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積立投資への過信は禁物! あまり語られていないデメリットとは何か

  • 2021.7.28
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2020年3月に新型コロナウイルスの感染拡大に対する懸念から株式市場は暴落しましたが、直後に急回復し、その後も順調に市場は上昇しています。市場環境が好調な中、コロナ禍で将来不安が高まったこともあって、自己防衛の手段として多くの人が投資を始めました。

中でも若者の多くは、既存の証券会社や銀行ではなくネット証券で、少額からでも可能な積立投資を始めるなど、金融業界でも地殻変動が起こりつつあるようです。実際、金融庁(「投資信託等の販売会社による顧客本位の業務運営のモニタリング結果について」、2021年6月30日)のレポートでも、2020年の積立投資信託の販売額がネット証券において大きく伸びていることが確認できます。

このムーブメントはとても良いと思います。公的年金の実質的な減額や長生きリスクなどを考えれば、定年退職までに資産を極力増やしておく必要があり、その手段として積立投資は非常に有効だと思います。

最近では積立投資に適した個人型確定拠出年金(以下、iDeCo)やつみたてNISAといった非課税制度もあるため、それらを活用している人も着実に増えています。

積立投資は本当に最強の投資手法なのか?

そんなムーブメントにもなりつつある積立投資ですが、ネットをみれば「時間分散ができる積立投資はおススメ」といったメリットを訴求する情報があふれています。でも、本当にそんなに素晴らしい投資手法なのでしょうか?

まず皆さんに理解してもらいたいのは、投資の世界に完璧なものはなく、メリットがあればデメリットもあるということ。では積立投資にはどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか?

積立投資は、一般的には決まったタイミング、決まった金額で資産を購入(定時定額投資)する投資手法のことであり、資産の価格が高い時には少ししか購入せず、安い時にたくさん購入することで、自動的に平均購入価格を引き下げる効果が期待できます。結果として、以前の日本株式のように長く低迷した場合、低迷時には安く購入することができ、その後、日本株式が少しでも回復すれば利益が得られるようになるのです。一括投資の場合、投資した時点の価格を上回らない限り利益は出ませんが、積立投資の場合、換金時の価格が投資開始時点の価格よりも下落していたとしても、利益が上がることが十分にあり得ます。これは大きなメリットと言えるでしょう。

一方、デメリットは何でしょうか? 今のように株価が上がり続けている状況が続くと、たとえ積立投資を実践していたとしても、平均購入単価は高くなります。このような状態では投資開始時点の価格より高くても、価格がピークから少し下がるだけでマイナスになってしまうこともあるのです。

つまり積立投資は下げ相場には強いのですが、上げ相場には弱いのです。

積立投資に適しているのはリスクの高い資産

メリットとデメリットを理解したうえで積立投資を行う場合、どのような資産で実践すればいいのでしょうか? 何でも良いということはなく、当然、向き不向きがあります。先ほどの日本株式の例からも分かるように、積立投資では投資対象資産の価格が下がった後に戻ってくる性質(平均回帰傾向)がないと利益は出ません。積立投資であっても下がりっぱなしでは、やはり利益は出ないのです。その点、下がり続けて挙句の果てに価値がゼロになる可能性のある個別銘柄は、積立投資に適していないと言えます。

一方、市場がなくなることはないので、市場全体をカバーする金融商品は積立投資に適していると言えます。変化の速い今の時代、今好調だったとしてもその企業が20年後、30年後に存続している保証はどこにもありません。したがって、長期を前提とした積立投資の場合、個別銘柄よりも市場全体に投資をすることが望ましいのです。

また通常、リスクはなるべく低いほうが良いと考えるのが一般的ですが、積立投資においては、むしろリスクが高いほうがその強みを活かせます。この点は特に初心者にとって非常に重要なポイントだと思います。初心者は投資経験がないことから、まずは低リスクの金融商品で積立投資を実施することが多いようですが、リスクが低いというのは価格が大きく変動せず、割安・割高の状態になりづらいことを意味します。つまり、積立投資による平均購入単価の引き下げの効果をあまり享受できないことになります。積立投資を行うと決めたならば、思い切ってリスクをとって運用するほうが良いのです。

積立投資か一括投資か、有利なのはどちら?

積立投資が分かってくると、「一括投資ができるくらいの資金はあるのだけど、あえて積立投資にしたほうが良いのだろうか」と考えてしまう人も多いと思います。実際、金融機関の窓口で、販売員からこのようなアドバイスを受けた人もいるようです。

結論から言うと、投資資金があるのに、あえて積立投資をすることは避けたほうが良いと私は考えます。なぜなら、過去においては一括投資のほうが積立投資よりも増える確率が高かったからです。

実際、一括投資でグローバル株式(MSCI World指数)に5年間投資した場合と、5年間積立投資を行った場合(投資金額は一括投資と同じ)のリターンを比較したところ、一括投資した場合の勝率が約70%と高くなりました。過去において低迷していた日本株式(TOPIX)で同様の比較をしたところ、一括投資の勝率は50%以上になりました(ともに分析期間は1989年2月~2021年6月)。リターンの幅を見ても、平均的にはグローバル株式でも日本株式でも一括投資のほうが大きなリターンとなっています。

この理由には機会損失があります。積立投資の場合、積立投資をしなかったお金はほぼゼロ金利の預貯金で眠っていることになります。一方、一括投資ではリスクはあるもののリターンが期待できる株式に全額投資されるので、これが差となって表れているのです。

一括投資という選択肢も持っておくことが重要

今回は積立投資のメリットとデメリットについてお話しました。投資資金がない場合には、給与からコツコツ投資をする積立投資しか選択肢がなく、それを実践することに異論はありません。ただ、積立投資が決して万能ではない点を理解いただきたいと思います。

また、投資資金がある人が、あえて積立投資をする必要がないことも理解いただきたいポイントです。5年程度の中長期投資の場合、機会損失が大きくなるため、投資資金があるならば、それを早期に投資してしまうほうが良いのです。

もちろん、今後も過去と同様に一括投資が有利になるかは分かりませんが、大事な点は、積立投資を過信して一括投資を選択肢から排除しないことです。確かに一括投資は勇気がいるかもしれませんが、5年程度の期間があるならば、思い切って一括投資を選択してみても良いと思います。

後藤 順一郎/アライアンス・バーンスタイン AB未来総研所長

慶應義塾大学理工学部 非常勤講師、投資信託協会 客員研究員。1997年慶應義塾大学理工学部卒業。富士銀行(現みずほ銀行)に入社し、法人向け融資業務なに従事。2000年からはみずほ総合研究所で、主として企業年金向けの資産運用/年金制度設計コンサルティングに携わる。06年一橋大学大学院国際企業戦略研究科にてMBA取得。同年4月アライアンス・バーンスタインに入社。現在はマルチアセット戦略のプロダクト担当。また、DC・NISAビジネスの推進及びAB未来総研にて顧客向けソリューション/リサーチ業務も兼務している。共著書に『年金基金の資産運用-最新の手法と課題のガイドブック-』(東洋経済新報社)などがある。

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