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【出張篇】料理家ワタナベマキさん宅へ出張!大人のフルーツポンチに合う日本酒「結ゆい 赤磐雄町 特別純米 亀口直汲み 無濾過生原酒」~『伊藤家の晩酌』第二十六夜3本目~

  • 2021.9.6
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弱冠24歳で唎酒師の資格を持つ、日本酒大好き娘・伊藤ひいなと、酒を愛する呑んべえにして数多くの雑誌、広告で活躍するカメラマンの父・伊藤徹也による、“伊藤家の晩酌”に潜入!酒好きながら日本酒経験はゼロに等しいというお父さんへ、日本酒愛にあふれる娘が選ぶおすすめ日本酒とは?今回から伊藤家を飛び出し、出張篇を全3回でお届け。「一番好きなお酒は日本酒!」という料理家のワタナベマキさんのお宅にお邪魔し、スパイスを使った料理を作っていただきました。スパイス×日本酒、その相性はいかに!?第二十六夜の最後を飾る3本目は、フルーツのエキスがたっぷりしみ出たシロップにベストマッチの茨城のお酒。

スパイスを使ったメニュー3品目は、梨とプラムを使った「フルーツのスパイスシロップ漬け」。

父・徹也(以下、テツヤ)「マキ先生は、料理の仕事を何年やってらっしゃるんですか?」
ワタナベマキ(以下、マキ)「20年弱くらい経つかな?」
テツヤ「たとえば、普通のお店だったら、メニューは門外不出なわけですよ。でも、マキ先生はおいしい料理をどんどん出さなきゃいけないっていうすごいお仕事ですよね。結構なペースで本を出されてるし、そのレシピったらすごい数じゃないですか。一体、どうやってインプットされてるんだろうって」
マキ「たぶん、ひいなさんもそうだと思うんだけど、これとこれ合わせたら、おいしいんじゃないかな?という想像から始まるというか」
娘・ひいな(以下、ひいな)「うんうん。わかります」
マキ「お酒に合わせる料理っておもしろいんですよ。子どもに作る料理とお酒に合わせる料理ってやっぱり違って、お酒に合わせるからちょっとポイントを効かせたりだとか、ここを引き立たせようかなとか、そういう風に考えるかな」
ひいな「なるほど。とても勉強になります!」
テツヤ「それでいくと、このスパイスシロップ漬けが日本酒とどう合うのか、一番想像がつかないな」

ひいな「これはデザートになるんですか?」
マキ「デザートとというよりは、ちょっと、中休み的な?」
テツヤ「一度、中休みしてこの後、また飲むぞ!的な」
マキ「そうそう(笑)。普通のシロップ漬けなんですけど、このシロップと日本酒を割りたい!と思って」
ひいな&テツヤ「わぁ〜!」
テツヤ「まさかのシロップ割ときたか。もうマキ先生、根っからの酒飲みですね(笑)。最高です!」

お酒好きのマキ先生だからこそ生まれた、日本酒のシロップ割!?

ひいな「それでしたら、このお酒、最高に合うと思います」
テツヤ「え?そうなの?事前に打ち合わせしてない?」
マキ「裏でね、実はね…(笑)」
ひいな「ね(笑)。八角が入ってるから、どんなシロップなのか気になります」

八角、黒コショウ、クローブ、シナモンの入ったシロップに梨を漬けて冷蔵庫で冷やす。
プラムを食べやすい大きさにカットして、シロップに加えて混ぜれば完成。
スパイスの香りと梨のエキスがたっぷりと溶け出したシロップがむしろ主役。

マキ「八角の他には黒コショウ、クローブ、シナモンが入っています。キンキンに冷やしてもおいしいですよ。じゃ、まずはシロップからどうぞ」
テツヤ「わ!このシロップ、スパイスの風味がしっかり出ていて、めちゃくちゃいいですね」
ひいな「プラム大好きなんです」
マキ「プラムの酸味を加えました」
ひいな「スパイスのいい香り〜」
テツヤ「これ、ほんとにおいしい」

マキ「よかった〜」
ひいな「おいしいです!」
テツヤ「これ、夏の疲れた時とかに最高ですね。梨のエキスがたっぷり出てて、控えめな甘さがまたね。体に染みわたるおいしさ」
マキ「そうそう。フルーツを食べるというより、シロップを楽しんでほしい」
テツヤ「これ、高校球児に食わせたいなぁ」
一同「(笑)」

シロップのおいしさにノックアウトされる父・テツヤ。
ひんやり冷たいシロップの甘さが夏にぴったり。

テツヤ「これ飲んだら、絶対、復活するでしょ?疲れ吹き飛ぶでしょ?」
ひいな「確かに、体に沁みわたるおいしさだよね」
マキ「これはね、私としても挑戦だったんです。ひいなさんがどんな日本酒を合わせてくれるだろうって」
ひいな「実は、フルーツシロップ?ってなりました(笑)」
テツヤ「どこまで聞いてたの?」
ひいな「果物を使ったスパイスシロップ漬け的なものとは聞いてました」
マキ「アバウトですね(笑)」
テツヤ「その情報だけで、ひいなはどんな日本酒を選んだんだろう?そろそろお酒飲みたくない?」
マキ「ぜひ!」
ひいな「はい!お酒持ってくるね!」

「フルーツのスパイスシロップ漬け」に合わせるのは、「結ゆい 赤磐雄町 特別純米 亀口直汲み 無濾過生原酒」。

茨城県結城市にある結城酒造。蔵に嫁入りしたという女将・浦里美智子さんが杜氏として手がけたのが「結ゆい(むすびゆい)」。ごく少量生産ながらその味わいにファンがつき、人気の銘柄に。岡山県産雄町を使ったフレッシュな1本「結ゆい 赤磐雄町 特別純米 亀口直汲み 無濾過生原酒」720ml 1760円(ひいな購入時価格)/結城酒造株式会社

ひいな「“むすびゆい”と読みます。ボトルの後ろにラベルの由来が書いてあって。『結城紬の糸の輪の中に“吉”が入るという文字デザインです。おいしいお酒で、人と人、人と酒、人と街を結び、未来へつなげたいという願いが込められています』とのこと」
マキ「わぁ。いいですね」
テツヤ「いまの時代にぴったりだね」
マキ「本当ですね」
ひいな「こちらのお酒をシロップに合わせたいと思います!」
マキ「どんな味になるんだろう?」
テツヤ「ね。どんな味かまったく想像できないんだよなぁ。俺は正直に言うからね。嘘つかないからね」
ひいな「もちろん!正直な感想聞かせてね」

一同「いただきます!」
マキ「わ。香りがいい!」
テツヤ「お?」
マキ「うんうん。これは合う!」
テツヤ「ヤバい。もうこれ絶対合うでしょ」
ひいな「でしょ?シロップに合わせてまったりした味わいの日本酒を選びました」
マキ「わ、わ、わ。おいしい!」
テツヤ「シロップと日本酒とスパイスの香りがもうね、すんばらしい!」
ひいな「日本酒とシロップ、2つのものが1つになってこんなにおいしいんだって感動してます」
マキ「日本酒とすごく合うね。本当においしい」
テツヤ「これ、腰抜かすレベルのおいしさだよ。マジでうまいよ」
マキ「すごい相乗効果というか。ぴったり」
ひいな「そう。どっちもさらにおいしくなってます」
マキ「でも、このお酒だからだと思うな。2本目に飲んだ日本酒だと合わないと思うし」
テツヤ「この日本酒だからこんなにも合うんだね」
マキ「これは、ぜひともこの組み合わせで飲んでみてほしい」

ひいな「とろりとした感じがシロップと合いそうだなと思って選んだんだけど、こんなにも合うとは私も驚きました」

神がかったベストマッチに拍手で称えあいます。

マキ「すごいよ!この組み合わせは!」
テツヤ「このお酒さ、後味にちゃんと苦みがあるじゃない?それがちょうどシロップと果物の甘みに合うっていうか。ただ甘いだけじゃない苦味が加わることで味が深まるというか」
マキ「そうそう。絶妙なおいしさ!」
テツヤ「しかも、この日本酒とシロップを合わせることで、すーっと入っていくんだよね。こんな抜群の組み合わせ、なかなかないよ」
ひいな「これはね、茨城のお酒なんだけどね。実はこのお酒を作った杜氏さんは、お酒造りとは無縁だった蔵に嫁いできたお嫁さんなの。日本酒の生産量400石のうちの50石だけ、美智子さんが酒造りを勉強して『結ゆい』を造ったんだって(ライター注:1石は180リットル。一升瓶なら100本分、四合瓶なら250本になる)
マキ「わぁ。その50石が、このお酒になったんだ!」
ひいな「もともと蔵出身でもなく、日本酒を勉強したわけでもない美智子さんが造ったおいしいお酒です。シロップ割してみたいです!」
テツヤ「いいねぇ。単体で交互に飲んでも抜群に合うってわかるんだから、合わさっちゃったら絶対にうまいでしょう?」
マキ「もうね、絶対おいしいよね」
ひいな「うん、絶対合うと思います。フルーツポンチ的な」
マキ「そうそう!」
ひいな「大人のフルーツポンチ!」
マキ「シロップ割、やってみましょう」
テツヤ「このシロップ、ちょっと塩味入ってますか?」
マキ「ちょっとお塩が入ってるんです。さすが!」
テツヤ「なんとか少し塩気を感じた。それが重要なんですね?」
マキ「そうなの。ちょっとだけね」

テツヤ「シロップ割いただきます!わ、こりゃめちゃくちゃ合うわ」
マキ「すごく合う!すばらしい!」
テツヤ「こりゃすばらしい。ふたりがすばらしい!おもしろいね。この化学反応」
マキ「このシロップ割、美智子さんにも飲んでほしいね」
テツヤ「ほんとですね。最高の日本酒ポンチだよ。日本酒とシロップがこんなに合うなんて意外な発見でした。知らなかった」
ひいな「ちなみにこのお酒、お米にもこだわってて。ラベルにもある通り、岡山県赤磐産の赤磐雄町(あかいわおまち)を使ってて。雄町の中でも最高品種っていわれてるんだけど、堀内由希子さんという女性の方がつくってらっしゃるの。お米づくりからお酒造りまで女性がタッグを組んでる。『亀口直汲み』っていうのは搾ってすぐ瓶詰めしてる」
テツヤ「つまり、フレッシュっていうことだな」
ひいな「そう。だから生酒で飲んでほしい」

料理家さんとのコラボによって、今までにない新しい日本酒の可能性が広がった。

テツヤ「このお酒はさ、もともと、どんなお料理と合わせるのがオススメなの?」
マキ「確かに。なかなかシロップには合わせないですもんね」
ひいな「う〜ん、何だろうね」
テツヤ「マキ先生なら、このお酒には何が合いそうな気がしました?」
ひいな「うん、聞きたい!」
マキ「え、何だろう」
テツヤ「結構、苦味、強いですよね」

マキ「うんうん」
テツヤ「その苦味がシロップと抜群に合うんだよね」
ひいな「普通に飲むとしたら、お酒を開けて2週間くらい置いちゃうかもしれないですね」
テツヤ「置いとくとどうなるの?」
ひいな「口当たりがやわらかくなる」
マキ「もっとやわらかくなるんだ」
ひいな「そうなんです。あと、苦味が少し飛ぶ」
マキ「なるほど、よりまろやかになるんだ。うーん。料理と合わせるなら……何なんだろう?シロップとの相性が良すぎて思いつかないな」
テツヤ「酢豚とかどう?」
ひいな「あぁ、酸味か。だったらトマトソースとかどうかな?」
マキ「うんうん。フレッシュな感じとか、甘みに合うかもしれないね」
ひいな「ですよね」
テツヤ「今回さ、打ち合わせせずにここまでぴったりだとは思わなかったね」
ひいな「自分でもびっくりでした」
マキ「すごくおもしろかったねぇ」
テツヤ「めちゃくちゃおもしろかったです」
ひいな「味を想像するのがすごく楽しかったです。日本酒好きなマキ先生だから、日本酒に合わせてお料理を考えてくださったっていうのもよかった」
マキ「私も。どんなお酒がくるんだろうっていうのを楽しみながら考えました。たとえば、花椒は効きすぎないようにっていうのを意識したり」
テツヤ「あぁ、なるほど。日本酒じゃなかったらもう少し花椒効かせてみようってなるわけですね」
マキ「そうそう。そうなると他のお酒になっちゃうと思う。テキーラとか」
テツヤ「さすが、酒好きな方の発想ですね(笑)」

マキ「(笑)。日本酒のこのふくよかさとか甘みとかと合わせるなら、ほんのり効かせる感じがちょうどいいかなって」
テツヤ「あぁ。その加減がすばらしかったです。ほんとにおいしかった」
マキ「こちらこそ!すごく楽しかった!」
ひいな「すごくうれしい!」
テツヤ「マキ先生の心からの『楽しかった』をいただきました!普通の料理本の撮影だと、マキ先生の作りたいものを撮るっていう仕事だから、コラボではないじゃないですか」
マキ「そうそう」
テツヤ「だから、今回はすごく予想外な展開というか、コラボっておもしろいなって思った」
マキ「ね。私もおもしろかった」
テツヤ「今までコラボするような機会ってありましたか?」
マキ「ないですね。ひいなちゃんが初めてかな」
ひいな「わぁ、光栄すぎます!」
マキ「自分で選ぶお酒と人に選んでもらうお酒ってぜんぜん違うから、それがおもしろいし、そこからすごく広がるというか」
ひいな「私もすごく勉強になりました」
マキ「こちらこそ、私も勉強になりました。いいですね、このコラボ企画」

テツヤ「いいケミだったね」
一同「すばらしい!」
マキ「お声がけいただき、どうもありがとうございました」
ひいな「こちらこそ、ありがとうございました。本当においしかったです」
テツヤ「新しい日本酒の可能性を見たね」
ひいな「ね。神回だったね」
テツヤ「そうだね。101回やってきて、神回きたね」
ひいな「本当に楽しい。楽しくて仕方がない」
テツヤ「いつかはぜひ、伊藤家にも来ていただいて」
マキ「わ、ぜひぜひ。行きたい、行きたい!」
テツヤ「3本とも大成功でした。ありがとうございました!」
マキ「3本とも全部味わいが違って。すごいです、ひいなちゃんのセンス!」
テツヤ「ひいな、おつかれさま!びっくりしたよ」
ひいな「読者の人にもぜひ飲んで、食べてほしい!」
テツヤ「日本酒飲んでもらうイベント、いつか実現させたいねぇ」
マキ「それ楽しい、楽しい!」
ひいな「蔵元さんもきっと喜んでくれると思うな」
テツヤ「ほんとうにすばらしい1日だったね」
ひいな「出張篇、大成功!」

ワタナベマキ
保存食や乾物を使った料理に定評があり、ライフスタイルを紹介した著書も多数。近著に『ワタナベマキの梅料理』(NHK出版)、『ワタナベマキのスパイス使い』(グラフィック社)が好評発売中。

【ひいなのつぶやき】
ワタナベマキさんのお力添えで、1人では生み出せないであろうペアリングが完成しました。味とまっすぐ向き合うって素敵なことだと感じました!
ひいなインスタグラムでも日本酒情報を発信中

photo:Tetsuya Ito illustration:Miki Ito edit&text:Kayo Yabushita

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