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「怒りをぶつける相手を常に探している」キレる高齢者に共通する特徴3つ

  • 2021.7.3
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キレる高齢者や暴走老人といった言葉をよく耳にする昨今。アンガーマネジメントの専門家、安藤俊介さんは「高齢者が怒りっぽくなるのは個人的な理由があり、キーワードは“執着”“孤独感”“自己顕示欲”の3つだ」と指摘する――。

※本稿は、安藤 俊介『怒れる老人 あなたにもある老害因子』(産業編集センター)の一部を再編集したものです。

机の上に手を置くシニア
※写真はイメージです
高齢者が怒りっぽくなる個人的な理由①“執着”

まずは「執着」です。執着の強い人は怒りっぽくなります。特に過去の成功体験、愛着への執着は高齢者を怒りっぽくさせます。

執着を国語辞書で引くとこうあります。

“一つのことに心をとらわれて、そこから離れられないこと。”(デジタル大辞泉)

もともとは仏教からきている言葉とも言われていて、修行の障害になる悪い心の動きを指しています。

いろいろなことに執着がある人は、大切にしていることが多い人です。

それだけ大切にしていることが多ければ、その大切なものが脅威にあう機会も必然的に多くなります。となれば、怒りを使う機会も増えます。他の人からすればどうでもいいように思えることでも、本人にとってはなんとしてもしがみついていたい大切なものなのです。

それが攻撃されるようなことがあったり、否定されるようなことがあれば、怒りをもって全力で闘おうとするでしょう。

「実家の片づけ問題」の原因は“執着”にあり

年老いた両親の住む家は放っておけば、ゴミ屋敷とまではいかなくても、いつの間にか物で溢れます。それを片付けようとして、親と大喧嘩になるのが、よくある「実家の片付け問題」です。「実家の片付けほど大変なものはない」と言う人もいうくらいの問題です。

実家の片付けの時に喧嘩の種になるセリフが、「どうして勝手に捨てるの⁉」です。片付けに行ったこちらからすれば、明らかにゴミと思えるようなものでも、親にとってはとても愛着のあるものだったりします。それはすでに使えなくなっているし、実用的な価値が見つけられなくても自分が楽しかった頃、苦しかった頃の人生をともに経験をしたということで愛着を感じています。それを捨てることには非常に大きな抵抗を感じるのです。

50歳になる子供の工作をとっておく親

50歳にもなる子供の幼稚園の頃の工作も実家には残っています。片付けをしていれば、一瞬は手を止めて懐かしさにひたることもあります。もしかすると本人にはその頃の記憶はないかもしれません。ほとんど壊れているその工作は確かに思い出の品ではありますが、とっておく程のものではないと思えます。でも、親からしてみれば、自分の子供が可愛くて仕方がなかった頃、一生懸命つくって家に持って帰ってきた頃のことを覚えています。

手芸のワークショップ
※写真はイメージです

高齢者になると少し前のことは忘れても、昔のことはよく覚えているということがよくあります。

何かに執着することが悪いこととは思いません。執着があるからこそ、それを守るために生きる活力が生まれることもよくあります。ただし、行き過ぎた執着は無駄な怒りを生むことになり、その怒りによって余計な問題を起こしてしまうことを忘れないようにしたいものです。

高齢者が怒りっぽくなる個人的な理由②“孤独感”

次に「孤独感」です。孤独も高齢者を怒らせるものとして大きな理由です。

自分が孤独であることを好んでいる人は問題ないのですが、望んでいないのに孤独だと感じている人は怒りについて問題を抱えることになります。

孤独感は家族がいても、友人がいても、職場があっても関係ありません。たった一人でいても孤独感を感じないどころか、それを楽しい、居心地が良いと感じる人もいます。逆に周りに人が多くいればいるほど、孤独を感じることもあります。孤独とはその場にいて自分の居場所がないと感じることです。

なぜ孤独感がマイナス感情になるのかと言えば、次にあげる「自己顕示欲」にも関係してくるのですが、人は常に大なり小なり誰かに認められたいと思っています。人に認められることで自分の存在価値を確認しています。

孤独感の強い人は、誰かに認めて欲しい、受け入れて欲しいと思っているので、自分が認めてもらうために余計なことをしてしまうことがあります。

自粛警察は孤独を紛らわせる手段

孤独感の強い人にとって一番怖いのは無視されることです。無視されれば、より孤独感は強くなります。だから、いろいろなことに関わろうとします。ただ、誰しも負け戦はしたくないので、自分が正しい、反論をされないと思えるチャンスを探しています。

安藤 俊介『怒れる老人 あなたにもある老害因子』(産業編集センター)
安藤 俊介『怒れる老人 あなたにもある老害因子』(産業編集センター)

コロナ禍になり登場した「○○警察」と呼ばれるような人達は、正義というわかりやすい大義名分の下に自分の孤独を紛らわせる手段として、誰かを攻撃しているように見えてなりません。

例えば自粛警察であれば、本当に自粛していないことが許せないのではなく、都合よく攻撃できる対象であれば誰でもいいのです。なので、次から次へと違う○○警察が生まれ、常に怒りをぶつける誰かを探し続けていくのです。

孤独感に対する一番の特効薬は「自分で自分のことを認められるようになること」です。

今の自分はこのままでOKと自然と思えれば、特に誰かから認めてもらえなくても、承認をしてもらえなくても問題とは思いません。

自分の評価は自分でする

ところが私達は自分で自分のことを評価することに慣れていません。物心ついた頃から誰かに評価してもらうことに慣れています。親から、先生から褒めてもらうことで自分が正しいということを実感してきました。会社に入れば、上司からの評価で自分がやっていることが正しいのかどうかを確認しています。

世間にはいろいろな物差しがあり、いつもそれらの物差しと比べて今の自分がどうであるかと比較をしています。学歴、年収、会社、友達の数、家族、住んでいる場所、持っている物等々、今のあなたであれば、これくらいのものを持っているのが普通ですよという物差しが社会のどこかにあって、何となくそういうものだと思っているので、その物差しにあった行動をしようとします。ところがそうした物差しを全て満たすことなど到底できるはずもありません。けれど世の中の物差しを意識すればするほど、評価に満たないことがわかり、自分は認められていないと孤独感を強めてしまうのです。

高齢者が怒りっぽくなる個人的な理由③“自己顕示欲”

そして「自己顕示欲」です。自己顕示欲は承認欲求の一つとして考えられています。自己顕示欲に明確な定義はありませんが、あえて定義するなら「自分のことを認めて欲しいがあまり、周りに対して、やや過剰とも思える自己主張をすること」です。

さらには自己主張するだけでなく「何かしらの行動を起こし、その見返りを欲しがること」です。

先程の「孤独感」とこの「自己顕示欲」はコインの裏表のような関係です。孤独感が強いから自己顕示欲により誰かに受け入れて欲しいと行動するとも言えますし、自己顕示欲が強いから周りから煙たがられ孤独感を強めているとも言えます。

孤独感の強い人にとって無視はとても怖いことと書きましたが、自己顕示欲の強い人にとっても怖いのは無関心の対象になることです。自分に関心を持って欲しいがために、必要のないことにまで首をつっこんだり、口出ししたりします。

誰でも誰かの役に立ちたいと思っていますし、いつまでも自分が必要な人でいたいと願っています。

“定年退職”や“免許返納” 社会的役割を失う恐怖

一般的に言えば、歳をとっていけば、それまで担っていた社会的な役割から外れることが多くなります。

会社の中にいれば役職定年があります。もう少し歳をとれば定年がやってきます。今は定年までいられるかもわからず、50歳ともなれば早期退職の対象になることも珍しくはありません。

今まで自分こそは会社の中で役に立つ存在、社会的にも認められる存在と思っていたところに厳しい現実を突きつけられます。

今はかなりの年齢まで肉体的には元気でいられるので、これまでと何ら変わらない働きができるはずなのに、役割を外されることに憤りを感じます。まだまだ若い世代には負けないという自負もありますし、その自分を役割から外すという仕組みに怒りを感じます。

社会的な役割を失うことへの怒りは高齢者の免許返納問題にも見ることができます。近年、高齢者による自動車事故が社会問題化していることもあり、免許の自主返納について警察庁はじめ啓発活動を行っていますが、なかなかそう簡単にはいきません。家族も高齢の親を説得し、なんとか免許の返納を促そうとしますが頑として譲りません。

免許を自主返納することで公的身分証明書として使える運転経歴証明書を交付してもらう制度やメリットなどを訴えますが、そうしたメリットでは補えないものがあります。

公共交通機関の発達していない田舎であれば物理的に難しいという理由もありますが、それ以上に社会的な立場を失うことへの疎外感、抵抗感の方が圧倒的に強いと言えるでしょう。

「自分の時代はこうだった」がいまだに根付いている

人は社会的な存在でありたいし、また自分が人生で得た知見を生かして誰かの役に立ちたいと思っています。

ところが今、若い世代に昔の話をしても、時代遅れの自慢話、時代が違ったから通用したやり方、時代錯誤の根性論と思われることが多く、どうかすれば老害扱いです。

動物は基本的には生殖機能がなくなれば寿命が尽きます。

ところが人間は、男性も女性も生殖機能を終えてからも長生きをします。これは歳を重ねることで得られる知見を年下に伝えたり、子育てに参加することで、より子孫を繁栄させやすくするためという説があります。

三世代同居が当たり前の時代であれば、おじいちゃん、おばあちゃんの役割は家族の中ではとても大切でした。ところが核家族化が進み、子育て情報などが充実してくると、親に子育てを頼らなくなります。

自己顕示欲が強く変化に疎い人は要注意

むしろ、昔ながらの子育ての間違いに気づいたり、時代遅れと一蹴する風潮さえもあります。となると、昔の子育て話をしても疎ましく思われるだけです。

自分達が作り上げてきた経験、知見を伝えたくても、伝えるチャンスに恵まれません。

自分が若かった頃は先輩を大事にし、アドバイスを聞いてきたのに、自分がいざその立場になったら、お払い箱のように扱われる始末です。

そこで「自分には自分の人生がある。マイペースでいこう」と思える人もいれば、認められない悔しさから、より認めて欲しいと行動に移す人もいます。

そうした人は自己顕示欲の強い人ですから、認められない、受け入れられないことで人と揉めることがあるのは想像に難くありません。

自己顕示欲の強い人にとって、自分の存在が小さくなることは許せず、怒りを持つ大きな理由になるのです。

安藤 俊介(あんどう・しゅんすけ)
日本アンガーマネジメント協会代表理事
アンガーマネジメントコンサルタント。怒りの感情と上手に付き合うための心理トレーニング「アンガーマネジメント」の日本の第一人者。ナショナルアンガーマネジメント協会では15名しか選ばれていない最高ランクのトレーニングプロフェッショナルにアジア人としてただ一人選ばれている。主な著書に『アンガーマネジメント入門』(朝日新聞出版)、『あなたのまわりの怒っている人図鑑』(飛鳥新社)、『私は正しい その正義感が怒りにつながる』(産業編集センター)等がある。著作はアメリカ、中国、台湾、韓国、タイ、ベトナムでも翻訳され累計65万部を超える。

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