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デザインの半歩先を体感!「インテリア ライフスタイル展」で発見した注目の作り手たち

  • 2015.7.7
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国内外のハイエンドなインテリアデザインのアイテムを結集させた、新しいライフスタイルを提案する国際見本市「インテリア ライフスタイル展」に出かけてきました。

同イベントで毎回特に注目を集めるのが、チケットカウンター入ってすぐに広がる大空間・アトリウムで展開される特別展示。今年は「Curation Store(キュレーション・ストア)」というテーマで、グレー、白、黄色を基調に「Curation storeギャラリー」と「Jewelryテーブルブース」の2つの企画が十字に交差するような空間が作られていました。エスカレーターから見る風景もとてもキャッチー&グラフィカルで心躍ります。

この空間をプロデュースしたのは、フィンランド発人気ファブリックブランド・マリメッコのヘルシンキやNYの旗艦店などをはじめ、数々のブランドショップの内装設計を手掛ける設計事務所ima(イマ)の 小林恭氏、小林マナ氏。海外の人気ブランドの店舗設計を、実は日本人デザイナーが手がけているってワクワクしますよね?!

【設計事務所imaの 小林恭氏(右)、小林マナ氏(左)】

今回はこの「インテリアライフスタイル展」の出展者たちの中から、次のような視点でとりわけ目を惹いた出展者たちをいくつかご紹介します。

(1)素材や作り方の追求によって、デザインに余白があり選ぶ楽しみを提案しているアイテム

(2)触感や音、香り等にデザインの焦点をあてたアイテム

(3)アップサイクルに本気で取り組む世界の地方都市や個人の作るアイテム

(1)素材や作り方の追求によって、デザインに余白があり選ぶ楽しみを提案しているアイテム

|模様の出かたで異なる表情になる、大判の布にプリントされた鈴木マサル氏のグラフィック
「大きいって素晴らしい。用途の決まっていない、大判の布をワクワクしながら自由な視点で使ってもらえたら嬉しい」と語ってくれた鈴木マサル氏。
大判のグラフィックを展示したルベインの展示ブースは、布を切りっぱなしのままで、そのまま垂らしたり、テーブルにかけたり、ソファーを覆って端を押し込んでたりと、模様の出方でインテリアの雰囲気が変わり、重ね使いしても面白い表情が楽しめました。

「気分に寄り添う」ファブリックとの付き合い方も、今後は日本でも広がっていく予感がします。

|工業的な素材の追求、自由に纏える国産ジュエリー・INSTANT JEWEL(インスタントジュエル)
日本の高い工業技術を世界に発信するにも「ファッショナブルであること」「マシンメイド(機械でつくる)こと」を前提に、素材の使い方や組み合わせを研究し、豊かな色彩や質感、異素材にまたがる多様なバリエーションを生み出しているヒップなブランドが「INSTANT JEWEL(インスタントジュエル)」。

その一つひとつがハンドメイドでは味わえない面白みに溢れています。会話のきっかけに役立ちそうなバネ製のある金属線でできた文章を作れるDICTIONARIESや、実験室のような展示会場もユニークでした。

|ヴィンテージビーズの素材に刻まれた時間を紡ぐように作られたアクセサリーブランド・

tamas

希少なフランス製のヴィンテージのスパンコールやビーズを主に使用して、さまざまな表情を見せるブローチやピアスを展示していた京都発のアクセサリーブランド「tamas」。非常に繊細な色合いは、帯留めとして使う人もいらっしゃるとのこと。

国境も時間も超えて、使い方をゆだねる人工素材の美しさを生かしたカタチは、ため息の出る程の高いクオリティでした。

|ひとつひとつ異なる表情をもつ壁掛け時計Patina/Orb

国内外のデザイナーのパネルと、壁掛け時計のウォール展示をした

レムノス

新作の安積 伸氏デザインによる「Patina/Orb」の特徴のある美しい質感は、富山県高岡市の伝統産業である真鍮鋳物とその表面への特殊な着色技術によってもたらされたもの。

伝統工芸師の方々によって製造されていて、従来ならばタブーともいえる、表情がひとつひとつ異なる仕上げに挑戦した今後展開が楽しみなアイテムです。

|古いビルの床のようなテクスチャー、好みの割れをつくれるコンクリートシート・mortar

クラフトレーベル"PULL + PUSH PRODUCTS."のコレクションライン「mortar」は、主に建材として使用される「モルタル」を単なる“材料”として捉えるのではなく、“人の感覚を刺激する1つの要素”として捉え直すことをコンセプトにしています。

薄くひんやりとしたシートは驚きの素材感で、動かすことで出来るひび割れ具合を楽しむという提案が秀逸なこのアイテムは、インテリアデコールの幅を大きく広げる可能性を感じさせてくれます。

(2)触感や音、香り等にデザインの焦点をあてたアイテム

|片手でフックに架けられる、挟み心地のよいフック・Clip

ちょっとしたスペースに両面テープで貼ることのできる樹脂製のフック・Clip。片手で布巾やゴム手袋等をかけられる、いわゆる便利グッズですが、確実に「挟んだ安心感」が得られる心地よい手応えは感動ものです。

この構造は、固さの異なる2種類の樹脂を一体成形することで実現したものだそう。カラー展開も品よく、ちょっとしたお礼の時にも使える価格帯も好感を持ちました。

|パイプの会社が本気で作った知育玩具・pipegram

パイプを繋げて、手を動かしながら立体を体感的に学べる日本生まれの知育玩具・pipegram(パイプグラム)。美しく仕上げられたパイプを繋ぐジョイントは、しっかりとした固さのブラックと柔らかく曲げやすいホワイトの2種類が用意されています。

ホワイトのジョイントで作った方は触ると弾力があり、ブラックのジョイントで作った方はしっかりとした構造でカタチが崩れない。子供が自発的に多面体の世界に入っていける、世界トップレベルのパイプ加工技術をルーツにもつメーカー発信のプロダクト。

これは今後「レゴのように発展していくのではないか?」と個人的に期待してます。

|デザインコンシャスなオーガニックブランド・LE BAIGHERUR

フランスのLE BAIGHERUR(ル・ベヌール)の石けんは、ひとつひとつ手作業により常温で固めることによって、環境に優しくオイルの成分を最大限に閉じ込められています。

その香りの良さやエコフレンドリーな徹底さもさることながら、グラフィックの可愛さや、開けるときの紙の厚みや質感が堪らない。

オーガニック石けんのパッケージで、こんなに胸躍るものは初めてです。ちょっとしたお礼に差し上げるにも喜んでもらえること間違いナシですよ♪

|リネンのような触感の紙エプロン・The napkins

お出かけ仕様の赤ちゃん用の使い捨て用のビブ・The napkins。本物のリネンのような上質な手触りで、グラフィックもキャッチーです。

お出かけ先に小さく畳んで持って行くこともでき、親戚の集まりにもOKな上品さも兼ね備えているのがありそうでなかった質感。同素材でナプキンもあるので、ホームパーティーで赤ちゃんのいるゲスト席にセッティングしておくのもスマートなおもてなしになりそうです。

(3)アップサイクルに本気で取り組む世界の地方都市や個人の作るアイテム

|廃材で出来たシャンデリア?! ピート・ヘインイークの新作を発表したCIBONE

廃棄材を元にDIYとプロダクトを自由に行き来するスターデザイナー、ピートヘインイークの新作を発表したのはCIBONE。他の作品を作る時に出る廃材を、できるだけ効率的に利用できる方法はないかと考え生まれた、何種類かのプライウッドで作られたパーツを、組み立てていくことで作られるシャンデリア。

クラシックなモチーフに、新たなコンセプトを与えるヒップなアイテムはさすがです。

|桐タンス、捨てちゃうの?削り直す?それなら、アップサイクルしてみませんか?

パッと見るかぎり、モダンでシンプルで機能的な洋服ダンス。実は着物をしまう為に嫁入り道具として使われてきた桐ダンスをもとに制作されたものなんです。エドライフの冨浦氏が自ら木工・鍛冶仕事をすべて手がけているというのもポイントです。

もともとタンス等の修理をしていた経験から、手に覚えている感触の金具が市販されていないことを不満に感じ、御神輿についている様々な金物の職人さんの元修行をしたことによって満足いく仕上がりになったとか。

桐はまるで呼吸しているかのように乾湿調整を行う日本の気候に適した素材、桐ダンスを「見せる収納」として仕立て直すのはクールだと感じました。

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今回紹介した「インテリア ライフスタイル展」は単に最新トレンドを展示するだけでなく、若手デザイナーの発掘や姉妹海外デザインイベント(世界最大の国際見本市:メサゴメッセフランクフルト、通称:ambiente)への招聘、講演会なども催している見応えのある、デザイン業界でも注目の人気イベントです(今年は過去最高の来場者数となったそう)。

これまでデザイナーは、従来は海外の国際見本市で作品を発表するのをきっかけに世界で幅広く活躍するというスタイルが主流でしたが、ようやく最近になって日本での仕事をきっかけに海外から評価され、活動の場所を広げていく事例が増えつつあります。そして、日本のメーカーも世界を舞台に 商品展開できる提案力やプレス力を持ちつつあります。

そういった背景からも「インテリア ライフスタイル展」は今後も、世界観を表現することや新しい価値の提案にも挑戦する“新たな作り手と出会う”貴重な機会を提供するイベントであり続けてくれるはず。主にインテリア・デザイン業界やメディアの関係者向けのイベントではありますが、少しでもインテリアやデザインに興味ある方には、ぜひ足を運んでデザインの今と未来をご自身で体感していただきたいと思います。

http://yokodobashi.com

text & photo:土橋 陽子

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