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スピンオフでも鍵を握るのは女性キャラ!? 韓国ゾンビサバイバル『キングダム』を解説

  • 2021.7.21
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『キングダム:アシンの物語』

『新感染 ファイナル・エクスプレス』を初めて観たときの衝撃は忘れられない。「パリパリ」(早く早く)の気早な文化の国から生まれた“Kゾンビ”の動きの速さには、『ゾンビ』のジョージ・A・ロメロ監督もさぞ驚いたことだろう。その斬新さに加え、コン・ユやマ・ドンソク、チェ・ウシクにチョン・ユミらの豪華俳優たちにより情に訴える家族のドラマを盛り込んできたのだから、面白くないわけがない。

その後、Netflix韓国オリジナルシリーズとして世界配信された『キングダム』は、チュ・ジフンにペ・ドゥナ、リュ・スンリョンらを迎え、人気ジャンルである朝鮮王朝の時代劇とゾンビサバイバルを融合させ、海外で人気ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』と『ウォーキング・デッド』が引き合いに出されるほど大ヒットとなった。そして、7月23日からは同作のスピンオフとなるスペシャルエピソード『キングダム:アシンの物語』が配信される。いずれも鍵を握るのは、女性キャラクターたちだ。

・BLACKPINKと並ぶ、世界が注視する脚本家キム・ウニ

今年3月8日、「国際女性デー」に合わせて米Varietyが「グローバルエンターテインメントに影響を与える女性」54人を発表した。その中で、BTSに比肩する世界的人気を獲得したK-POPガールズグループ・BLACKPINKとともに韓国から名前が挙がったのが、『キングダム』全話の脚本を手がけ、日本リメイクされたドラマ『シグナル』や『サイン』の脚本家としても知られるキム・ウニだ。さらに『キングダム』やSF映画『スペース・スウィーパーズ』を世界に紹介したNetflix韓国・東南アジア・オセアニア圏のコンテンツ部門バイスプレジデント、キム・ミニョンの名もあった。

ロールモデルは『ミナリ』のユン・ヨジョン、「モットーは、頭ではなく足を使うこと」と語るキム・ウニは、2011年から構想を温めてきた『キングダム』執筆にあたり、李氏朝鮮時代の調査に時間を費やし、現存する町や要塞を探索したり、その時代の家屋を模した中を“ゾンビ”として駆けてみたり、歴史家にインタビューをしながら当時の人々の生活や王宮の様子を語ることに心を砕いたという。

そうして生み出された時代劇ゾンビアクションスリラーは、1話あたり約2億円(20億ウォン/178万ドル)以上とされる潤沢な予算で世界観が作り込まれ、多彩な俳優たちの熱演とケミストリーによる相乗効果によって、1話約40~50分・6話を2シーズン分、映画にすればおよそ6本分の超大作を軽々ビンジウォッチさせることに成功した。

・王位争いと謎の疫病の渦中にいる2人の女性

『キングダム』では、王が病に伏し、側室の子である王子イ・チャン(チュ・ジフン)と
王妃を娘に持つ高官チョ・ハクチュ(リュ・スンリョン)との間で継承争いが激化、その一方、半島の南部では人をゾンビ化させる謎の疫病が蔓延している。保身に走る役人と食糧難にあえぐ庶民の貧困という乱世を背景に、この2つの事象がやがて結びついていく。劇中では富める者も貧しき者も、老いも若きも、男女も等しく疫病にかかり、ゾンビ化する。

その中でチョ・ハクチュの娘である王妃(キム・ヘジュン)は、継子イ・チャンよりも年下ながら父ほどの年齢の王と婚姻させられている。彼らにとって何よりも重要なのが、一族の血を受け継ぐ男児を誕生させ、次の王にすること。王妃の野心は凄まじく、冷淡で狡猾、権力を手にした父を近くで見てきたからこそ“使える人間”を見極めている。

さらに、父ハクチュも知らない恐ろしい策略を巡らせており、あくまでも血脈にこだわる父との対比が興味深い。女性として生まれたゆえに蔑ろにされてきたことへの“復讐”のようだ。『ゲーム・オブ・スローンズ』で例えてみるなら、チョ・ハクチュはさながらタイウィン・ラニスター、王妃は最後まで哀しき悪役だった、その娘サーセイを思わせる。

一方、イ・チャンと出会い、謎の疫病の蔓延を伝えるのが医女ソビ(ペ・ドゥナ)。彼女はあくまでも医療者として、噛まれると“化け物”になる疫病の原因、症状、治療法を探ろうとする。たとえイ・チャンの政敵であっても命を助け、果敢に動き回りながら王宮で起きている陰謀にも医学的見地で立ち向かっていく。そのプロフェッショナリズムがカッコよくてたまらない。

「生死草」という植物が原因で死者がゾンビ化する事実から新しい発見をしていくのもソビで、今作で一番の功労者とさえ思う。『ゲーム・オブ・スローンズ』でもっとも近いのは、アリア・スタークだろうか。どこか脚本のキム・ウニ自身とも重なって見える。

・ラブコメだけじゃない! 『アシンの物語』チョン・ジヒョンに期待

ペ・ドゥナが演じるソビは、「生死草」をさらに詳しく調べるためにイ・チャンらと北方へ向かう。そこで出会うのが、今回の『キングダム:アシンの物語』の主人公となるアシン。シーズン2の最終話ラストシーンに登場し、凜とした後ろ姿で強烈な印象を放っていた女性だ。

演じるチョン・ジヒョンといえば、モデルから女優に転身し、2003年に日本公開された『猟奇的な彼女』が大ヒットして一躍知られるように。ドラマ『星から来たあなた』の“星から来た”宇宙人(キム・スヒョン)と恋に落ちるトップ女優役でも旋風を巻き起こし、『青い海の伝説』では人魚にもなった。

ラブコメのイメージが強いが、一時期、似ていると話題となった綾瀬はるかのようにアクションもばっちりこなせる(綾瀬は『猟奇的な彼女』の姉妹作『僕の彼女はサイボーグ』で主演)。プロダクションI.Gによるアニメ『BLOOD THE LAST VAMPIRE』の実写化『ラスト・ブラッド』で海外進出、日本刀を手にセーラー服で暴れ回った。『10人の泥棒たち』では怪盗団の1人として華麗に活躍。『暗殺』では日本統治時代、強い意志を秘めた独立軍のタフなスナイパー役を熱く演じていた。次回作、チュ・ジフン共演の山岳ミステリードラマ『智異山(原題)』でもキム・ウニと続けてタッグを組む。

『キングダム:アシンの物語』では感情を抑えた眼差しを持つ弓矢の使い手となるらしく、久々のアクションに期待がかかる。幼い頃に村を襲われ、すべてを失ったアシンの深い悲しみと怒りが生死草に隠された秘密、そして疫病とどう関わっていくのか。92分の外伝エピソードも、面白くないわけがない。 (文=上原礼子)

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