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【広島県知事インタビュー】10年後の広島の姿~子育て・教育編~「安心▷誇り▷挑戦 ひろしまビジョン」について

  • 2021.7.24
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【広島県知事へのインタビュー】 今後10年間に広島県が取り組む、「安心▽誇り▽挑戦ひろしまビジョン」が、昨年10月に策定されました。読者が一番気になる「子育て」と「教育」について、かじ取り役の湯﨑知事に話をうかがいました。

出典:リビング広島Web

プロフィル 1965年生まれ、広島市佐伯区出身。1990年に東京大学法学部を卒業。通商産業省(現・経済産業省)に入省。2000年に退官し、ネットベンチャー企業を設立。2009年11月に広島県知事に就任し、現在3期目。2男1女の父親 ※取材時は間隔を開け、取材陣は常時マスクをして実施しました

Q 新しいビジョンの全体像について、要点を教えてください。 A コロナ禍の状況も含め、県民が抱える不安を軽減し、安心につなげていくこと。同時に、広島県には良いものや素晴らしいものがたくさんあり、それは県民の誇りです。そうした安心と誇りが土台となり、希望に向かって挑戦できる社会にすることが、今回の新しいビジョンです。全ての施策を貫く3つの視点(左参照)を掲げて取り組むとともに、さまざまな施策を相互に連関させ、相乗効果を創出していきます。

①経済成長と人口減少社会の課題解消を目指す「DXの推進」「ひろしまブランドの強化」と国内外からの共感の獲得 ③生涯にわたって自己能力と可能性を最大限高める「人材育成」

子育て編

Q「ひろしま版ネウボラ」を全市町に設置するそうですが、どのような取り組みですか。 A 「ひろしま版ネウボラ」とは、妊娠期から子育て期まで切れ目なく子育て家庭を見守り支援する取り組みです。子育て家庭をサポートする組織は、行政はもちろん、産婦人科や小児科、保育園や幼稚園などが連携しながら、子育て家庭を包み込むように見守っていきます。最初のステップは、母子手帳を受け取るときで、行政の担当者が付きます。安心して、妊娠・出産・子育てができるよう、相談や支援を行っていきます。

Q 直近の課題として、コロナ禍で保護者のストレスや不安が増加し、児童虐待やDVへ発展することが予測されます。県としてはどのように取り組まれますか。 A コロナ禍で、子育て家庭と接する機会が減っています。そこでオンラインによる、「おしゃべり広場」を全市町で始めました。子育て中のパパやママが気軽に相談したり、お互いがつながって交流できる場となっています。こうした取り組みを通して、虐待やDVといった兆候があれば、素早く対応しています。

Q ネウボラ事業を推進していく上で、保健師などが不足していると聞きました。人材確保への取り組みはどのようにされますか。 A ネウボラの担当者は専門職で、保健師だけではなく、看護師や保育士などもいます。ネウボラのスタッフとして、スキルを身に付けるための研修や、「いきいき子育てママのナースカフェ」を活用し、人材の掘り起こしを行って、復職のサポートを行います。

Q 広島県の人口が280万人を割り込みました。不妊治療なども「ひろしま版ネウボラ」の活動に含まれますか。 A 「ひろしま版ネウボラ」は、妊娠してからがスタートとなります。不妊治療は、経済的な負担も大きいため、ネウボラとは違う枠組みで支援を行います。助成金制度があるので、ご相談ください。また、不妊治療を行っている医療機関でも相談に応じています。

Q 広島県の調べでは「安心して妊娠、出産、子育てができると思う」とする人の割合が、80・0%(令和元年)でした。この数字自体、すでに高いと思うのですが、さらに10年後の目標値を教えてください。 A 令和元年度が80%だったので、1年ごとに1%ずつ増やすことを目指し、10年後の令和12年の目標値を91%としています。

Q 「子育て」と「働き方改革」は一体だと思いますが、関連部署の連携は取れていますか。 A 令和2年に策定した「ひろしま子供の未来応援プラン」を推進するため、部局を横断するプロジェクトチームを組んで活動しています。

Q 「仕事も暮らしも、欲張りなライフスタイルの実現」は広島県が掲げるスローガンですが、コロナ禍で出鼻をくじかれたのではありませんか。 A コロナ禍で、県民の皆さんが不安を抱えているという状況をみると「マイナス、ネガティブ」なのかもしれません。しかし、新型コロナウイルス感染症対策を契機に、東京から地方へ移住を考えている人が増えています。その背景には、東京一極集中に伴う感染症や災害のリスクがあり、またリモートワークやワーケーションの普及で、オフィスに出勤しなくても仕事のできる環境が急速に整ったことなどが影響しています。その中で、仕事も暮らしも充実させるよう、ワークライフバランスを見直す動きもあります。行政としては、移住や新しいライフスタイルが実現できるよう、しっかりサポートしていきます。

教育編

Q 県教委内に、「乳幼児教育支援センター」が設置されました。目指していることや、「ひろしま版ネウボラ」との連携はどうでしょうか。 A 頑張る力や対人関係を作る力など、将来自分がやりたいことを実現するためには、非認知能力が大切です。それは、乳幼児期に遊びの中で培われます。そうした力が土台となって、将来多様な人と協働して新しい価値を生んでいく力へとつながっていくと考えます。乳幼児教育支援センターの目的は、乳幼児期の教育の質を高めること。そしてネウボラを通して、乳幼児教育支援センターが開発した保護者向けの資料を配るなど、家庭教育の支援を行います。

Q 学校では「学びの変革」が進んでいます。どのような児童生徒の育成を目指していますか。 A 変化が激しい時代では、ゼロから作り出していく力、不透明な世界を自分で切り開いていく力、グローバル社会の中でいろいろな背景を持った人たちと協働して答えを見つけ出していく力が大切で、そうしたことができる人材を育てていくことが求められています。それには、〝教える〞ということだけではなく、子どもたちが持っている力を100%引き出すように指導することが重要で、先生の役割が大切です。

Q コロナ禍で、家庭の経済格差が広がり、「学びのセーフティネットの構築」が求められています。県はどのように取り組みますか。 A 生まれた環境によらず、県内すべての子どもが、成長に応じて育っていくことが基本です。その上で、経済的に困窮している家庭に対しては、学費等の経済的な負担軽減の対策を行っています。例えば、非課税世帯に対する給付制度もありますし、コロナ禍で家計が急変した世帯には、追加で給付を行ったり、奨学金制度もコロナ禍で困っている家庭に対しては、緊急で貸し付けを行っています。

Q 人生100年時代を迎え、「教育・仕事・老後」という3つのステージの人生から、転職や学び直しを前提としたマルチステージの人生へ変化することが望まれています。ここも「働き方改革」が関係しますが、現実の雇用状況を見ると、難しいのではないでしょうか。 A 「学びの変革」の中でも、生涯にわたって学び続ける力を身に付けることが求められています。それには、私たちの年代も含め、リカレント教育を充実させていくことが大切です。例えば、大学がオンライン配信でリカレント教育を行うなど学びやすい環境整備の他、職場環境づくりや、学び直した人を活用して成長機会を追求する企業への支援も行いたいです。

出典:リビング広島Web

「広島県に生まれ、育ち、住み、働いて良かった」と心から思える広島県の実現を基本理念に掲げ、これからの10年後を展望して、新ビジョンが策定されました。湯﨑知事が持つ冊子が新ビジョンの冊子です

提供:広島リビング新聞社 (「リビングひろしま」2021年7月23日号掲載)

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