように声を出して笑っていた。これもまた嘘のない謙虚さの現れ。それこそ印象をよくしようとして口癖にしているのでないのは、この笑顔を見ていればよくわかる。

そういう意味で佐藤栞里さんは見事。だからずっと気になっていた。今さらだけれど、こういう女性にならなきゃと思わせる人。年齢を超えていろいろと学ばせてくれる人である。

目標を高く設定しすぎるから人間は苦しいのだと知っている人

さて、話を元に戻せば、現在20歳の大学生、入江聖奈選手に学ばせてもらったのは、それだけではない。心理学のゼミで「浮気の境界線」の研究をしているというが、体育大学でなぜ浮気? そこに違和感を覚えたものの、おそらく相手の心理を読むことが、ボクシングという一対一の競技にも役立つのだろう。結果としてこの人は、心理の裏側までを巧みに読み切ることで、それを好感度に変える術を宿していた。言い換えれば、何を言えば誰も傷つかず、心地よくなるか知っているのだ。

もったいないことに、「大学卒業とともに競技引退を決めている」ともこの人はあっさり言い放った。「社会人でも続けていたら引き際がわかんなくなりそうで、区切りをつけるために大学でやめるつもり。パリは目指さず、むしろ『いい社会人になりたい』と思います」と言ったのだ。さらに今後の進路について、さまざまな可能性を示されても「芸能界は飽きられたら終わりで怖いので、つつましく生きていきます」。

まさしく物事がよく見えている人の発言だ。年齢が許せば、次もメダルを取りにいくのが必然なのだと思っていたから、誰もが一瞬もったいないと思い、でも次の瞬間、何か物事の真理を教えられた気がして、ハッとしたはずなのだ。

もちろん連覇を目指さないことが謙虚であるなどと言うつもりはない。逆に言えば、競技一筋でさらなる上を目指したほうが、アスリートとして誠実で真摯に映るのだろう。ただおそらくこの人は、何が自分を苦しめるかをよく知っているのだ。人間の心理が読めるから。

自己肯定感が低い人ほど、実は高い目標を持っているもの。設定する目標がいつも高すぎるから、何だかいつも苦しいし、常に達成感がないから、自分を否定してしまう。異性に対する理想が高すぎると、なかなか幸せになれないのと同じ。高い理想を持つのは素晴らしいが、目標は常に“目先のもの”であることが必要なのではないか。理想は高くても、目標は低く、小さい目標を小さくクリアしていくのが正しい道。一つ一つの目標が大きいから人は苦しむのだ。

入江選手は何かその辺りの人間の本質もよくわかっていて、だから地道な就職を考えているのではないだろうか。

こんな言葉もある。「志は高く、でも目標は低く」。もちろん逆に、目標そのものを高く持たなければ絶対に成功できない、人として進化もしない、そういう提言もある。でも正しくは、小さな目標を小刻みに叶えていって、合計すると結果として大きな目標の達成となるというのが、正しい目標の叶え方なのではないだろうか。

とはいえ、この人にはもう就職のオファーが次々に舞い込んでいるという。カエル関連、またはゲーム関連の仕事がしたいという発言になったのは、話の流れでたまたまだったのだろうし、小さい目標と言ったら、そういう仕事に失礼だけれど、あくまで一般論として、低めの目標だけ見つめていると、まさにこの人のように気がついたらもう目標を達成していたりする。そして高望みしないから、小さな目標達成を積み重ねた結果、金メダルまで取れてしまうのだ。地に足のついた未来を一つ一つ丁寧に生きていく人には、おそらく例外なくいい人生が待っているということ。

そしてこの人は対人関係の極意、好感度の高め方も教えてくれた。何かにつけてこの人は、自分を大きく見せず、むしろ小さく見せようとする。それも極めて自然に。私のような不器用な人でも金メダルが取れる、自分は頭の回転が遅いからバラエティには向かない、金メダルを取ると信号無視とか絶対できない……言葉の端々に自らを過小評価しようとするベクトルが働いていることに気づかされる。だからこの人は大きく見えるのだ。

ともかく総合的に見て、この人は極めて謙虚。しかし一般的な謙虚の形とは少し違う、もっと大きく広いところで素晴らしい人間性を見せてくれた。そして、きっとみんなこの人を大好きになったはずなのだ。

こんなふうに、本能的に人を心地よくさせる能力、また自分をあえて小さく見せる反射神経。両方あれば、ほぼ100%の人がその人を大好きになる、そこまで確信させてくれたのだ。あまりに学ぶことが多すぎて、普通じゃないから今回はこの人研究。

「謙虚さは、幸福な時ほど試される」そんな言葉がある。自分が幸せな時に好感度を高められる人はなかなかいない、だからなおさら見習うべき人なのである。

本能的に人を心地よくさせる能力、また自分をあえて小さく見せる反射神経。その両方があれば、ほぼ100%の人がその人

撮影/戸田嘉昭 スタイリング/細田宏美 構成/寺田奈巳

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