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ハローキティがもたらした価値観の革命。サンリオ展で「カワイイ」カルチャーを紐解く

  • 2021.9.21
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日本を代表するキャラクターである「ハローキティ」をはじめ、これまで多くの人気キャラクターを輩出してきたサンリオ。2020年に創業60周年を迎え、これまでの歴史を紐解く展示会が六本木ヒルズの東京シティビューで始まった。本展「サンリオ展 ニッポンのカワイイ文化60年史」では、貴重な原画からキャラクターのアート作品など800点以上の資料が展示されている。サンリオの魅力に溢れる展示会の見どころを紹介する。

今や世界の共通言語でもある「カワイイ」。この言葉を世界に発信したきっかけは、ハローキティといっても過言ではない。
幼少期からさまざまなシーンでハローキティのグッズに触れる機会は多く、女の子が一度は好きになるキャラクターではないだろうか。筆者も、幼稚園の時の将来の夢は「キティちゃんになる!」だった。
本展では、サンリオがなぜカワイイを突き詰めてきたのか、これからの世界に伝えたいメッセージなどを感じることができる。

入場してすぐお目見えするのは、現代アーティストの増田セバスチャン氏が本展のために手がけた作品「Unforgettable Tower」。
高さ7mを超えるぬいぐるみのタワーは圧巻。4,000体ものぬいぐるみが絶妙なバランスで積み重なる様は、キャラクターの懐かしさやノスタルジックを感じさせる。
さらに、背景にはビルの52階からの絶景が広がっていて、ぬいぐるみタワーと東京タワーの奇妙な2ショットが面白い。タワーを埋め尽くすカワイイキャラクターたちが、幼少期を思い出すようなワクワク感やファンシーな世界観を演出してくれている。

会場内では、懐かしのグッズや初公開のキャラクー原画などからサンリオの歩みを辿ることができる。
サンリオの歴史は1960年代の高度経済成長期から始まった。戦後不況が収まり、人々は生活に余暇や遊び心を求めるようになると考え、かわいくて人を感動させるサービスをしたいという思いで起業したそうだ。
そこからサンリオは「カワイイ」の基準を考えるため、比較を続けてきたという。
丸と三角ならどちらがカワイイと感じるか、赤い丸と黒い丸ではどちらがカワイイか……。
すべての判断基準は「カワイイかカワイくないか」。そのこだわりから心ときめくカワイイものがたくさん生まれていったのだろう。

サンリオキャラクター誕生の秘密を紐解く

サンリオがオリジナルキャラクターに挑戦し始めた1970年代。当時はパソコンがなかったため、手書きのデザイン画や、人気キャラクターが生まれるまでの軌跡などが展示されている。ディスプレイもそれぞれのキャラクターの世界観に溢れていて、サンリオファンはもちろん、そうでなくてもカワイイ世界に入り浸ってしまう。

人気キャラクター「ポムポムプリン」のデビュー前の貴重なデザイン画。当初はトレードマークのベレー帽がなかった。Harumari Inc.

ハローキティがもたらした価値観の革命

そして、なんといってもサンリオを代表するハローキティの展示は注目だ。ハローキティが世界的な人気を獲得するに至るまでが丁寧に紐解かれているのが面白い。
ハローキティにはなぜ口が描かれなかったのか、どうしてここまで愛される存在になったのか、
その理由はなんといっても「女の子の代弁者」だからだといえるだろう。
例えば、渋谷にコギャルが溢れた時期に、頭のリボンをハイビスカスに変えてみたところ、当時の女子高校生たちが「キティは私たちの分身、代弁者だ」といった見方をしたそう。
今では大人がカワイイものを所有することに違和感はないが、ひと昔前は「大人になるとカワイイものは卒業するべき」。その当たり前だった価値観を、ハローキティが変えたという。
時代に合わせた人気のスタイルを取り入れることで、「女の子」から「女性」になった大人にも愛されるキャラクターに一緒に成長していったのだろう。

チェッカーズが流行ればチェック柄、コムデギャルソンが流行ればモノトーンを取り入れるなど、流行を巧みに取り入れるキャラクターは、ハローキティが初めてだろう。Harumari Inc.

また、海外では「女性はSexyであるべき」だと考えられていた。
ところが、ハリウッドセレブがキティをキッチュなアイコンとしてファッションに取り入れ始めたことで、海外の女性たちのキティ人気に火がつき、世界に「カワイイカルチャー」が広まったのであった。みんながみんな「Sexy」でなく「Cute」でもいい。現在の価値観の多様化の源流ともいえる現象であり、ハローキティの存在は世界中の女性の価値観にも影響を与えたといえる。

レディー・ガガが着用して話題になったハローキティのぬいぐるみドレスを再現。Harumari Inc.

ちなみに、最近のキティはYouTuberになったりSDGsを応援したり、常に時代の流れをキャッチした発信をし続けているのだ。これからさらに時代の変化とともに、世界中の人々の価値観とともに変わっていくだろう。

人気アーティストとのコラボ展示も

「マイメロディの面影」 中臣 一氏Harumari Inc.

国内のアーティストが、サンリオ展のために製作したオリジナルアート作品も。
美術作家の深堀隆介氏の作品や彫刻家のはしもとみお氏の作品など、見ると心温まる作品も見どころだ。ポップでカラフルな展示に包まれていたが、この空間だけ別の会場に来たかのような、静の時間が流れている。

カワイイは平和へのメッセージ

世の中に明るい兆しが見え始めた時に、カワイイもので世界を変えたいと思い、60年走り続けてきたサンリオ。カワイイは平和への願いから生み出されてきたのだ。
展示の最後では、これからの未来に向けたメッセージが込められている。
ハローキティのリボンは、世界中の人たちを結ぶ「なかよく」のシンボル。ハローキティが役目を終えるのは、世界中から戦争がなくなる世界だという。そんな世界をサンリオは求め続けていきたいと締めくくっている。

あの頃の懐かしい思い出が蘇り、大人になった今見てもカワイイと感じる本展覧会。
サンリオの魅力と、ハッピーになれる世界観を堪能しながら、カワイイが巻き起こした価値観の革命を愉しもう。

サンリオ展 ニッポンのカワイイ文化60年史
会期:開催中〜2022年1月10日(月・祝)
会場:東京シティビュー(六本木ヒルズ森タワー52階)
https://sanriocharactermuseum.com/Harumari Inc.
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