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『スペース・プレイヤーズ』『フリー・ガイ』 大手スタジオのコンテンツ活用が本格化?

  • 2021.9.11
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『スペース・プレイヤーズ』(c) 2021 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.

※本稿には『スペース・プレイヤーズ』『フリー・ガイ』のネタバレが含まれています。

現在日本でも大ヒット公開中の『フリー・ガイ』。アメリカでは公開4周目でも相変わらず3位とトップ3内に君臨し続け、累計興収は約9200万ドルを記録。予想外の大成功を収めている。また、一足先の7月16日に全米公開された『スペース・プレイヤーズ』も公開週は約3100万ドルで首位を記録し、公開13週になる現在、アメリカ国内では約7000万ドルという結果を叩き出した。早い話、どちらもなかなかヒットしているということだ。『フリー・ガイ』に至っては、スタジオがこの結果に微笑み、続編の制作にも前向きだという。

この2作品の共通点は、映画の大きな見どころのひとつとして錚々たる“カメオ出演”が挙げられること。同スタジオ内が権利を持つコンテンツを、これでもかと作品内に登場させているのだ。例えば『フリー・ガイ』はクライマックスでデュードとガイが戦うシーンに登場した、キャプテン・アメリカのシールド(そして「俺の!」と動画を見ながら突っ込むクリス・エヴァンス)。BGMには『アベンジャーズ』のテーマ曲も流れ、ガイはそのままハルクスマッシュもお見舞いさせた。それに留まらず、今度は武器の中からライトセーバーを取り出し、『スター・ウォーズ』の曲とともに振りかざしていく。本作が20世紀スタジオ(旧20世紀フォックス)作品……つまり、全てがディズニーの傘下にあるコンテンツだからこその使い放題っぷりである。

また『スペース・プレイヤーズ』に関しては、打ち込むだけで腱鞘炎になってしまいそうなほどのキャラクター総出演っぷりだ。映画『カラブランカ』や『オズの魔法使』といったクラシックな作品から『エクソシスト』、『IT/イット』のペニーワイズ、『時計じかけのオレンジ』のドルーグ、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のウォーボーイズ、『オースティン・パワーズ』、グレムリン、キングコング、アイアン・ジャイアント、ビートルジュースにロボコップと、映画シーンでアイコニックなキャラクターが登場。さらに、ハンナ・バーベラ・プロダクションのキャラクターも、『チキチキマシン猛レース』からディック・ダスタードリーとケンケンのタッグに、ペネロペ・ピットストップ。そして『原始家族フリントストーン』の面々にヨギ・ベア、ドラ猫大将、『スクービードゥー』と『宇宙家族ジョットソン』と作品ごとにキャラクターが集まって試合を楽しんでいた。HBOからも人気ドラマ『ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア』からトニー・ソプラノが、『ゲーム・オブ・スローンズ』からはドラゴンとホワイトウォーカーが登場。『ハリー・ポッター』のホグワーツ生徒や、『ロード・オブ・ザ・リング』のガンダルフとフロド・バキンズ、ゴラムの姿も注意深くみていると見つけられる。もちろん、DCコミックのメンツも忘れちゃいけない。ワンダーウーマンをはじめ、フラッシュ、アクアマン、ハーレイ・クイン、ベイン、リドラー、そして1990年版のジョーカーにダニー・デヴィート版のペンギン、そしてキャットウーマンが試合を観戦していた。はあ、長かった。他にもいるが、全てワーナー・ブラザースが権利を持つ作品やキャラクターである。

これはもはや“カメオ出演”の域を超えている。ひと昔前は、カメオ出演といえば『ズーランダー』にデヴィッド・ボウイが出たとか『ゾンビランド』にビル・マーレイが出たとか、そういった人気歌手や俳優が本人役で出てくる程度のサプライズだった。それがマーベル・シネマティック・ユニバースの『アベンジャーズ』以降、同じ系列の映画に作品の枠を超えてキャラクターが登場することが増え、それがファンにとってテンションの上がる嬉しいサプライズとなった。それ以前は、よくディズニー映画にこういったカメオ出演が見受けられたものだ。それも、『アラジン』に『リトル・マーメイド』のセバスチャンが出たり、『ターザン』に『美女と野獣』のミセス・ポッツが出たり、『アナと雪の女王』にラプンツェルが出たりなど、イースターエッグに近いささやかな登場っぷりである。

ところが、『アベンジャーズ』を境に作品を跨いでキャラクターが集結すると、ファンが唸り、興収も桁違いになるように。『X-MEN』が良い例で、過去3部作と新3部作のキャラクターが総出演するような演出になった『X-MEN:フューチャー&パスト』の世界興収がシリーズ内で群を抜いて高い(約7億4800万)。

そんな潮流の中で決定打とも言える、大きなインパクトを映画業界に与えたのが、2018年のスティーヴン・スピルバーグ監督作『レディ・プレイヤー1』。アンブリン・エンターテイメントやユニバーサルが絡んでいるキャラクターを中心に、それこそワーナーの目玉商品『シャイニング』、つまり別スタジオの作品を大々的にフィーチャーできたのは、巨匠スピルバーグだからこその所業である。この時もありとあらゆるカルチャーコンテンツが登場し、映画ファンを沸かせたことが記憶に新しい。あの興奮を味わってしまったが故に、ファンの求める“サプライズ”の水準は上がり、スタジオ側もそこにヒットの法則を見出して「もっとだ! もっとやれ!」と量を増やしたり、本当に出すのが厳しい作品を自社で囲って独占したりと、合戦場のような状況が生まれてしまったのではないだろうか。

『フリー・ガイ』と『スペース・プレイヤーズ』を観てふと思うのは、その過剰接種の先にある感覚の麻痺への懸念だ。まだギリ嬉しい驚きとして捉えられたものの、しばらくすると「えっ!? 嘘、このキャラなんでいるの!?」とならず、「ああ、いるわ」みたいな。むしろ「え? なんで(ゲスト)いないの?」と何か出てくるのが当たり前になってしまう未来。

そういえば『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』も、言ってしまえば作品をまたいでキャラがたくさん登場する、ファン垂涎の作品だ。しかし、本作の予告編には誰もが“本気で驚き”、信じられない様子でグリーンゴブリンのボムに歓喜していた。何か違う、ピュアな感動。ただMCUのキャラがたくさん出るから期待するのではなく、“あの”サム・ライミ版から始まった『スパイダーマン』の歴史にとって意味深い一作になるだろうという予感に我々は胸をときめかせたのではないだろうか。

ここに、ただ単にたくさんの映画キャラを出せばいいのではなく、“必要性のある文脈かつ、ファンが本当に求める形で”というカメオ出演の丁寧さの違いが垣間見える。懸念した“飽きの未来”を打破するスタジオ側の解決策は、もしかしたらこういった、より一層洗練されたサプライズの形なのかもしれない。(アナイス(ANAIS))

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