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「チューリップに熱狂」バブルの世界史に学ぶ、今どう行動すべきか

  • 2021.7.28
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前回、コロナバブルについて話してくれた代々木ゼミナールの人気講師・蔭山克秀さん。「30年前、すさまじい天国と地獄を経験しその後遺症にいまだに苦しむ私たちにとって、バブルは大いなる心の傷、日本人のトラウマ」だと断言します。そこで今回は同じ轍を踏まないための教訓として「世界のバブルの歴史」をおさらいしましょう——。

伝統的なオランダの風車がある風景
※写真はイメージです
史上初のバブルはオランダの「チューリップ・バブル」

スコットランドのジャーナリスト・マッケイは、1852年に邦題『狂気とバブル——なぜ人は集団になると愚行に走るのか』を著しました。原題直訳は『常軌を逸した集団妄想と群衆の狂気』で、そこにはバブルの歴史だけでなく、人類の集団心理が引き起こした愚行の数々(魔女狩り、十字軍、ノストラダムスの大予言、毒殺や決闘の流行、錬金術など)が収められています。これらを読むと、私たちのご先祖様がいかに愚行を重ねてきたか、そして私たちがいかに何も学んでないのかが、よくわかります。

さてバブルに話を戻しますが、本書には、人類がかつて経験した3つのバブルが掲載されています。16世紀オランダの「チューリップ・バブル」、18世紀フランスの「ミシシッピ計画」、そして同じく18世紀イギリスの「南海泡沫事件」です。

まず「人類初のバブル」とされるオランダのチューリップ・バブルについて。これはトルコから入ってきた珍しくも美しい植物に人々が熱狂し、価格がどんどん高騰していったお話です。最初は金持ちから始まったブームが中産階級まで広がり、人々は次第に、自分がチューリップを買うのに、どれだけの財をつぎ込んだのかを競い合うようになっていきます。その後もチューリップへの投機熱は、どんどん過熱し、ブームが最高潮に達した頃には、球根1つを4.8ヘクタールの土地と交換したという話や、球根を玉ねぎと勘違いして食べた外国人の船乗りが逮捕されたといった話まで出てきました。

しかし、さすがにここまでくると、分別ある人たちは「今の状況はおかしい」と気づき、売り始めます。すると市場はパニックになって売り注文が続出し、価格はすごい勢いで下がり始めました。売買契約をめぐるトラブルも増えましたが、裁判所はチューリップ投機を「契約ではなく賭博」とみなし、介入を拒みました。このようにして、チューリップ・バブルはオランダ経済に深刻なダメージを与えつつ、はじけていったのです。

フランス全土が投機に熱中した「ミシシッピ計画」

「ミシシッピ計画」は、フランス摂政の信頼を得たスコットランド人ジョン・ローが、アメリカのルイジアナ(当時仏の植民地で、貴金属が豊富に眠るとされていた)との貿易独占権を持つ株式会社「ミシシッピ会社」を設立するという計画でした。

ローから「この計画は、フランスに莫大な富をもたらします」と聞かされた摂政は、喜んで設立特許状を交付しました。またローの事業計画と高配当(年間なんと40%を約束)に熱狂し、国民、貴族、議員までもが株式投機に熱中します。株価はどんどん高騰し、発行株式を求めた人々が、ローの自宅付近に群がったそうです。

しかし、株式売買が活発になりすぎて紙幣の増刷が必要になったとき、摂政が安直に不換紙幣(金銀との交換保証のない紙幣)を乱発したせいで、貨幣の信用そのものが崩れてしまいます。こうなると、フランスで紙幣を持とうという人がいなくなってしまいます。そして紙幣が信用を失えば、株式取引も事業計画も信用を失い、ついにはバブルがはじけてしまったのです。

最後は社長自ら売却、イギリス「南海泡沫事件」

イギリスで起こった「南海泡沫事件」も似たような話です。南米や太平洋諸島との独占貿易権を与えられた「南海会社」が、メキシコやペルーには金銀が無尽蔵にあるから儲かるぞという投機話に、イギリス国民が踊らされました。

ゴールド
※写真はイメージです

この話で面白いのは、実は当時のイギリス人たちは、フランス人が「ミシシッピ計画」で大損したのを知っていたにもかかわらず、自らもバブルに落ちたという点です。きっとそこには、バブルに浮かれた国で必ず見られる根拠のない楽観論、つまり「バカな奴らと違って、自分たちは賢いから大丈夫」という集団心理があったのでしょう。

こうしてイギリス人も株式投機に熱中しますが、悪質なのは南海会社が株価を吊り上げるために、楽観論や嘘、噂話などを流布したことです。これで株価は急激に上がりますが、その異常な高騰ぶりに不安を覚えた分別ある投資家が、これはおかしいと株を売り始めました。そのとき信じられないことが起こったのです。

なんと南海会社の社長までもが、自社株を処分し始めたのです。これで不安は一気に広がり、バブルははじけてしまいました。

集団の期待感がしぼんだときにバブルははじける

結局、本書からわかったことは、歴史上のバブルはすべて「みんなが欲しがる商品」や「値上がり確実な株」「金儲けできそうなうまい話」などに冷静さを失った集団心理で群がることで発生し、期待感がしぼんだときにはじけているということです。

1980年代の日本は、そこに「円高不況対策の緩和マネー」が入り込んで乱高下が大きくなり、そのせいで手を引く時期を読み違えた銀行、企業、国民が大火傷を負いました。そして今は、その1980年代とは比較にならないほど莫大な「コロナ緩和マネー」が飛び交っていますから、降り時を間違えると大変なことになるでしょう。

バブルがはじけた後の光景は悲惨です。自らの愚かさを棚上げした国民が、無責任に被害者面して怒りを爆発させ、延々と犯人捜しを続けていきます。もちろんそれで、泡と消えた金が戻ってくるわけでもありません。その光景は、いつの時代でも同じです。

最後に、バブルに熱狂する人々の性さがを言いあらわしたマッケイの言葉で、文を締めさせていただきます。

「人々が一斉に理性のくびきを逃れ、黄金の夢を追い求めてがむしゃらに走りだし、それが夢に過ぎない事実を認めることをかたくなに拒否し、まるで鬼火かなにかのように沼地に飛び込んでいく」

これを私たちの教訓としましょう。

蔭山 克秀(かげやま・かつひで)
代々木ゼミナール公民科講師
「現代社会」「政治・経済」「倫理」を指導。3科目のすべての授業が「代ゼミサテライン(衛星放送授業)」として全国に配信。日常生活にまで落とし込んだ解説のおもしろさで人気。『経済学の名著50冊が1冊でざっと学べる』(KADOKAWA)など著書多数。

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