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会社を辞めて、こうなった。【第18話】 ついにヒッピーになる?!

  • 2015.7.8
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会社を辞めて、こうなった。【第18話】 ついにヒッピーになる?!

長年勤めた出版社を辞めて、なんの保証もないまま単身アメリカに乗り込んだ女性が悩みながら一歩一歩前進して、異国の地で繰り広げる新鮮な毎日を赤裸々にレポートします。

【第18話】ついにヒッピーになる?!

お金が無い!

ツアーのみんなとバークレーの個人宅にあるガーデンファームへ。真ん中のもじゃもじゃ頭の男性がソーヤ海くん。隣の黒いパーカーの女性が鈴木栄里ちゃん。

無職にもかかわらず、想像以上にお金が出て行くサンフランシスコ生活。そこでお金に対する恐怖心を手放したいと共生革命家のソーヤ海くんとベイエリアで活躍する鈴木栄里ちゃんが主催する10日間の研修旅行、“ギフトエコロジーツアー”に飛び込んだ私です。ただでさえ人生最大の節約生活を送っているのに、ツアーの1か月前には真っ昼間の大通りで買ったばかりのiPhone6と財布を強奪され、10日前にはルームメイトに貸したお金が返ってこないという事態が…。サンフランシスコに来るまで毛穴も鼻の穴も全開に開かせて東京生活を満喫していた私としては、「なんじゃこのアメリカという、ギフトどころか強奪の国は!」と警戒心と猜疑心でいっぱいだったのです。

では”ギフトエコロジー”って一体何? ということなんですが、ひらたく言えばお金を介さない、支え合いや与え合いの中で生きる世界のこと。その根本にある考えは、もともと地球には酸素や水、食物や住む場所など人間が生きるために必要なものはすべて無料で揃っていた。けれど、いつの日か「これは私のもの!」と所有権を主張し始め、貨幣が出来て、お金や物を「持っている人」と「持っていない人」という区別性が生まれた結果、「あのブランド新作バッグを持っていないと幸せになれない」「このレストランに行けない私は惨めだ」などと、私たちが不足感を感じるようになったというのです。

ギフトエコロジーとは?

実際私も克服したいと思いながらも、いつも何かが足りないという想いを抱えながら生きています。「お金が無い」「仕事が無い」「英語が話せない」「若くない」「頭がよくない」「恋人がいない」と(改めて書いたら、へこむわ!)。ところがギフトエコロジーの世界では“無い”という不足の意識で生きるのではなく、“必要なものはすべてある”と助け合いや支え合いといった意識にフォーカスをし、自分にはすでに十分なものが与えられていて、他の人に与えられるものも実はたくさんある。その意識を呼び戻して、見返りを求めないギフトを体験しようという趣旨のツアーだったのです。

疑問がいっぱい!!

「自分が何者でもないとわかったら、ラクになるよ」。カリフォルニア大学 サンタクルーズ校に書かれた“ブライアン・ジョーンズタウン・マサカー”のシンガーソングライター、アントン・ニューコムの言葉。ここは、オーガナイザーのソーヤ海くんの母校でもある。

ツアーで訪ねるのはカリフォルニア大学サンタ・クルーズ校のパーマカルチャー農場やイーストべイ(バークレーやオークランドなど)にあるコミュニティ。「えっ、ついにヒッピーになるの?!」。このツアーに参加すると友人に話して言われた第一声です。私自身もギフトで成立する生活なんて素晴らしい考え方ではあるけど、机上の空論じゃないかと思っていました。そんなライフスタイルを送れるのってヒッピーみたいな世捨て人か、アーミッシュみたいにすべてのエンタメを断って質実剛健に生きているか、もしくはチャリティ活動に精を出すような超お金持ちだろうなと。どれも私と全然タイプが違う人! さらにはファームを訪ねるといっても農業体験だってしたことのない軟弱モノ&農業知識ゼロの私です。そこで「彼らって幸せなわけ?」「で、そこに居て私は心地いいわけ??」「実際、私にもできるの???」と疑問がいっぱい。もう、考えたところで仕方が無い。わからないんだから! ということで実際にギフトエコロジーの中で生きている人たちが幸せなのかを自分の目で確かめてみることにしたのです。

で、ツアーの申し込みです。なんとこのツアー、ツアー自体もオーガナイザーからのギフトですという趣旨で、代金が応募告知に載っていない! その代わり応募要項に「あなたがなぜこのツアーに参加したいのか、あなたのできるギフトは何か」を書いてくださいとあります。広告部→Hanako編集部→アンアン編集部と貨幣経済どっぷりだった私にとってはキツイ話! そこでオーガナイザーの2人には正直にギフトエコロジーに対する知識がゼロなこと。というよりむしろ真逆な生活を送ってきたこと、仕事もお金も無いこと、けれどもまがりなりにも編集者として長年勤めてきたのでこのツアーで体験したことを正直に書いて伝えることがギフトになるかもしれない、でも頼まれた内容ではなくあくまでも私が素直に感じ、皆さんに伝えたいことを書きたい(なんとふわふわした志望動機…)と伝えたのでした。

そこから私のモヤモヤが始まったのです。

「とはいえ、ゼロ円っていうワケにはいかないだろう。レンタカーやガソリン、食事や宿代など、慣行経済の中で生きている限り必要経費はかかるのだから。でもこのギリギリ生活の私が支払える額なんてたかがしれている…。折半と言われたらどうしよう…。払えないかもしれない。ヤバイヤバイ。だから、やっぱり参加しないほうがいいかな。サンフランシスコ周辺に滞在するときは家から通ったほうがオーガナイザーの2人の負担にならずに良いかもしれない。でも折半になったところで支払っても明日死ぬわけではない。払おうと思ったら払えるはずだ。でも心理学の勉強ができなくなるなぁ。で、なんで心理学勉強したいんだっけ? 利他的な意識で生きると幸せになれると研究したいんだったよね。えっ、でも今の私はギフトを与えるどころかギフトをもらおうという意識しか働かない自己中心的でドケチな女…。えぇ、私はドケチですよ。しかし、ただ単に自分のエゴを満たすためだけに勉強したいんじゃない! いずれ皆さんに学んだことをシェアするために勉強しているんだ。ここまでそう信じて来たけど、実際は自己満足になっているだけなのかも。何の貢献もできてないしなぁ。あぁ、虚しい…。ドケチ精神で生きているから、いろんなものを奪われてしまうのだなぁ。トホホ、自己嫌悪(初めに戻って、エンドレス…)」

ドケチ→自己嫌悪。負のループにはまる。

というようにダークな内面と向き合う結果、遠足前のようなワクワク感は全く無し。ちっぽけなプライドも邪魔をして自らツアーを申し込んだくせに、ツアー当日まで「参加したい」と「参加したくない」という気持ちの間で揺れ動きました。ちなみに私がオーガナイザーの1人、海くんと初めて出会ったのは4年ほど前。当時はマガジンハウスの社員でお金も仕事もありました。でも今の私は「もはやマガジンハウスというバックグラウンドもお金も無く、英語力も中途半端。そんな私ができるギフトって一体何なんだろう?」。この問いとずっと向き合わなければならなかったのです。これが一番キツくて、ツアーから逃げ出したかった理由。モヤモヤ悩みながらも刻一刻と時は無情に過ぎ、ツアー当日が来てしまいました。そこで、とにかくある現金をかき集めて米やパン、野菜などの食物、洗剤などの日用品と寝袋をかかえて待ち合わせ場所の空港に向かったのです。

カルマキッチンからスタート。

バークレーにあるカルマキッチン。ニップン・メッタさんという人が2007年3月にスタート。提供されるのはベジタリアンのインド料理。

ツアー参加者はオーガナイザーの2人を含めて14人。大学の先生からヨガ教師、アーティスト、ゲリラ的に公園に果樹を植えている女性、ライター、学生とユニークな面々が揃いさまざまです。初日は、サンフランシスコから少し行ったバークレーという街にある“カルマキッチン”というレストランからスタートしました。いずれ詳しくお伝えしますが、このレストランのメニューには代金が載っていません。“ペイフォワード”といって前の人が自分の食事代を既に支払ってくれているという運営システムなのです。まさに「優しさのギフト」をつなぐギフトエコロジーなレストラン。食事の支払いをするかどうかも自分で選択し、支払った場合はそれが次にレストランに来た人の食事代となります。去り際にレストランで働くボランティアの人に小さなカードを手渡されました。そこには「Big things have small beginnings(大きなことは小さな始まりから)」と一文が。そこから、この言葉が私のツアー、そしてこれからの人生のテーマとなり、私のギフトエコロジーツアーが始まったのです。

See You!

訪ねたガーデンやファームには食べられる木の実がいっぱい。カリフォルニアの土地の豊かさを実感。(写真・藤井麗美) 【関連記事】

「土居彩の

PROFILE 土居彩

会社を辞めて、サンフランシスコに住んだら、こうなった。」まとめ

編集者、ライター。14年間勤務したマガジンハウスを退職し、’14年12月よりサンフランシスコに移住。趣味は、ヨガとジョギング。ラム酒をこよなく愛する。目標は幸福心理学を学んで、英語と日本語の両方で原稿が書けるようになること。

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