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「お金の相談業は可能性に満ちている」オンライン専門FPカン・チュンド氏が示すFPの本質とは

  • 2021.8.5
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2020年、拠点を東京から徳島に移し、現在はオンライン専門のアドバイザーとして活動を行するカン氏。コロナ禍で世界が一変する中、多くの業種が新形態を模索しています。そんな中、「FP×リモート(オンライン)」をすでに1年以上行っているカン氏にどのような変化を感じているかをうかがいました。

さらに、なかなかお金の相談業だけで生計を立てるのは厳しいとも言われるFP業界で「純然たるお金の相談」を掲げ、21年もの実績があるからこそ感じる「FPとはどのようにあるべきか」の理想像について深堀り。FPの本質的価値はカウンセラーであり、そのためにも相手の話を一から十まで受け止められる、乾いたスポンジのような存在であることが重要だと言います。そこには私たちはFPとどのように向き合えば良いのかのヒントも垣間見えます。

お話を伺ったのは…

投資信託クリニック 代表 インデックス投資アドバイザー 1級ファイナンシャル・プランニング技能士

カン・チュンド 不動産会社に6年間勤務後、2000年に晋陽FP事務所(当時)を設立。2013年に屋号を晋陽(しんよう)FPオフィスに変更。2019年、屋号を投資信託クリニックに変更。開業以来一貫してシンプルで継続しやすい資産運用の必要性を説く。2009年1月に始まった投資家有志のイベント「インデックス投資ナイト」には毎年登壇。また「投信ブロガーが選ぶ!Fund of the Year」の運営委員を務める。今でも毎日1本は、投資信託の運用レポートに目を通す。

ライフプランに寄り添わず不動産を売る自分に疑問を感じた

――FPを志したきっかけについて教えてください。

FP資格を取得する以前は、不動産販売に携わっていました。

マイホームの購入は人生の重大イベントの一つです。だからこそ、住宅ローンはお客様の収入やライフプランを踏まえ、その人に合った商品を紹介するべきではないでしょうか。にもかかわらず、当時の私はお客様の家計や資産状況について知ろうとせず、どちらかといえば仲介手数料収入のことばかり考えていました。

今振り返ってみても、「本当にあの人に住宅ローンを組ませて良かったのか」と後悔することもあります。

そんな自分や仕事の在り方について疑問を持ち、人生のお金の問題について知ろうとしたのがFPを志すきっかけでした。お金についての基本的な考え方を伝えることが、顧客目線を欠いて不動産を販売していた自分の責任であり、使命だとも感じていたんです。

そして、CFP®の取得後、FPとして独立してから資産運用やポートフォリオ作成など、金融資産運用設計の相談をメインに活動しようと決めました。

自分の表情を演出できるのがオンラインの強み

――2020年6月頃に徳島へ住まいを移し、以降オンラインでの相談を専門とされています。オンラインならではのメリットはありましたか?

自分の顔を見ながら相談者の話を聞けるというメリットは大きいです。

FPは知識を授ける人というよりも、本質的にはカウンセラーであると私は考えています。

YouTubeなどで簡単に情報を得られる今、「実際に聞いてもらって楽になった」「この人は私の話をしっかり聞いてくれている」という満足感や安心感が得られないと、FPの存在意義はなくなってしまいます。

だからこそ、自分の表情を作れるというのは非常に効果的なんです。もちろん、普段から意識してリアクションを取っているFPもいると思いますが、実際に目で確認しながらの方がやはり作りやすいですね。

――そのほかにもメリットはありましたか?

相談内容をレコーディングできるのもいいところだなと感じました。

実際に向かい合って話を聞いていると、場の雰囲気に飲まれて冷静な判断ができない相談者の方も今までいたと思うんです。そういう方にとって、後から見直せるのは大きなメリットだと思います。

また、レコーディングをお渡ししますと事前にお伝えすることで、聞き逃しやメモのし忘れがあっても大丈夫なんだと、相談者がリラックスできるんですね。FPとしては何気ない本心を聞き出したいので、そのためにも緊張をほぐしてもらうことは大切です。

――オンライン専門にすることで、顧客が減ってしまうかもという懸念はありませんでしたか?

それはなかったですね。というのも、ネットショッピングの普及もあり、商品やサービスの購入時に「そのお店がどこにあるのか」を重視する感覚が、ユーザーの中でなくなってきているように感じていたからです。

サービスの質に違いがなく家にいながら注文できるなら、そのお店が都内にあっても地方にあっても、気になりませんよね。同じようにオンライン相談をお願いするFPを選ぶ時、どこに事務所を構えているかを気にする人は少ないだろうという予感がありました。

それどころか、オンラインのみで活動しているFPの方が、地方に住んでいる人にとっては相談のハードルが低いとさえ思います。

例えば地方の人の立場からすると、東京での対面相談とオンライン相談の両方を行っているFPに対しては「実際に東京の事務所に足を運べる人の邪魔をするのは申し訳ない」と遠慮してしまうんです。しかし、オンライン上なら全員条件は一緒だから、そのバイアスが解消される。

実際、若干ではありますが、オンライン専門に変えてから地方のお客様は増加傾向にあります。

FPは「乾いたスポンジ」であれ

――カンさんの考える理想のFP像について教えてください。

FPにとって一番大切な要素は、人の話を聞き出す力ではないでしょうか。

FPは知識を網羅的に持っており、一つの質問に対し正確な答えを出せる存在だと、相談に来る方も、あるいはFP自身も思っているかもしれません。

もちろん適切なアドバイスのためには知識も必要です。しかし、FPの本質的な価値はカウンセリング部分にあるはずです。どれだけ話を聞き出すことができ、お客様に話して良かったと思ってもらえるか。相談者に寄り添える共感力がなによりも必要なのではないでしょうか。

だからこそ、私は後進に対して「乾いたスポンジであれ」と伝えています。知識は後から身につければ良い。相談者の言いたいことを察知して、話しやすい雰囲気を作り、すべて吸収して汲み取る。それを喜びと感じられるような姿こそが私の理想です。

――理想の相談者であるために、FPに必要なことは何だと思いますか。

やはり、数多くの実務経験を積むことです。

FPは博識な専門家であるべきという一種の“呪縛”から解かれ、親身なカウンセラーとして成長していくためには、たくさんの相談をこなす必要があると思います。

本来であれば経験の浅いFPが頼れる場所として、日本FP協会などが訓練の場を設けてあげることが理想です。しかし、大きな組織ではきめ細やかなフォローが難しくなる面もあるでしょう。

協会では継続教育という形で研修を行っていますが、やはり実際の相談業務に勝る経験はないと考えます。ロールプレイングだけでなく、お客様と向き合うお悩み相談のような、より実践的なキャリアを積める場がこれからもっと増えていけばいいなと思います。

――日本人は相談までなら無料という認識が一般化していると思います。その風潮は今後変わっていくのでしょうか?

相談にいらっしゃる人の中には「無料相談に行ったら商品をおすすめされそうになった」というお客様も多くいます。無料相談は商品販売など、他のところで利益を得ている。その認識が一般化すれば、対価を支払うことで本当に信頼できる人に相談しようという意識が芽生えてくるのではないでしょうか。

FPの中にはお役様の役に立ちたいからと、あえて相談料を無料にしている人もいます。ですが、それは必ずしもお客様のためになるとは思えません。人間の心理として、お金を払ったからには元を取ろうという気持ちが働くからです。

仮に相談料が1万円だとしたら、お客様は1万円以上の効果を得ようと、積極的にアドバイスを実践するはず。これが無料だと、そこまでモチベーションは上がらないと思います。

正しい知識が広まれば、社会の質も上がっていく

——FP業界の今後の展望について教えてください。

お金の相談業は可能性に満ちた業界だと思っています。

私は現在、インデックス投資をお客様におすすめしています。この手法に出合った頃は投資ブロガーが情報発信の中心でした。彼らから徐々にインデックス投資が広まり、ニーズが増えていくことによって、金融機関側も長期分散積立を推奨し始めました。

消費者のリテラシーが上がったことで、金融機関がより高度なサービス、寄り添ったサービスを提供するようになったんです。賢くなった消費者が、社会の形を変えたんですね。

金融や投資の分野には、社会の質を高めるブレイクスルーの余地がまだあると思っています。投資が当たり前になれば、その分お悩みを抱える方も増えるはず。そういう社会になったとき、お金の相談業というのは一気に広まるのではないでしょうか。

あとは実績の問題です。相談者からすると、経歴が浅いFPは本当に10年後20年後にも相談できるのか、途中でFP業を辞めてしまわないか、不安になってしまうはず。今はまだ、FP業界は過渡期と言えます。現在活動されている方が経験を積んで、実績のあるFPが増えれば、より相談者にとっても選びやすい業界になっていくと思います。

——今後もオンラインのニーズは増していくと思いますか?

オンライン上でのやりとりが今後減るとは思いません。長期的に見ればオンライン相談の比重はむしろ上がっていくのではないでしょうか。

ただ、オンラインでもリアルの場でも、お客様に寄り添える共感力が大切という点は変わらないと思います。人の話を聞く力さえあれば、どこでも活躍できるはずです。

インタビューを終えて…

コロナ禍であらゆる業種の業態や東京への一極集中が変わるかもしれない、と言われています。ことFPにおいては、カン氏のようなオンラインのスタイルがスタンダードになることは、生活者から見れば「選択肢の広がり」。FPからすればどの場所からもビジネスができる「チャンス」でありつつ、より「競争」にさらされるという変化をもたらすかもしれません。

私たちがFPを探す際「どんなFPに話を聞いてもらいたいか」を自問しながら“全国”から選ぶ――それが当たり前になった時、真の意味で「お金の相談業が根付いた」と言えるのかもしれません。

取材・文/笠木渉太(ペロンパワークス)

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