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沖縄の梅雨はパイロット泣かせ【キャプテンの航空教室】

  • 2021.7.24
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駐機場に到着し、飛行機から一歩外に出た瞬間、亜熱帯特有の湿気に包まれる。着陸前は強い雨との情報だったが、今では晴れ間も見える。6月、沖縄は梅雨真っ盛りです。はいさい、ぐすーよー、ちゅううがなびら(こんにちは、皆さま、ご機嫌いかがですか)。今回は私が主基地として勤務する、沖縄の梅雨についてのお話です。

梅雨は、東アジアにおいて春から夏に移行する過程で雨が多くなる気象現象です。沖縄は夏の訪れも早く、その移行期である梅雨も全国で最も早く、5月上旬ごろに始まり、6月下旬ごろになると梅雨明けします。私の出身地である関東地方と比べると、約1カ月もの差があるようです。

私が沖縄に来た当初は、梅雨明けの早さもさることながら、強烈な日差し、輝きに満ちた街の景色、そしてなんといってもザ・沖縄といえる海の色とそのグラデーションの美しさに驚きました。梅雨明けしてしばらくは天候が安定していることも多く、フライトでもプライベートでも私が最も好きな季節です。

梅雨は、性質の違う二つの気団(空気)がぶつかってできる梅雨前線によって雨が多くなるというものですが、関東と沖縄ではその雨の降り方が異なります。関東周辺は気団の温度差により前線が形成され、しとしとと弱く長く降り続く雨であるのに対し、沖縄周辺は湿度差によって前線が形成されるため、積乱雲を伴い、スコールのように激しく降るのが特徴です。

そんな沖縄の梅雨は台風と並びパイロット泣かせで、運航には非常に気を遣います。空港付近に積乱雲がある場合は、雷や風の急変、低く垂れ込めた雲などで離着陸に影響を受けます。また巡航経路上にある前線も、まるで壁のように積乱雲が連なっており、これも迂回などの対応を取らなくてはなりません。さらにその雲の壁も窓から視認できていればまだ対処がしやすいのですが、ずっと雲の中を飛行している場合も多く、操縦席では機上のレーダーをにらみながら緊張の時間が続きます。もちろん、いつも安全を最優先にフライトを進めておりますのでご安心ください。

梅雨の期間の長さやその間の総降水量は、関東と沖縄でほとんど差がありません。つまり、沖縄はスコールのように一時的な大雨はあるものの、止んでいる時間も長いということです。少し高台に上ると、あちらこちらでスコールが移動していく様子など、南国の雨季らしい幻想的な風景に出合えることもあります。個人的には、虹や薄明光線(雲の切れ間から光の柱が地上まで降り注いで見える現象、いわゆる天使の階段)もこの時季に多く見られる気がします。

島という特性上、梅雨の雨は貴重な水資源であり、私たちの生活にとって大事な時季でもあります。恵みの雨をしっかりと受けて夏を迎える、沖縄の梅雨明けはもうすぐです。皆さまも素敵な夏をお過ごしください。

照山泰彦 Yasuhiko Teruyama
日本トランスオーシャン航空
ボーイング737型機 機長
出身地:茨城県
趣味:サーフィン、料理
座右の銘:Work Hard & Be Nice to People

(SKYWARD2021年6月号掲載)
※記載の情報は2021年6月現在のものであり、実際の情報とは異なる場合がございます。掲載された内容による損害等については、一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

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