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完全受注生産、無店舗販売、アフターケアの充実。ニューノーマルなアパレルのありかたの標となる【ノール・ケアド】

  • 2021.9.21
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2021年秋冬シーズンに誕生したニットウェアブランド【NORD CADRE(ノール・ケアド)】。コンフォートワークウェアをテーマに、デイリーに着こなしやすいデザインと着心地のよさを追求しています。製品のクオリティのみならず、無店舗でオンラインのみでの完全受注生産も特徴。コロナ禍により、アパレル業界もニューノーマルなありかたが問われている今、ディレクターの竹内昌子さんに、これからのファッションブランドに必要なことを尋ねました。

デザイン性もあって高品質なニットアイテムを低価格で提供

長く愛用できるベーシックさをベースに、気分の上がるディテールを加えたミニマルなデザインのニット。キャメル、ピンクベージュなど日本人の肌色に合うアースカラーを中心にシーズンカラーを差し色で取り入れる【ノール・ケアド】のアイテムは、自宅にいることが増えた30代女性の今の気分をすくい取ったデザインが揃います。

画像: 「KIKAニットドレス」¥14,000※2021年10月5日(火)〜10月18日(月)が受注期間 出典:ノール・ケアド
「KIKAニットドレス」¥14,000※2021年10月5日(火)〜10月18日(月)が受注期間

触り心地のいい素材で、しかも洗濯機で洗えるのに、ニットプルオーバーで1万円、ニットのロングジャケットで1万5千円と手頃な価格設定。リーズナブルに提案できるのは、店舗を置かず、オンラインのみの完全受注生産にしているから。
ただ価格を抑えるための完全受注生産ではありません。そこには長年アパレル業界で働き、ニューヨークで最新のサスティナブルを学んできたディレクターの竹内さんの思いが大いに反映されています。

ニューヨークで業界の垣根を超えたサスティナブルな取り組みを学ぶ

アパレルメーカーで10年以上に渡ってディレクターとしての経験を持つ竹内さんの転機になったのが、2010年から1年間に及んだオーストラリアでの生活。

画像: 【ノール・ケアド】ディレクター竹内昌子さん 出典:ノール・ケアド
【ノール・ケアド】ディレクター竹内昌子さん

「オーストラリア人パートナーの実家は【ジュリーク】などのオーガニックコスメの工場地帯にあって、環境に対する意識がすごく高いエリアでした。日本でもエコバッグが当たり前になりつつありますが、10年以上前からオーストラリアはエコバッグを持つ意識が根付いていて。スーパーなどでエコバッグを忘れようものなら白い目で見られるので、両手で抱えて持ち帰っていたほど(笑)」

画像: オーストラリア時代に竹内さんがよく通っていたオーガニックスーパー 出典:ノール・ケアド
オーストラリア時代に竹内さんがよく通っていたオーガニックスーパー

サステナビリティが息づくオーストラリアで出合ったのがヨガ。ニューヨークでもヨガウェアなどウェルネスブランドのショップが並ぶようになった頃で、健康を意識したファッションの隆盛を感じるように。日本でもウェルネスブランドのブームが来ると確信した竹内さんは帰国後、ヨガウェアのブランドを手掛けます。そこでこれまでのファッションブランドのありかたに対する疑問が。
「今までのブランドは、デザインや価格などブランド側が打ち出したいことを一方的に発信しがちでした。でもウェルネス系のブランドを手掛けていると、お客さまにとって気持ちいいウェアとは? サスティナブルとは何か? と洋服をただ作るだけではいけないと考えるようになりました」

画像: 「バックコンシャスニットトップス」各¥10,000※2021年10月5日(火)〜10月18日(月)が受注期間 出典:ノール・ケアド
「バックコンシャスニットトップス」各¥10,000※2021年10月5日(火)〜10月18日(月)が受注期間

時を同じくしてSDGsという言葉が出始め、さらに考えを深めていきます。
「SDGsは目的地であって、過程を変えないとゴールには辿り着けない。私達ができる取り組みはなんなんだろうって」
30歳をすぎ、担当していたブランドが一段落したこともあり、長年勉強のために生活してみたかったニューヨーク行きを決意。
サスティナブルを模索していたのに、大量生産・大量消費のイメージが強いアメリカは矛盾しているようにも感じます。

画像: ブルックリンで毎週日曜に開催されているフリーマーケット「ブルックリンフリー」には、竹内さんも足繁く通ったそう 出典:ノール・ケアド
ブルックリンで毎週日曜に開催されているフリーマーケット「ブルックリンフリー」には、竹内さんも足繁く通ったそう

「ニューヨークはサスティナブルと都会が交わる場所。特に私が住んだブルックリンのウィリアムズバーグは、地産地消のレストランが多く、経営者の違うレストランが1頭の牛を買って分け合うなど食品ロス削減を熱心に取り組むお店がたくさんあります。エシカルマインドを持つ世界中のお金持ちが集まっているから場所でもあるから、起こすアクションのインパクトも大きい。ここで業界の垣根を超えてできるサスティナブルな取り組みを勉強したかったんです」

画像: ニューヨークの様々な店を巡ってディスプレイの勉強も 出典:ノール・ケアド
ニューヨークの様々な店を巡ってディスプレイの勉強も

アメリカはファッションブランド一つにしても目的や生産背景の透明性が求められ、サスティナブルな目標を持ち、その点を打ち出さなければブランドは生き残っていけない環境。作って売れればOKになりがちな日本とは違い、ブランドが存在するには社会的な意義がすごく問われた、と話します。
「アパレルなら、洗濯や染めで環境汚染しない、地域密着の工場で外国人をしっかりとした労働環境で働かせているか、そういった当たり前のことなのに、ずっと見過ごされてきたことに改めて気付かされました」

ブランドは売ってからも責任がある。ニット製品をケアするサービスも開始

「社会に対して具体的な還元目標を持つことが、これからのブランドには必要」。そんな思いを抱えながら、帰国すると【ノール・ケアド】のディレクターの話が舞い込みます。

画像: 「バックコンシャスニットトップス」¥10,000、「ワイドリブフレアニットスカート」¥10,000、「ワイドリブレギンスパンツ」¥8,000※2021年10月5日(火)〜10月18日(月)が受注期間 その他ブランド私物 出典:ノール・ケアド
「バックコンシャスニットトップス」¥10,000、「ワイドリブフレアニットスカート」¥10,000、「ワイドリブレギンスパンツ」¥8,000※2021年10月5日(火)〜10月18日(月)が受注期間 その他ブランド私物

【ノール・ケアド】の運営会社も長年他社から依頼されたニット製品を製造しており、大量生産・大量消費なものづくりをしていた企業。竹内さんと同じ「大量生産・大量消費からスローファッションに変えたい」との思いを、【ノール・ケアド】代表も抱いていたことでブランドはスタートを切りました。
実店舗を大量に持つのではなく、オンラインとリアルな体験の融合、テキスタイルやファクトリーイノベーション、ダイバーシティの重要性などをテーマに掲げた【ノール・ケアド】を、じっくり時間をかけて育てたいと話す竹内さんの目的は明確。
「完全受注生産にしたのはコスト削減だけでなく、ロスを減らし、環境にも配慮したいから。完全受注生産なら売れるたびに追加生産をかけるのではなく、まとめて工場に発注できるので輸送の回数が減らせ、コストがかからず、CO2削減にもなります」
販売枚数をブランド側がしっかり管理できるため、消費者にとってショックな、買った新作が1週間後にセールになっているようなことも避けられます。

画像: 「KIKAニットドレス」¥14,000、手に持った「ニットコードロングガウン」¥19,000※2021年10月5日(火)〜10月18日(月)が受注期間 出典:ノール・ケアド
「KIKAニットドレス」¥14,000、手に持った「ニットコードロングガウン」¥19,000※2021年10月5日(火)〜10月18日(月)が受注期間

ブランド価値を高めるためには、こんな取り組みも。
「生産背景を変えるだけではなく、製品そのもののクオリティやそれに付随するサービス、経験価値があるから長く愛されるブランドになります。例えば【エルメス】は正規品なら作られた時期が古くともケアしてくれ、ちょっとした質問にも答えてくれますよね。作った責任、売る責任まで持つのがブランドとしてのあるべき姿で、アフターケアができるどうかでもブランドの意義は変わってきます」
それを踏まえて誕生したのが「ケアクリニック」。ニットウェアのリペア・メンテナンスサービスで、【ノール・ケアド】の製品は無償で、他ブランドのニット製品も有償で修理してくれます。

画像: ちょっとした虫食いなど、ニット製品にありがちなほころびも「ケアクリニック」で修理できます 出典:ノール・ケアド
ちょっとした虫食いなど、ニット製品にありがちなほころびも「ケアクリニック」で修理できます

実店舗がなくても直接商品が手に取れる新しい場を模索中

現段階で実店舗を置く予定ありませんが、お客様に実物を手にとってもらうべく百貨店やセレクトショップでのポップアップショップやショールーミング機能を持つ場を設けることは考えています。
「理想はニューヨークにある『ショーフィールズ』。SNSの普及でDtoCブランドが盛り上がっていますが、そこは2週間ごと変わるDtoCブランドのポップアップショップだけが集まった建物。店舗運営費や人件費などのブランドにとって大きなコストは抑えながらお客さんとリアルな接点が持て、販売もしています。商品に対するお客様の意識はかなり進んでいて、もう大量に作って売っての時代ではありません。これからのファッションブランドは、経営もものづくりもコンパクトな方がこれからの時代にはフィットするのではないでしょうか」

画像: 2021年10月期はイエローを差し色に、ベージュなどの肌なじみのいいカラーレンジ 出典:ノール・ケアド
2021年10月期はイエローを差し色に、ベージュなどの肌なじみのいいカラーレンジ

新しいファッションブランドの販売方法として、もう一つ竹内さんが注目しているのが二次流通。
「高級ブランドの中古品を扱うプラットフォームの『ザ・リアルリアル』では【シャネル】や【コーチ】、【ラルフ・ローレン】といったハイブランドの中古や新古品がブランド公認で販売されています。二次流通はブランドの全ラインナップが揃っていないので、他に気になるアイテムがあればお客様は正規ショップに行く流れが海外では生まれています。一種のプロモーションになっているんですね。日本のアパレル業界はまだ自分たちの領地を守ることに必死ですが、業界の垣根を超えないと時代の変化に対応できないんじゃないかな」

画像: 出典:ノール・ケアド

最後に近く越境ECを始め、海外展開も視野に入れる【ノール・ケアド】の展望をうかがいました。
「環境問題に意識を向けるお客様やブランドがもっと増えてほしいですね。それを牽引するため、先陣を切って日本でスローファッションを広めたい。1社で100%エシカルはできませんが、1%のエシカルに取り組む会社が100社に増えれば大きなインパクトがあります。だから受注生産のブランドがもっと増えてほしいし、増えてくれると信じています」

【ノール・ケアド】公式サイト
https://nordcadre.com/

※価格はすべて税込みです。

Senior Writer:津島千佳

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