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ハリウッドでも「親の七光り」論争が過熱!2世セレブ=ネポベイビーたちが世論に強く反発

  • 2021.7.31
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日本でも芸能人の息子や娘の起用に対して起こる「親の七光りだ」論争。ハリウッドでは「ネポベイビー」という造語まで誕生して、ここ数年で激しい論争になっている。その論争に、トム・ハンクスからケイト・ハドソンやヘイリー・ビーバーまで2世セレブたちとその親が反論!

英語では「ネポティズム(nepotism)」と呼ばれる

画像: マヤ・ホーク、ジェニファー・アニストン、ゾーイ・クラヴィッツはそれぞれ業界の有名人の2世。
マヤ・ホーク、ジェニファー・アニストン、ゾーイ・クラヴィッツはそれぞれ業界の有名人の2世。

日本社会で言う「親の七光り」に最も近い英語はとして使われるのが「ネポティズム(Nepotism)」。ネポティズムとは、和訳すると「縁故主義」を意味し、自分の家族や親戚といった血縁者や同じ地域の出身者、昔からの知人などを“えこひいき”し、優先して恩恵を与えることを言う。

ネポティズムの語源は、ローマ教皇が愛人に産ませた子どもを甥(Nephew/ネフュー)と称して特権を与えたことに由来すると言われていて、「身内や仲間に対して甘い顔をする」という意味にくわえて「それ以外の人々に対して厳しい顔をする」という排他的な側面も持つ。

ハリウッドは表も裏も「ネポベイビー=2世」がたくさん

さまざまな分野や業界において多様性が叫ばれている現代のアメリカで、ネポティズムがとくに顕著だと言われるのが、ハリウッドを中心とするショービズ界。お気づきの通り、ショービズ界には“2世セレブ”と呼ばれる人たちがわんさか。役者やシンガーとしてカメラの前に立つ人だけでなく、映画やドラマ、CMなどの制作を手がける“裏方”も親が映画界の重鎮や、有名な俳優やアーティストといった、生まれながらに恵まれた肩書きを持つ人が多い。

2022年12月にはNew York Magazineが「母親と同じ目をしているね。そしてエージェントも同じ。ハリウッドのネポベイビー・ブームを過剰分析」という特集を掲載。ネポベイビーとは、ネポティズムの恩恵を受けている2世のことを指す造語。ハリウッドには、雑誌で特集が組めるほど多くのネポベイビーたちがいるのだ。

画像: New York Magazine ネポベイビー特集
New York Magazine ネポベイビー特集

この特集は欧米で大きな注目を浴び、直後にツイッターやTikTokではネポベイビーの話題が急上昇。“特権階級は自身の特権を認識するべきだ”という考えが強い現代においては、ネポベイビーも特権問題のひとつとして中温煦を集めており、記事執筆時点で、欧米で最もホットな議論のひとつとなっている。

ネポティズムの何が問題? 非2世と2世が白熱討論

もちろんハリウッドにおけるネポティズムの議論では、“2世セレブだから才能がない”と言っているわけではない、才能がある2世はたくさんいるのだ。それと同時に才能のある非2世もたくさんいる。同じでありながら、前者はいきなり敏腕エージェントと契約できて、親や親の友人の作品で下積みができるという大きな格差がある。さらに、なかには才能よりもコネのおかげで業界にいられる人も一定数いるだろう。こちらに関しては、本当に才能のある人のチャンスを奪うという意味でより大きな問題をはらむ。

そんな“親の七光り問題”について、映画界の重鎮であるフランクリン・レナード氏と2世セレブであるベン・スティラーが2021年にツイッターで激論した。

画像: フランクリン・レナードとベン・スティラー
フランクリン・レナードとベン・スティラー

レナード氏は、ユニバーサル・ピクチャーズなどでの経験を経て、映画化されていない脚本を対象とした評価および映画製作マッチングのプロジェクトであるThe Black List(ブラックリスト)を立ち上げた映画界の重役。一方、映画『ズーランダー』や『ナイト ミュージアム』といった代表作を持つ俳優のベンは、映画監督や脚本家、コメディアンとしても活躍してきたジェリー・スティラーとアン・メイラの息子。ベンの姉エイミーも俳優として活動している。

レナード氏は、巨匠スティーヴン・スピルバーグ監督の娘であるデストリー・スピルバーグが監督を務め、『シャイニング』や『It-イット-』などの名作を生み出したホラー作家スティーヴン・キングの息子オーウェン・キングが脚本を担当し、映画『ミスティック・リバー』と『ミルク』でアカデミー賞主演男優賞を受賞したショーン・ペンの息子ホッパー・ペンが主演する短編映画『The Rightway(原題)』の制作が発表されたことを受けてコメント。

“親の七光り”だとは言わなかったものの、映画界の重鎮たちを親に持つ若手たちがこぞって起用されたことに懐疑的だったレナード氏は、同作の公開を伝えるニュースに、「ハリウッドは実力主義なんだよね? 」と皮肉めいたひとことを添えてツイートした。

すると、芸能一家の出身で、れっきとした2世セレブであるベンは、レナード氏のツイートに「それは安易すぎるよ。みんなそれぞれ努力して、創作してる。それぞれの道がある。彼らのベストを祈るよ」とコメントして、『The Rightway』に携わる2世クリエイターたちを擁護。

すると、レナード氏は「僕だって心からそう願ってる。でも、そういう(親がお膳立てした)道筋があることを僕たちは認識しなくちゃいけないよね」と返信した。

これに対し、ベンは「そうだね。彼らとは面識が無いけど、経験から言うと、彼らだってみんなさまざまな困難にぶち当たってきたはず。業界にアクセスがない人たちとはまた違うかもしれないけど。ショービズの世界は知っての通りなかなか険しい。結局のところは実力主義だよ」と自らのこれまでの経験をもとに語った。

「もちろん、彼らがそれぞれ何かしらの試練に直面したであろうことは僕だって疑わない。彼らも人間だからね。ただ、僕が言いたいのは、この業界が、短期的に見ても長期的に見ても実力主義だっていう主張は受け入れられないっていうこと。もしそうだったら、カメラの裏側にいる人たちの完全なる多様性不足をどう説明する? 実力不足だとでも言うの? 」と返したレナード氏。

これにはベンも賛成で「100%同意するよ。多様性はもっと重要な問題だ。疑いようもない。君の論点も理解できる。(2世のほうが一般の人より)アクセスがあることは確かだ。僕が言いたいのは、たとえその人が誰であっても、誰と知り合いであろうとも、才能が無い人はチャンスを生かせずに淘汰されていくということ」と返したが、レナード氏は「根本的には同意できないな。数字はウソをつかない。統計から言うと、業界で働く人の3分の1が実力ではなく、(コネや人種、性別などの)ほかの要因によりその仕事に就いている」「君も僕も、才能がないのにこの業界の仕事に就き続けている人たちをたくさん知っているだろ。お互い、それが誰かをいちいち名指しにするほど礼儀知らずじゃないけど」と掘り下げた。

「ハリウッドの人たちは自分の成功が純粋に実力によるものだって信じる傾向にある」とレナード氏名が辛らつな分析を繰り出すと、ベンは「ワオ、本当に?僕は自分の成功は家族のおかげだと思っているし、そうじゃないなんて言った事はないけど。どうしてそんな風に大まかに一般化するんだい? 多様性に関する君の主張は正しいし、僕は同意するけど」とコメント。

一歩も引かないレナード氏に最終的に折れた様子のベンは「君の視点は僕の観点を照らしてくれたよ。ハリウッドの人たちが何を信じるかという点に関する一般化に関しては意見が完全に一致することはないかもしれないけど、そんなことは、君が本当に言おうとしている、ショービズ業界における不平等さや偏りへの指摘よりは重要じゃないよね」と、有意義な討論ができたことには満足した様子で締めくくっていた。

スピルバーグ娘が2人の討論に反応

レナード氏とベンのツイッター上でのやり取りは業界内外の注目を集めた。

これを受け、議論の発端となったデストリーは、レナード氏とベンに宛てたすでに削除済みのツイートのなかで「私は映画という芸術を愛し、映画製作者を目指しているただの若い女性。ネポティズムについて人々が議論するのはいいけど、私は自分がここまで来るのにどれだけ努力したかや、簡単な道のりなんかじゃなかったことを知ってる。作品をとても誇りに思っているし、一緒に作った仲間たちのことも誇りに思う」とコメント。

画像: スピルバーグ娘が2人の討論に反応

その後、「自分が特権を持って生まれたということは認識してる。それにずっと打ち勝とうとしてきた。だからこそ、業界に新しい才能を迎え入れて、あらゆるバックグランドを持つアーティストたちにチャンスを与えられるうになるということを自分のミッションにするつもり。コネクションがないからって、誰ものけ者にされるべきじゃない」と、映画界の多様化に貢献していきたいという抱負も綴っていた。

親の七光り問題に2世とその親が反応

ベンとフランクリンの討論は2021年7月に起きたことだが、2022年末に前述のNew York Magazineのネポベイビー特集が出て世間で論争に火がついてから、続々と2世セレブやその親から反応が出てきている。

画像: ネポベイビーTシャツを着て外出する、ネポベイビーのヘイリー・ビーバー。
ネポベイビーTシャツを着て外出する、ネポベイビーのヘイリー・ビーバー。

ケイト・ハドソン

母親が俳優のゴールディ・ホーン、実父がシンガーのビル・ハドソン、義理の父が俳優のカート・ラッセルである俳優のケイト・ハドソンは、2022年12月にThe Independentにてネポベイビー問題について聞かれると、「あまりどうでもいい」と発言。「自分の子どもたちを見ていても思いますが、私たちはストーリーテラーの家族なんです。それは間違いなく私たちの血に流れているのです。人々がそれをどう呼ぼうと勝手ですが、それを変えることはできません」としたうえで、モデルやビジネスパーソンの方が親の七光り問題が強いとして、「時々、ビジネスミーティングで、『これは誰の子ども?この人、何も分かっていない!』と思うことがある」と説明した。

イヴ・ヒューソン

U2のフロントマンであるボノの娘である俳優のイヴ・ヒューソンは、ツイッターで「New York MagazineのCEOであるPamela Wasserstein自身もネポ・ベイビーだって知ったのは、素晴らしい展開だった。彼女の父親が2004年にこの雑誌を購入したのです」と、ネポベイビー特集を組んだNew York Magazineを揶揄。

ロッティ・モス

ケイト・モスの腹違いの妹であるモデルのロッティ・モス。「自分が金持ちでも有名でも成功者でもない理由をネポティズムのせいにする人たちにはうんざりしている」「もちろん、名家出身の人たちがそれを理由に前に進める助けを得られるのは不公平だけど、あのね、人生はフェアじゃないの」とツイッターでばっさり。

ヘイリー・ビーバー

俳優スティーヴン・ボールドウィンを父に持つヘイリー・ビーバーは、「Nepo Baby(ネポベイビー)」とプリントされたTシャツを着用。論争を皮肉の効いたファッションにして、話題をさらった。

グウィネス・パルトロー

父がプロデューサーのブルース・パルトロー、母が俳優のブライス・ダナー、弟が映画監督のジェイク・パルトロー、いとこが俳優のキャサリン・メーニッヒと、ショービズ一家出身のグウィネス・パルトローは、「ネポベイビー」Tシャツを着たヘイリー・ビーバーの写真に「私、これ数枚必要かも」とインスタグラムで自虐とも皮肉とも取れるコメントをした。

ジェイミー・リー・カーティス

父トニー・カーティスと母ジャネット・リーは俳優の両親のもとに生まれたジェイミー・リー・カーティスは、インスタグラムでネポベイビー論争を「矮小化し、否定し、傷つけようとするものでしかない」と批判してこう反論した。

「私たちはすぐに、その分野で芸術的に有名な誰かの親族には何の才能もないだろうと推測し、悪口を言ってしまうのは不思議なことです。私は、それは単に真実ではないことを学びました。私は、何千何万という人々と一緒に、あらゆる種類の仕事に出向き、毎日、誠実さとプロ意識と愛とコミュニティとアートを自分の仕事に持ち込もうとしてきたのです。そして、私は一人ではありません。私のような者はたくさんいます。私たちは自分の技術にこだわりを持っています。自分の家系に誇りを持っています。自分たちが存在する権利を強く信じているのです」

リリー・アレン

父親はコメディアン兼俳優のキース・アレン、母親は映画プロデューサーのアリソン・オーウェンという血筋に生まれたシンガーのリリー・アレン。当初、ハリウッドより銀行や司法界のネポベイビーの方がタチが悪いという持論を展開していたリリー。一般ユーザーから“みんなネポベイビーの存在を否定しているのではなく、ネポベイビーは自分の利益や特権を認識すべきだというのが論点”だとコメントされると、トラウマのせいで特権に気づきずらいと新たな主張をした。

「私たちは幼少期は安定と愛、育児を渇望し、お金や権力への接近にはまだ関心がない。ネポベイビーの多くは親がナルシストであるため、幼少期にこれらの基本的なものに飢えているのです。また、芸能界は親に優しくありません。また、芸能界は、ツアーや数ヶ月の撮影など、(子どもを持つ)親に優しいビジネスではない。幼少期のトラウマが残っていると、自分自身の特権に気づくのは難しい」

トム・ハンクス

俳優のトム・ハンクスは自身はネポベイビーではないが、4人の子ども全員が俳優や裏方など、エンタメ業界と関わりのある仕事をしている。そのため、2022年に英The Sunにネポベイビー問題について聞かれると、2世たちを擁護。「これはファミリービジネスなんです。これは、私たちがずっとやってきたことであり、私たちの子どもたち全員が育った環境なのです。私たちには4人の子どもがいて、彼らは皆とてもクリエイティブで、何らかのタイプのストーリーテリングに携わっています。もし私たちが配管資材のビジネスをしていたとしても、あるいは通りの花屋を経営していたとしても、年末の在庫管理だけだったとしても、家族全員がある時点で(家族の仕事に)時間をつぎ込んでいるはずです」と語った。

(フロントロウ編集部)※こちらの記事は2021年7月31日に公開された記事に加筆して再投稿したものです。

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