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高木ゑみさんが最後に伝えたかった「一歩幸せに近づく台所のライフハック」とは

  • 2021.7.24
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今年3月28日、料理研究家・台所改善コンサルタントの高木ゑみさんが亡くなった(享年35)。ステージ4の肺がんで闘病し、最期まで笑顔で台所に立ち続けた彼女が、本当に伝えたかったこととは――。

本書『こころが整う台所 人生を変える台所しごとのルール』(飛鳥新社)は、高木さんが闘病中に病室で書き上げた、最新にして最後の著書。

彼女が自身の経験を通じて見つけた「台所しごとのライフハック」を170個まとめて紹介している。

「本当の料理上手は『笑顔で台所に立ち続けることができる人』。いかに台所に笑顔で立つか、楽しむことができるか。台所しごとの正しいルールを伝え、自分の習慣にし、気がついたらすごく楽になっていて、自分の自由な時間が増えていますように......と願いを込めて、この本を病室で書いていきます」

本稿は、昨年12月1日に高木さんより担当編集宛に送られた最後の手稿をそのまま掲載したものという。

基礎から応用まで、170のライフハック

本書は7つのPARTからなる。巻末には作家・辻仁成さんによる特別寄稿「超前向きに生きた35歳、最後の最後までスーパーポジティブだった彼女」を収録。

PART1 道具選びのコツ
シンプルでよく使う道具だけが置いてある台所での作業は、気持ちのいいもの。いま一度、自分に本当に必要な道具は何か、点検してみよう。

PART2 献立作り&買い物のコツ
こうした作業を正しくルール化してしまえば、台所しごとは劇的にラクに。

PART3 下ごしらえのコツ
料理の工程を分解してみよう。先取りできる工程や同時に進められる作業が見えてくるはず。

PART4 調理のコツ
材料も手順もレシピ通りだったはずなのに......。実はレシピには載っていないささやかな「コツ」が、料理の決め手に。

PART5 味付けのコツ
味付けは、単純に味を足したり引いたりするだけでは決まらない。簡単な法則さえ覚えれば、すぐにひと味違うおいしさを作れるように。

PART6 保存のコツ
「見やすい」「取り出しやすい」「掃除しやすい」これが冷蔵庫収納の鉄則。

PART7 片付け・収納のコツ
台所道具の収納は「水まわり・火まわり」に分け、調理をするときの動きに合わせてしまうのがポイント。

「献立に迷ったら『生・煮・炒・揚・茹』の調理法から考える」「『もっとこういう味にしたい』を実現するには調味料の大まかな原則を知る」「保存法次第で、野菜の寿命は1週間延ばせる」......。台所しごとの基礎から応用まで、写真・イラストつきで紹介している。

台所から回す「ハッピーサイクル」

ここでは、「台所が整えば、こころまで整う」という「ハッピーサイクル」を紹介しよう。

「たとえ少しずつでも、台所を使いやすく更新していく。そんな前向きな姿勢があれば、自然と笑顔になり、人生は好転していきます。私はそんな理想的な循環を『ハッピーサイクル』(Happy Cycle)と呼んでいます」

台所を整えることから生まれる「人生のハッピーサイクル」。これには「ゼロ化」と「アップ化」の2段階の流れがある。はじめに、あらゆるムダを省く「ゼロ化」の流れを徹底しよう。

「ハッピーサイクル」の「ゼロ化」の流れ
・調理道具などを厳選して、ムダなスペースを「ゼロ化」
・探しものにかかっていた時間を「ゼロ化」
・買い物の仕方を根本的に改善して、買いすぎ・買い忘れ・廃棄を「ゼロ化」
・調理の方法も見直して、調理の時間・手間・かける労力の「ゼロ化」

これらを実践すると、気持ちはおのずと整い「アップ化」の流れに。笑顔、モチベーション、コミュニケーションの量と質がアップ。さらに自己肯定感、家族からの評価もアップするという。

高木さんは亡くなる1週間ほど前、「シングルマザー兼料理研究家の私がステージ4の肺がんと共存しながら新しい挑戦をし続ける理由」と題したオンライン講演会を開催。「誰にも予想できない絶望の瞬間は訪れる可能性があります。でも大事なのは『その出来事をどう受け止めるか?』だと思います」と、ブログに綴っている。

本書では「ハッピー」「ポジティブ」「笑顔」をたくさん目にした。高木さん自身、まさにその言葉通りの方だったのだ。息子さんとのツーショット写真は涙なくして見られないが、彼女のメッセージは読む人を元気づけるものにちがいない。

「みなさんが笑顔で台所に立ち続けられますように」

■高木ゑみさんプロフィール

料理研究家・台所改善コンサルタント。1985年東京都生まれ。慶應義塾大学卒業後、イギリス、オーストリア、アメリカへの留学で世界各国の料理に出会い、本格的に料理の道へ。大学在学中からさまざまなレストランで調理を学び、2009年エコール辻東京フランス・イタリア料理マスターカレッジを卒業。東京・中目黒で料理教室「ガルシェフ料理塾」を主宰しながら、メニュー・商品開発、出張料理、企業とのタイアップなども精力的に行う。料理をはじめ台所をきれいに保つノウハウが話題となり、生徒数1000人を超える予約の取れない料理塾に成長。昨年10月ステージ4の肺がんを告知される。今年3月28日永眠。享年35。著書に、14万部のベストセラー『考えない台所』(サンクチュアリ出版)、『もう献立に悩まない』(マガジンハウス)、『やる気の続く台所習慣40』(扶桑社)、『はかどるごはん支度』(幻冬舎)など。

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