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「メンタルヘルス優先」決勝棄権のシモーヌ・バイルズにセレブから激励相次ぐ

  • 2021.7.28
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東京オリンピック女子体操団体の決勝戦をメンタルヘルスの不調を理由に途中棄権したアメリカ代表のシモーヌ・バイルズ。彼女の“勇気ある決断”にセレブたちからも激励のコメントが相次いでいる。(フロントロウ編集部)

シモーヌ・バイルズがメンタルヘルスを理由に決勝を途中棄権

リオデジャネイロオリンピックで4つの金メダルを獲得したほか、世界選手権では史上最多となる通算19個もの金メダルを手にしたシモーネ・バイルズ(24)。アメリカ女子体操界における“GOAT”(史上最高、Greatest of All Timeの略)の名を欲しいままにする同選手は、7月27日に行なわれた東京オリンピック体操女子団体の決勝に出場したが、跳馬の演技後に途中棄権するという予想外の展開があった。

画像1: シモーヌ・バイルズがメンタルヘルスを理由に決勝を途中棄権

最後の着地で大きくよろめき、納得がいかない様子の表情を見せながら一旦コーチやチームドクターとともにフロアを後にしたバイルズ選手。すぐに戻っては来たものの、チームメイトたちにハグをして激励の言葉をかけると、そのままジャージに着替え、ベンチで応援に徹した。結果、アメリカ女子団体チームはロシアに次ぐ銀メダルを獲得。金メダルには一歩及ばなかった。

金メダル候補として有力視されていたバイルズ選手が突如として途中棄権してしまったことに衝撃が走るなか、バイルズ選手は、棄権の理由について、おもにメンタルヘルスの不調によるものだと決勝後の記者会見で説明。

怪我のリスクを回避して、ほかのチームメイトたちのメダル獲得を保証するためにも自身の棄権が必要だと判断したと語りつつ、「極度のストレスを感じる状況に直面すると、異常な精神状態に陥ってしまうものです。私は自分の健康を危険に晒すのではなくメンタルヘルスにフォーカスしなければなりません。私たちは自分の体と心を守らなくてはならないのです」などと米CNNに話した。

画像2: シモーヌ・バイルズがメンタルヘルスを理由に決勝を途中棄権

自身もチームメイトたちも「アスリートである前に、結局は普通の人間」と続けたバイルズ選手は、「身体的には快調です。コンディションも抜群。でも、精神的には…その時々でコンディションが変わってしまいます。オリンピックに参加してスター選手として注目を浴びることは簡単なことではありません。私たちは毎日様子を見ながら進んでいくしかないのです」と自分たちが感じている多大なプレッシャーに言及し、「自分としても、今夜このような結果になってしまったことには苛立っていますが、銀メダルを獲得したチームメイトたちのことを誇りに思っています。私たちは一生この経験を大切にするでしょう。アメリカという国がまだ私たちのことを愛してくれることを願っています」と国民の反応を気にする発言も残した。

セレブたちから激励のメッセージ

バイルズ選手は女子体操だけでなく米五輪代表の“顔”のような存在として注目を集めてきた存在。そんなトップアスリートである彼女が、オリンピックという4年に1度の大舞台でのプレッシャーに正直に言及し、メンタルヘルスを重視して試合から身を引くことに決めたという、“勇気ある行動”にはアメリカのスポーツファンたちの多くが理解を示し、エールを送っている。

そのなかには、著名なセレブたちやアスリート仲間たちも。テレビ司会者のアンディ・コーエンは「僕らは君を愛してるよ!」とバイルズ選手のアカウントに宛ててコメント。ドラマ『POSE/ポーズ』のビリー・ポーターは、バイルズ選手が団体決勝の前日にインスタグラムに投稿した「世界中の期待を一身に背負っているように感じる時がある。なんとかプレッシャーを感じないフリをしてみせているけど、正直、キツい時もあるよ。ハハハ! オリンピックはハンパない! 」という本音のメッセージを引用して「強さ、勇気、そして知恵」とコメントした。

画像: 左:アンディ・コーエン、右:ビリー・ポーター
左:アンディ・コーエン、右:ビリー・ポーター

元体操選手でバイルズ選手と親交があるアリー・レイズマンは、アスリートたちが五輪出場を夢見て、どれだけ人生を捧げて努力してきたかに触れ、「大会に向けてバイルズ選手がどれだけプレッシャーと戦って来たかを目の当たりにしてきましたが、本当に圧倒されました」と米Todayとのインタビューでコメント。体操というものは、呼吸の仕方1つや、天井からの照明が眩しく感じたといった些細なことで演技に影響が出てしまうものだと経験者の立場から語った。

平昌オリンピックのフィギュアスケート団体戦で銅メダルを獲得したアダム・リッポン元選手は「シモーヌがどれだけのプレッシャーを抱えていたかは計り知れない。彼女にたくさんの愛を送るよ。彼女だって人間だっていうことを、忘れちゃいけないよね。僕たちは君を愛してるよ」とツイートした。

画像: 左:アリー・レイズマン、右:アダム・リッポン
左:アリー・レイズマン、右:アダム・リッポン

メンタルヘルスを理由としたアスリートの出場辞退といえば、今年5月、テニスの大坂なおみ選手が全仏オープンのシングルス2回戦棄権を表明。約3年前の全米オープン以来、うつ病に悩まされてきたことを告白した。

近年欧米では、メンタルヘルスの問題に焦点を当て、誰もが臆することなく心のケアに取り組めるような社会的土壌を整えようという流れがある。そのため、大阪選手然り、バイルズ選手然り、世界的に注目を集める立場にある人物が精神的な不調を吐露し、適切なケアを受けようとすることに寛容な姿勢を示す人が多い。

団体競技は棄権したバイルズ選手だが、彼女の東京オリンピックはこれで終わりではない。25日に行なわれた女子個人予選でも複数の種目で着地が乱れるといったミスがあったものの、4種目での競技を終えた時点で本大会最高得点となる57.731を獲得して個人総合でトップに。来週には決勝が行なわれる。バイルズ選手はメンタルヘルスに気を配りながら1日1日を大切にしたいと語っており、そのほかの種目別競技にも出場する可能性はまだ残っている。(フロントロウ編集部)

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