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日本語の美しさを改めて感じる、感性光る翻訳詩集。

  • 2021.8.27
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美意識を育んでくれる一方、選ぶ段階からセンスが問われる映画・本・音楽。多方面で活躍する憧れの彼女たちが独自の観点で選んだ、主人公の生き方や洗練の描写など、至極の美を体現する作品を紹介。

作家の綿矢りささんが選んだ1冊は『海潮音―上田敏訳詩集』。この詩集に綿矢さんが見いだす美しさとは?

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西洋文学を極めた先に、洗練された日本語の輝きを見いだして。

『海潮音―上田敏訳詩集』

上田 敏訳新潮社刊¥440

「上田敏の翻訳は、ページを開いてすぐ、目が文字の羅列を認識した時点で、洗練された美しさを伝えてきます。弾むリズム、選び抜かれた語句、見慣れない漢字の語句……。なんでもカタカナで呼びがちな現代では忘れている、漢字の響きと字面の端整さを知らせてくれる。たとえば本文中の“血潮雲”という言葉ですが、現代の人間でもどんな雲か頭に浮かび、その広がり方はとめどなく。ヨーロッパのさまざまな詩人の詩を集め、翻訳者の感性がすみずみまで行きわたった人であるにもかかわらず、彼自身の文体の個性がより濃く出ていると感じます。研ぎ澄まされた文章は洞窟の中の鉱石のように、永い年月を経ても、なお暗闇の中で輝き続けていますね」

綿矢りさ(作家RISA WATAYA昨年の『私をくいとめて』(朝日新聞出版刊)に続き、『ひらいて』(新潮社刊)の映画化が決定、今秋公開予定。

※『フィガロジャポン』2021年7月号より抜粋

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