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天才、それとも異端!?発明家、二コラ・テスラを映画はどう描いてきた?

  • 2021.7.10
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現在の電気の基礎である交流電流の送電システムをはじめ数多くの発明を成し得、バラク・オバマ元米国大統領や故スティーブ・ジョブズ、イーロン・マスクらから熱いリスペクトを受ける天才発明家、二コラ・テスラ。1856年7月10日生まれのニコラ・テスラは、偉大な人物として称賛を受ける一方で、“孤高”、“異端”、“狂気”といった不穏な言葉を用いて称されることもあり、その最期は栄光とはかけ離れたものだった。そんなテスラの謎めいた人物像はたびたび、映画や小説、漫画などの題材にもされている。そこで今回、テスラが登場する映画をピックアップし、それぞれの作品でどのように描かれてきたのかを紹介したい。

【写真を見る】『テスラ エジソンが恐れた天才』より、互いの顔にアイスをぶつけ合うテスラとエジソン

電力システムやラジオ、ラジコン、電気モーターといったものを発明してきた二コラ・テスラ(『テスラ エジソンが恐れた天才』) [c] Nikola Productions, Inc. 2020
電力システムやラジオ、ラジコン、電気モーターといったものを発明してきた二コラ・テスラ(『テスラ エジソンが恐れた天才』) [c] Nikola Productions, Inc. 2020

栄光を手にしながらも寂しい晩年を過ごした二コラ・テスラ

本題に入るまでに、二コラ・テスラの生涯についておさらいする。1856年にオーストリア帝国(現在のクロアチア共和国)に生まれたテスラは、1884年にアメリカに渡り、トーマス・エジソンの会社「エジソン・マシンワークス」で働き始める。そこで交流による電力システムを推奨するテスラだったが、直流を推し進めるエジソンと対立。雇用条件の問題もあり、2人は袂を分かってしまう。独立した彼は同じく交流での事業展開を進める実業家のジョージ・ウェスティングハウスと連携し、かの有名なエジソンとの「電流戦争」が過熱していく。

ウェスティングハウスの協力で交流電力システムを設計したテスラ。そのシステムがナイアガラの滝に設立される水力発電所に採用され、1893年にはシカゴ万国の電力システムも交流に決定し、2人はエジソンに完全勝利する。その後もテスラは様々な発明に取り組み、1900年ごろからは世界規模の無線通信システムを構築し、巨大な送電塔を介して世界中で情報を共有することで無限のエネルギーを供給するシステムの開発に没頭していく。

ところが、ライバルがテスラの無線技術を使って大きな成果を上げたため、資金提供を断たれてしまい破産申告を受けることに。その後はノイローゼにも苦しみ、1943年に60年近く住んだニューヨークで、冠状動脈血栓のため86歳で貧しく孤独に、その生涯を閉じている。

テスラの繊細な内面にも迫る(『テスラ エジソンが恐れた天才』) [c] Nikola Productions, Inc. 2020
テスラの繊細な内面にも迫る(『テスラ エジソンが恐れた天才』) [c] Nikola Productions, Inc. 2020

人智を超えた装置を開発する『プレステージ』版のテスラ

『ダークナイト』(08)や『TENET テネット』(20)のクリストファー・ノーラン監督が、ヒュー・ジャックマンとクリスチャン・ベールの共演で手がけた『プレステージ』(05)。クリストファー・プリーストの小説「奇術師」を原作とし、19世紀末を舞台に、2人の人気マジシャンの確執や難解なトリック合戦が展開される。

華やかな演出で観客を魅了するアンジャー(『プレステージ』) [c] Touchstone Pictures. All rights reserved.
華やかな演出で観客を魅了するアンジャー(『プレステージ』) [c] Touchstone Pictures. All rights reserved.

脱出マジックや瞬間移動といったマジックやジャックマンとベールの演技バトル、ノーランらしい時系列が複雑に絡み合ったストーリーが見どころの本作だが、テスラも重要人物として登場している。しかも演じているのは、言わずと知れたロックレジェンド、デヴィッド・ボウイ!

過去の出来事から互いを激しく憎み競い合う、「偉大なるダントン」のステージネームで人気のマジシャン、アンジャー(ジャックマン)と「教授」と呼ばれるボーデン(ベール)。ボーデンが披露した完璧な瞬間移動を目の当たりにしたアンジャーが、彼に対抗するため協力を求める相手がテスラだ。

『プレステージ』でテスラを演じるのはデヴィッド・ボウイ [c] Touchstone Pictures. All rights reserved.
『プレステージ』でテスラを演じるのはデヴィッド・ボウイ [c] Touchstone Pictures. All rights reserved.

劇中でのテスラは、エジソンとの競争に追われ、アメリカのコロラド・スプリングスにある山奥の発電所のような荒れ果てた施設で隠居生活を送っている。ロンドンのアルバートホールで大がかりな装置(テスラコイル?)を使ったクリーン・エネルギーの発表会を行うシーンもあるが、エジソンからの中傷行為で登壇を断念したり、彼が放った刺客から追われる身だったりと電流戦争による軋轢にも触れられている。

一方で、遠く離れた発電所から電気を供給し、地面に埋め込むだけでいくつもの電球を発光させるなど、その才能と実力は本物。詳しくはネタバレになるので説明できないが、アンジャーに提供した装置も人智を超えたとんでもないもので、彼への置き手紙で「これは壊せ。悲劇をもたらすだけだ」と言い残している。その手紙にはほかに、「非凡や驚異は科学界では認められない」とも記しており、多少のファンタジーを含みながらも、科学への純粋過ぎる探求心ゆえに周囲から孤立していったテスラの憂いを感じさせる。

テスラが開発したとんでもない装置とは?(『プレステージ』) [c] Touchstone Pictures. All rights reserved.
テスラが開発したとんでもない装置とは?(『プレステージ』) [c] Touchstone Pictures. All rights reserved.

エジソンとの対立、資金難に苦しむ姿も描く『エジソンズ・ゲーム』

『ドクター・ストレンジ』(16)のベネディクト・カンバーバッチが主演を務め、『マン・オブ・スティール』(13)でゾッド将軍を演じたマイケル・シャノンや「X-MEN」シリーズのニコラス・ホルト(ビースト役)、スパイダーマン役で人気のトム・ホランドといったアメコミ俳優たちが共演したことでも知られる『エジソンズ・ゲーム』(19)。「電流戦争」にエジソン(カンバーバッチ)とウェスティングハウス(シャノン)の視点から迫った本作にももちろん、テスラ(ホルト)は登場する。

エジソンとウェスティングハウス、テスラによる電流戦争を描いた『エジソンズ・ゲーム』 [c] 2018 Lantern Entertainment LLC. All Rights Reserved
エジソンとウェスティングハウス、テスラによる電流戦争を描いた『エジソンズ・ゲーム』 [c] 2018 Lantern Entertainment LLC. All Rights Reserved

天才発明家として名を馳せ、大量の発電機が必要とされる“直流”による送電方式にこだわるエジソンと、遠くまで電気を送れて安価である“交流”が優れていると考えるウェスティングハウスの対立や、交流を危険視するエジソンのネガティブキャンペーンが描かれる本作。テスラはこの2人の間を渡り歩いていくわけで、彼がエジソンの会社を訪れ、面接を受けるところも確認できる。そこからすでに、直流派のエジソンと交流派のテスラの意見はぶつかっており、提示された報酬額も低廉だったため不満げな顔を見せている。

エジソンのもとでテスラは、交流の利便性を訴えるも聞く耳を持ってもらえず、5つの課題をクリアすれば5万ドルを支払うという約束も「あれは冗談だった」と反故にされてしまう。その後は投資家の出資を受けて独立するも事業がうまくいかず、クビを宣告されただけでなく特許も奪い取られるなど、ウェスティングハウスに出会うころにはすっかり落ちぶれた姿に。それでも、ナイアガラの滝を使った電力システムをウェスティングハウスに熱弁する姿は意欲にあふれており、数百万ドルの報酬で彼と契約を結ぶことに成功する。

ニコラス・ホルト演じるテスラ(『エジソンズ・ゲーム』) 写真:SPLASH/アフロ
ニコラス・ホルト演じるテスラ(『エジソンズ・ゲーム』) 写真:SPLASH/アフロ

エジソンとウェスティングの物語が中心ではあるが、すばらしいビジョンは持っていてもそれを発揮する場所がなく、通貨やビジネスシステムに翻弄されるテスラの苦労も短い時間ながら本作ではしっかりと映しだされている

謎めいたテスラの実像に独自の視点で迫る『テスラ エジソンが恐れた天才』

上記2本では重要なキーパーソンというポジションだったテスラだが、彼を主人公にその苦悩と悲哀に満ちた半生に迫った伝記映画が『テスラ エジソンが恐れた天才』(21)だ。テスラ役は『ブルーに生まれついて』(15)で実在のトランペット奏者、チェット・ベイカーを完璧に演じきった名優イーサン・ホーク。そのライバル役のエジソンには、「ツイン・ピークス」シリーズなどのカイル・マクラクランがキャスティングされている。

【写真を見る】『テスラ エジソンが恐れた天才』より、互いの顔にアイスをぶつけ合うテスラとエジソン [c] Nikola Productions, Inc. 2020
【写真を見る】『テスラ エジソンが恐れた天才』より、互いの顔にアイスをぶつけ合うテスラとエジソン [c] Nikola Productions, Inc. 2020

物語の前半はテスラとエジソンの関係性に深く切り込み、敵対しつつも科学者として互いに強く意識する複雑なつながりが示唆されている。さらに、電流戦争に勝利したあとのテスラの活躍も描かれ、学会から無視されてきた彼に大学から名誉学位が授けられ、大富豪や有名俳優とも知り合いになるなど、一躍時の人に。しかし、高周波の電磁パルスによる情報の送電システムの研究にのめり込んでいくなかで、しだいに孤独への道を突き進んでいく。

テスラを演じるイーサン・ホーク(『テスラ エジソンが恐れた天才』) [c] Nikola Productions, Inc. 2020
テスラを演じるイーサン・ホーク(『テスラ エジソンが恐れた天才』) [c] Nikola Productions, Inc. 2020

本作では繊細すぎるテスラの内面も浮き彫りに。長身で美男子だった彼は女性人気も高かったが、性的関心がなく、生涯独身だったと言われている。劇中では、大富豪のJ・P・モルガン(ドニー・ケシュウォーズ)の娘、アン(イヴ・ヒューストン)やフランス人女優のサラ(レベッカ・デイアン)とも親しくなるが、テスラは研究一筋で自分の流儀でしか近づけない。出資者たちの政治的駆け引きや歪んだ人間関係にもさらされ、精神的に疲弊してしまう姿はなんとも痛々しい。

怪しげな装置の前で佇むテスラ(『テスラ エジソンが恐れた天才』) [c] Nikola Productions, Inc. 2020
怪しげな装置の前で佇むテスラ(『テスラ エジソンが恐れた天才』) [c] Nikola Productions, Inc. 2020

インターネットやスマホも登場する斬新な演出

監督を務めるのは、シェイクスピアの戯曲を原作としながら舞台を現代に置き換えた『ハムレット』(00)と『アナーキー』(14)でホークとタッグを組んだマイケル・アルメイダ。斬新な演出は本作にも生かされており、アンがノートパソコンでインターネットを参照したり、エジソンがスマホをチェックしていたりと、現代文明の機器が突然登場しては観る者を驚かせる。これには様々な解釈ができるが、おそらく、テスラの先鋭的なビジョンを表現したものだと考えられる。

なぜかノートパソコンやインターネットも登場(『テスラ エジソンが恐れた天才』) [c] Nikola Productions, Inc. 2020
なぜかノートパソコンやインターネットも登場(『テスラ エジソンが恐れた天才』) [c] Nikola Productions, Inc. 2020

もしもこの世に存在していなければ、現代の私たちの暮らしが成り立たないとも言われる二コラ・テスラ。時にマッドサイエンティストとも呼ばれてしまうが、今回紹介した作品を観れば、彼が不器用ながらも科学に真摯に向き合ってきた人物であることがわかるはず。天才であり孤高、一筋縄ではいかない彼のキャラクターが多くの人々を惹きつけるのだろう。

文/サンクレイオ翼

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