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父親休暇の延長はフランスに男女平等をもたらすか?

  • 2021.7.31
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7月1日に施行された出産時の父親休暇日数の延長は、母親たちの精神的負担を軽減するメリットはあるものの、男女間の真の平等を実現するための行動はまだ十分とは言い難い。分析してみよう。

父親休暇の延長で母親たちの精神的負担が軽減されるものの、アクションはまだ十分とは言えない。photo:Getty Images

「子どもが産まれたら、世話するのは母親だけ、という理由はない」。 2020年9月末、フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、2021年7月1日から出産時の父親休暇を14日から28日(うち7日は義務)に延長するという政府の決定を、自身のインスタグラムで正式に発表した。大統領によれば、「5年間の任期において今回の延期は価値ある行動」であり、男女の平等を意味するという。しかしこの措置は、母親に実際にどのような影響を与えるのだろうか?

父親の関わりを奨励する

1970年代にはほとんど知られていなかった「父親休暇」の概念が、フランス人に一般的に知られるようになったのは2002年を迎えてからのこと。家庭生活に父親を関与させることは、当時からすでに大きな課題の一つだった。

父親休暇は、オムツを変えたり、子どもを寝かしつけたり、お風呂に入れたり、夜中に泣いた時に起きたり、医者に連れて行ったり...といった親の仕事の配分に顕著なメリットをもたらしたが、それでも公平ではないと2015年INSEE(フランス国立統計経済研究所)は調査報告をしている。

OFCE-Sciences Po(社会科学専門グランゼコール)のエコノミストであり、ジェンダー研究教育プログラム(PRESAGE)のディレクターであるエレーヌ・ペリヴィエによると、今回の父親休暇の延長は、とりわけ「社会的権利の観点からの朗報をもたらすだろう」と述べる。

問題は、すべての父親が出生直後に7日間の強制休暇を取る義務である。「以前は、職業的に不安定な労働者はこの権利を主張するのが困難でした。終身雇用の社員の80%が父親休暇を取得したのに対して、契約社員は60%未満の取得率でした。産休の場合と同様、この休暇の一部を義務化することで、職場のプレッシャーを減らすことにつながります」とエコノミストは強調する。エレーヌ・ペリヴィエによると、これは少しずつでも確実に父親の精神面に影響を与えているという。「子どもと一緒に時間を過ごし、出産に伴い家庭の仕事の引き受けなければならないという、より強いシグナルを父親たちに送っているのです」

これは、新しい世代の「制度的なものよりも、関係をしっかりと持つ父親像」と密接に関係していると、社会学者のクリスティーヌ・カストラン=ムニエは強調する。「ジェンダー表現は変化しており、男性が子育ての責任を分担する傾向にあります。これにより、女性への過剰な負荷と罪悪感が軽減されるだけでなく、父親の子どもへの愛着を高めることができます。これは、子どもが誕生した最初の数週間において、とても重要なことです」と『父親の本能』の著者(1)は述べる。

フランスは非常に遅れている

このような社会的進歩は、母性の負担を明るみに出すというメリットがある一方、まだ十分ではないという指摘もある。「父親休暇の義務期間は短すぎます。平等にするためには、女性の産休(16週間)に合わせるべきでした」とジェンダー平等のコンサルタントであり、ペアレンツ&フェミニスト協会の創設者であるアマンディーヌ・アンシェヴィッチは指摘する。「妊娠、出産、産後がどんなものか知っているのであれば、この期間は冒涜に近い。いまの父親たちはそのことに気づいていますが、私たちの社会のはまだ非常に保守的な政策を保持しています」

確かに、ヨーロッパの隣国に比べると、フランスは遅れている。「父親休暇期間の延長は小さな一歩であり、最低限必要なことではありますが、他の国に比べると遅すぎます」と社会学者のクリスティーヌ・カストラン=ムニエも指摘する。「スペインは今年の初めから、子供が生まれてから希望する父親に16週間の休暇を提供しています。アイスランドでは、90日間の休暇を提供している。男女共同参画のパイオニアであるスウェーデンでは、「両親休暇」を支持し、「父親休暇」と「母親休暇」という用語自体が禁止されています」。スウェーデンでは、両親合わせて480日の育児休暇を取得できる。そのうち3カ月は父親のために確保されており、休暇を受け取らない場合には失効する。

性別による先入観が未だ存在している

解決策は必ずしも他国に従うことではないが、職場での男女平等を達成するためには、より大きな努力が必要だ。母親と父親のニーズについて国に理解してもらおうと努めている企業もある。「ロレアルとロクシタンを含む391社が“親法”に署名しました。これは、子どもの誕生時に父親に1カ月の全額有給休暇を提供する憲章です」とアンシェヴィッチ。「若い世代の男性は、従業員とその子どもたち、『仕事を理由に家族を犠牲にしてはいけない』というメッセージを送り届けています」とカストラン=ムニエは付け加える。

エコノミストのエレーヌ・ペリヴィエによると、これは単に期間の問題ではない。「父親休暇の延長は、雇用主が認識している性別による家族の役割分担を根本的に変えるものではない」とペリヴィエは指摘する。「雇用主が男性の短期的な出産休暇を想定している場合、保育所への送り迎えや子どもが病気になった時に休暇を取る、といった長期的な役割を担うのは主に女性だと考えるでしょう」

その解決策は、出産後の産休と育児休暇を補う父親休暇にあるのだろうか?「父親休暇は仕事と家庭生活の間の境界線を明確にしますが、その賃金は定額最低賃金の3分の1と非常に低いため、配偶者よりも給料が高いことが多い父親を説得するのに苦労するのです」とエレーヌ・ペリヴィエは話す。

ペリヴィエは、若い母親たちを労働市場から遠ざけることなく、男女間の協力をより促すためには、現在、場所もスタッフも不足している「より良い幼児教育システム」作りに予算を集中させるべきだと提言している。

(1)クリスティーヌ・カストラン=ムニエ(Christine Castelain-Meunier)著『L’Instinct paternel』、Larousse刊。

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