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まちを思い描き、わかち合う幸せ 【わたしのまちのてみやげ vol.6 北海道】

  • 2021.10.2
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まちを思い描き、わかち合う幸せ 【わたしのまちのてみやげ vol.6 北海道】
出典 FUDGE.jp

この包み紙を見た瞬間、込み上げるうれしさを隠しきれず、つい笑みが。

そう、北海道と言えば、の「六花亭」だ。

まちを思い描き、わかち合う幸せ 【わたしのまちのてみやげ vol.6 北海道】
出典 FUDGE.jp

紅色をしたはまなし、青紫色のえぞりんどう。北海道で自生する山野草が満開に咲く景色を前に、一度目を瞑り大きく深呼吸したくなる。心地よい風が頬を伝い、着飾ることなく淡々と佇む花たちに囲まれた自身の姿を想像した。既に心は軽やかに、北海道の豊かな自然の中。

今年は花柄包装紙が60周年の還暦を記念して、昭和36年10月に作られた第一号のデザインが復刻。発色淡く、変わらない素朴さを纏っており、ひとつひとつ配置にこだわり抜いて完成されたであろう原点が、帯広本店内で額に収められている。

まちを思い描き、わかち合う幸せ 【わたしのまちのてみやげ vol.6 北海道】
出典 FUDGE.jp

そして今回、わたしが紹介したいのは「十勝日誌」。

ゆったりとしたやわらかいタッチで、水々しく大らかに彩られている包装紙を開けた瞬間、書物を模った箱が現れ、その扉を1ページめくると、ひとつひとつ小包装されたお菓子たちが美しく整列していた。

まちを思い描き、わかち合う幸せ 【わたしのまちのてみやげ vol.6 北海道】
出典 FUDGE.jp

十勝の風土感じる短めな商品名に、ネーミング引き立たせる豊かな絵柄のパッケージ。ありつく前から心をきゅっと掴まれ、その地への懐かしさなのか、もしくは憧れなのか、それぞれが持つ柔らかいなにかに思い馳せる。

 

わたしを支え、救ってくれたお菓子

2019年に十勝へUターンし、再び暮らすことになったこのまちで、13年ほど前のある日を思い出していた。

久しぶりに過ごすふるさとで優しくしてもらった光景を胸に、帯広空港で手に取るお土産。「職場の人、いつも相談にのってくれるあの人、そして、わたしにも」と、必ず六花亭のお菓子をかごへ入れる。最後に自分へも選ぶ理由は、美味しいのはさることながら、それだけではない希望を胸に受け取れたから。

まちを思い描き、わかち合う幸せ 【わたしのまちのてみやげ vol.6 北海道】
出典 FUDGE.jp

お菓子を手に取るだけで、今まで当たり前に存在していた農村風景が、決して当たり前じゃないことに気づかされる。

遮る建物などない見晴らしの先に浮かぶ地平線は、どこまでも続く青空と大地を思い知るマドレーヌ「大平原」。

牧草を貯めておくレンガ造りのサイロを表現したサブレー「リッチランド」。

手が悴みながらも、空から舞う雪にうきうきした日を懐かしむ焼菓子「雪やこんこ」。

 

それらを口にする度、「疲れたら、たまには休みなよ」「無理しないでね」「いつでも北海道に帰っておいで」と、まるで誰かの声を代弁しているかのような声が聞こえ、慣れない土地で奮闘する私を応援してくれる様な勇気をくれた。

 

今年88周年を迎えた「六花亭」は、創業当初から変わらずに大切にしていることがある。それは、ポケットマネーで買いに行けるお菓子であること。家庭の台所にあるような、食べ続けても安心・安全な原材料でつくること。地域の方が普段着で買いに来てくれるような菓子屋であること。北海道という地域にちなんだ菓名やパッケージであること。

それを象徴するかのように、半分も満たないわたしの人生を「六花亭」のお菓子が見守った。

 

自営業で忙しい毎日を過ごす家族と、喜び祝った5歳のお誕生日、祖父が亡くなり人生ではじめて死と向き合った12歳、ひとり暮らしに期待膨らませた18歳、自身の信じたいものと社会の姿に揺れながらも、がむしゃらに前へ進んだ20代。逃げ出したいほどの苦しい日も、泣きたくなるほどの悲しい日も、負けたくないと意地を張った日も、笑えるほどの眩しい日も、喜び溢れたあの瞬間も。

つないでくれた命と歴史が今日までの点を、線へと紡いでいる。

 

先人たちへの敬意から誕生した「十勝日誌」
まちを思い描き、わかち合う幸せ 【わたしのまちのてみやげ vol.6 北海道】
出典 FUDGE.jp

開拓者たちの想いが直線的に商品となった「マルセイバターサンド」は、明治時代に十勝開拓の祖・依田勉三さん率いる晩成社牧場でバターを製造していた当時の缶ラベル「マルセイバタ」を模して作られた。少ししっとりとした生地の間に、北海道生乳100%のバターとホワイトチョコレート。そして、「これでもか!」という程の惜しみないレーズンが顔を出し、程よい酸味と鼻から抜ける芳醇な洋酒の香りに、毎度優雅な気持ちになる。凍らせて、アイスの様に食べるのも乙な味わい方だ。

こうした息吹が詰め合わされた「十勝日誌」は、北の大地を見つけ、調査し、私たちの暮らす土地を生んだ先人たちへの敬意から誕生したもの。木の枠でかたち取られたブック型の箱は、今も職人さんによる細やかな手作業が続く。食べ終わった後だって、「さて、ここになにを詰めようか」と一緒に暮らしを営む場面を巡らせたくなるのだから。

まちを思い描き、わかち合う幸せ 【わたしのまちのてみやげ vol.6 北海道】
出典 FUDGE.jp

一日の終わりに箱を開けてお気に入りを探す楽しさも、仕事や家事の束の間、大好きなお茶や珈琲とともに食べてほっとする美味しさも、休日に友人や家族、パートナーと気軽に分け合う幸せも、ふんだんに詰まったこの宝箱をお届けしたい。

今度はわたしが「疲れたら、たまには休みなよ」「無理しないでね」「事態が落ち着いたら、気分転換に北海道へ遊びにおいで」そんな声を大切な人にかけながら。

まちを思い描き、わかち合う幸せ 【わたしのまちのてみやげ vol.6 北海道】
出典 FUDGE.jp
まちを思い描き、わかち合う幸せ 【わたしのまちのてみやげ vol.6 北海道】
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六花亭帯広本店 北海道帯広市西2条南9丁目6

電話 (0120)-12-6666

営業時間 / 9:00-18:00

喫茶室営業時間 / 11:00-17:00 (LO 16:30) *水曜定休 *季節によって変動あり

オンラインショップ

 


Text:坂口阿希奈(pokkeroom)

pokkeは、アイヌ語であったかいという意味です。ポッケ[ポケット]から差し出せるちょっとあったくてほっとするモノやコトを企画し、編集するお部屋(pokkeroom)を運営しています。

pokkeroom

 

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