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「もしかして私ってHSP?」セルフ診断や正しい知識について医師に聞きました

  • 2021.7.22
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最近耳にする機会が増えたHSP。人より敏感に物事を捉えてしまい、「自分はもしかしてHSPかも」と悩んでいる人は少なくありません。 今回は「虹の森クリニック」院長・坂野真理先生にHSPについて詳しくお話をお聞きしました。

そもそもHSPって?

HSPはHighly Sensitive Person(とても敏感な人)の略で、アメリカの心理学者エレイン・N・アーロンが提唱した人間の気質に関する概念です。

子どもの場合はHSCとも呼ばれます。HSP人は、HSPではない人に比べ、視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚などさまざまな感覚刺激に敏感で、「物事を深く考える」「刺激を受けやすい」「感情的に反応しやすく共感しやすい」「わずかな刺激に対する感受性が強い」といった特徴があるとされています。

HSPは診断名ではなく、15~20%の人に見られる生まれつきの脳の特性とされており、性格のタイプとも言うべき概念でしょう。

アーロンによれば、HSPの概念は、動物の進化の過程で、脳の感覚処理感受性(Sensory Processing Sensitivity)が高まってきたとの理論に基づいています。人間だけではなく、さまざまな生き物に同様の傾向がみられ、感覚をより敏感に研ぎ澄ませることが、進化上の生き残りに必要だったとされています。

しかし、HSPが日本のメディアで非常に大きく広まっている状況と対照的に、HSPを裏付ける研究はまだまだ遅れています。ここ数年で研究論文が急速に増えてきていますが、まだしっかりとした科学的証拠(エビデンス)が十分に集まったとは言い難い段階で、世界の心理学の専門家の間でも確立した概念として広まっているとは言えません。

生まれつき不安を感じやすく、情緒不安定になりがちな気質の子どもや大人がいることは古くから知られており、関連する研究も多くあります。また、感覚過敏については、発達障がいのうち、自閉スペクトラム症の診断基準のひとつにも含まれています。これらの研究や診断名との関連性も含め、HSPに関する今後のさらなる研究の結果が待たれるところです。

自分がHSPだと気付くポイントを教えてください

アーロンが作成したセルフテストでチェックすることができます*1。

(1) 強い感覚刺激にたやすく圧倒されやすい
(2) 周囲の環境のささいな変化に気づきやすいようだ
(3)他の人の気分に影響されやすい
(4)痛みにとても敏感になりがちだ
(5) 忙しい日には、ベッドや暗い部屋など、プライバシーが保たれ、刺激から解放される場所に引きこもって過ごしたくなる
(6) 特にカフェインの効果には敏感だ
(7)明るい光、強いにおい、粗い素材の生地、近くを通るサイレンの音に圧倒されやすい
(8)豊かで複雑な内面の世界を持っている
(9) 大きな騒音を不快に感じやすい
(10) 芸術や音楽に深く感動する
(11)神経が疲れ切ってしまい、一人で過ごさないといけない時がある
(12)注意深く誠実に努力する
(13)びっくりしやすい
(14)短時間に多くのことをしなければならない時、混乱してしまう
(15)人が環境を不快に感じている時には、より快適になるようにはどうしたらいいかに気づきやすい(例えば照明や座席を変えるなど)。
(16)同時に多くのことをやるように言われるとイライラしやすい
(17)ミスをしたり、物事を忘れたりしないようにとても気をつけている
(18)暴力的な映画やテレビ番組を見ないようにしている
(19)自分の周囲に多くの出来事が起きると、不快になり神経が高ぶる
(20)空腹になると、集中が途切れたり気分が崩れるなど強い反応が起こる
(21)生活に変化があると動揺する
(22)デリケートな、あるいはわずかな匂い、味、音、絵柄に気づき、楽しむ
(23)一度に多くの出来事を体験すると不快になる
(24) 動揺したり圧倒される状況を避けることは生活の中で優先順位が高い
(25)大きな騒音や雑然とした状況などの強い刺激に悩まされている
(26)競争したり誰かに観察されたりしながら課題を行わなければならない時、とても緊張して実力を発揮できないことがある
(27)子どもの時、両親や先生から「敏感だ」「内気だ」と思われていたようだ

上記のうち14項目以上が当てはまるときにHSPに該当するとされています。また、HSPは生まれつきですので、子どもの時から続いているかもチェックする必要があるでしょう。

*1 Aron, Elaine N., and Arthur Aron. “Sensory-processing sensitivity and its relation to introversion and emotionality.” Journal of personality and social psychology 73.2 (1997): 345.

治療方法を教えてください

HSPは病気ではありませんので、治療法は特にありません。治していくのではなく、うまく付き合いながら生きていくことが大切になってくるでしょう。でも自分ひとりで対応方法を考えていくのは難しい場合もありますよね。病名の有無にかかわらずカウンセリングを行っている機関も多くありますので、利用されてみるのもひとつの方法でしょう。

自分の内面を見つめるマインドフルネス瞑想やアクセプタンス・アンド・コミットメントセラピー(ACT)などさまざまなカウンセリングの手法が役に立つかもしれません。

また、HSPの気質のある方は生きづらさを抱えているため、うつ病、不安障がい、発達障がいなど実際に診断名のつく状態の方もいるかもしれません。日々の生活や仕事に大きな支障を来たしている場合には、自分で対処しようと無理せず、専門の医療機関に相談してくださいね。

日常生活でのアドバイスがあれば教えてください

人間の五感(視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚)に関する敏感さについては、さまざまなアイテムを利用するのもひとつの方法です。例えば、最近では視覚過敏(アーレンシンドロームとも言われます)向けのオーダーメイドの眼鏡を作成してくれる場所もあります。聴覚過敏に関してはノイズキャンセラの入ったイヤホンもあります。

感覚の鋭さを逆に生かし、ふかふかの布団や好きな匂いなど、心地よい感覚を得られる環境を整え、自宅にリラックス空間を作っておくのもよいかもしれませんね。

また、人間関係においては、相手に優しくするのと同じように自分に対しても優しく接してあげましょう。例えば共感しすぎて自分がつらくなってしまうようであれば、人の悩み相談にあまり深く入り込まず、割り切って少し距離を置くことも必要でしょう。

ただ、HSPが診断名というわけではなく、確立された概念とも言えないため、どのような方法が、どこまで効果があるのかということについても、まだ研究で十分に証明されているとは言えない段階です。

筆者の個人的な意見になりますが、「自分はHSP」と感じる多くの皆さんが、自分の感覚が人と違うことを感じており、そのためにつらい思いをしているのに周囲に理解してもらえない状況にいることが多いのではないかと思います。あるいは、自分が不安を感じやすかったり、気持ちが不安定になりやすいことで人と同じ行動ができないことがあり、「なぜ自分はこうなんだろう」と自分を責めてしまう人もいることでしょう。

そのような自分の気持ちや行動に「これは〇〇だ」とラベルを付けることで、気持ちが楽になったり、周囲に理解してもらいやすくなるという効果は、HSPに限らず発達障がいや他の診断名などさまざまな用語に認められています。したがって、自分の状態に名前を付けることそのものに意味があるとも言えます。

一方で、アーロンによれば、HSPは5人に1人の割合で存在するとのことですので、世界の人口にすれば実に約16億人もの人口に見られる気質であることになります。そうなればもちろん、HSPという概念のみでその人の性格や人柄のすべてを表すことはできません。実際HSPにはいろいろタイプがあるとの説も出てきていますので、丁寧に見ていくとますますHSPにも実に多くのタイプの違いがあると言われるようになるかもしれません。そうなればHSPの概念そのものが今後変化していくかもしれません。

「HSP」であるかどうかということにあまりこだわり過ぎず、繊細な気質だからこその自分の良い一面も含めて、ありのままの自分を、否定せずにそのまま受け入れてあげられるといいですね。そして、社会の常識に合わせようとするよりは、無理せず自分を大切にしながら、自分のペースで人生を送れると良いなと思います。

周りにHSPの人がいる場合、気を付けることを教えてください

まずは、その人が日々どんな感じ方をしているのかに耳を傾けてあげましょう。ただ、HSPでない人には、実際に繊細な感覚やつらい状況を理解すること自体が難しいかもしれません。そんなときでも「そんなにつらいんだね」と気持ちに共感する一言があるとよいでしょう。

また、その人のつらく感じている状況は、努力次第で改善するというものではない可能性があります。「そんなに考え込まないで気楽にしたら」「気にしなくていいよ」という言葉掛けは、本人がしようと思ってもできないことなので、「自分は理解されていない」と感じてしまうかもしれません。

その人自身の気質を変えようとしたり、行動を変えようとするのではなく、ただその気質をそのまま「こういうタイプの性格もある」というように受け止めてあげてください。

ただし、HSPの方に気を遣うあまり、周りの方も我慢の続く生活を続けることも難しいでしょう。その人の生活のペースも、周囲の人の生活のペースも両方尊重できる方法を一緒に考えていけると良いですね。

教えてくれたのは

「虹の森クリニック」院長 坂野真理先生

出典: 美人百花.com

東京生まれ。日本医科大学医学部卒。東京大学医学部附属病院小児科およびこころの発達診療部、日本精神神経学会精神科専門医。医療福祉センター倉吉病院精神科などで勤務。この間、公益財団法人松下政経塾にも在籍。38才で英国キングスカレッジロンドンの精神医学・心理学・神経科学研究所に留学し、修士号取得。帰国後鳥取県倉吉市に虹の森クリニックを開業。2020年より英国ロンドンに虹の森センターロンドンを開設。日英両国を行き来しながら、診療や情報発信を行っている。

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