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無観客でも「寂しくない」? 新国立競技場、24時間1137日の「ドラマ」

  • 2021.7.24
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いよいよ東京五輪が開幕。開会式が行われる新国立競技場が誕生するまでの一部始終を定点カメラで撮影した記録写真集が発売された。なんと1137日にわたって定点撮影されたという。

記録写真集『国立競技場 Construction』(河出書房新社)には、共同通信社が建設準備の始まった2016年10月から19年11月の完成まで、国立競技場に対面する河出書房新社の屋上から、24時間×1137日にわたって定点撮影された写真がまとめられている。トータル約16万枚から精選された写真の数々は、まるでドラマのように展開する。

36カ月という工期の間、この巨大で特別な建造物は、どのような工法を用い、どんな重機を使い、どれだけの企業、人員が参加して完成したのか。地盤整備から、基礎構築、スタンド建設、屋根の架構、フィールド整備、内装外装、歩行者デッキ構築、外構整備まで、さまざまな工夫と努力がつぶさに見てとれる。建築マニアには見逃せない1冊だ。

「競技場というものは、そして、たくさんの人が集まる場所というものは、人がいようといまいと、寂しくなく、温かく、やさしい場所でなければいけない。
どんな時代が来ようとも、人類にどんなことが降りかかろうと――」
(建築家・隈研吾氏「序文」より)

序文はこの競技場の設計に携わった建築家の隈研吾氏。「人が集まる場所」を作り出す、建築家としての思いが語られている。

「杜のスタジアム」のこだわり

各章の冒頭では、「杜のスタジアム」というコンセプト、「世界最高水準のユニバーサルデザイン」などスローガンの実現へ向けた様々な手法、工夫が詳細に解説される。

ほかにも、スタジアムの外周を覆う特徴的な軒庇の木々は、47都道府県で生育された木材が使用され、その産地の方角へ向けて配置されているといったエピソード、一日最大2,700人、延べ150万人もの建設に関わった作業員数、天然芝へのこだわり、観戦環境への入念な配慮等、本書ならではの知識や注目点が満載だ。

さらに、国立競技場と周辺の位置関係がひと目でわかるフォトマップや、1964年に東京五輪が開催され、2015年に取り壊された旧国立競技場についてのメモリアル・ページも掲載。国立競技場の地理・歴史についても詳しくなれる。

新国立競技場が誕生するまでの詳細な記録を追うことができる写真集。日本の技術の粋を集めたこの新競技場に多くの観客が集い、アスリートたちに大声援を送る日が待ち遠しい。

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