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「レディー・我々」「言い訳大臣」…敏腕コピーライターが"嫌いな人"にあだ名をつける理由

  • 2021.7.3
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誰しも必ず持っている「好き」と「嫌い」の感情。「嫌い」の感情は特に、目を逸らしたくなるもの。人気コピーライターの阿部広太郎さんは、感情に素直に向き合うための一風変わったワークショップを行っています――。

※本稿は阿部広太郎『それ、勝手な決めつけかもよ? だれかの正解にしばられない「解釈」の練習』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。

動揺カップルの議論
※写真はイメージです
「好きな人」「嫌いな人」に名前を付けてみよう

素直な感情を自覚するためにやっているワークショップがある。

「好きな人」と「嫌いな人」に名前をつけてください。

「好き」と「嫌い」は、言葉になりにくい感覚的な部分も多いけれど、「好きな人」と「嫌いな人」であれば比較的イメージしやすいのではないか?

自分の気持ちを一度見つめてみよう、というのが狙いだ。止められてもまるで磁石のように引き寄せられていく「好き」という感情。一方で、1ミリでも遠ざけたい、そうはなりたくないと心から叫びたくなるような「嫌い」という感情。

磁石のN極とS極のような、両極端にある感情を見つめることで、自分が浮き彫りになっていく感覚がある。

生きてきた中で、出会ってきたたくさんの人たち。「好きだなあ」としみじみ思う人もいれば、一方で、「二度と会うもんか、嫌いだ!」と思う人もいたはず。これは決して、好きな人、嫌いな人の実際の名前を書いてください、という問いかけではない。

自分の内面をのぞき込むように「好きな人」と「嫌いな人」を思い出していく。

そして、心に浮かんだその人物像に名前をつけてみたい。

それはどんな人なのか?

「好き」や「嫌い」は、どんな共通項を持っているのか?

あなたならどんな名前をつけるだろうか?

実際にコピーライター養成講座のワークショップで名付けた例を見てもらいながら話を進めていく。

好きを自覚すると、どんどん接近することができる

好きと嫌いを判断する直感的センサーはどうして働いたのか?

そこに何があるのか、自分で言葉にしてみる。

たとえば、「好き」であれば、何が好きで、どう好きで、どんなところが好きなのか?

そして、その好きを、好きと書かずに伝えてみる。

名付けられた「好きな人」はどんな人なのか。

「創造しい人」どんな時も創造することをやめない人

「映画版ジャイアン」普段はちょっとなあ……と思っていてもいざという時、異常に頼りになる人

「実家の毛布みたいな人」まるで毛布で包まれるように、とてつもなく安心感のある人

「終日快晴」いつ会っても明るくてごきげんな人

「嫌いな人の嫌いな人」合わない人の合わない人は、きっと嫌いが一緒で気が合う人

眠っている猫
※写真はイメージです

このお題に取り組む時、まずは自分の感じたことを説明文として書き出すことがスタート地点になる。その上で、「名前をつける」という行為を通じて、自分の感情をちょっと俯瞰して見ることができる。

好きの正体が「自分のありたい姿」にも繋がる

「騒々しい」をあえて「創造しい」とするように、引用できる表現がないか?

「映画版ジャイアン」のように、有名な物語に似たような状況がないか?

「まるで実家の毛布みたい」のように、何かにたとえることができないか?

好きという気持ちを、のぞきこんだり、離れてみたりしながら、自分の好きの正体を明らかにしていく。

好き、惹かれる、という人物像が見えてきたら「こうありたい」と自分自身にリマインドすることができるし、目指す先が見えてくるとも言える。

「好き」は自覚することで、どんどん接近することができるのだ。

“どす黒い感情”と向き合えると、心が軽くなる

「嫌いな人」がどんな人なのかも説明したい。

阿部広太郎『それ、勝手な決めつけかもよ? だれかの正解にしばられない「解釈」の練習』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
阿部広太郎『それ、勝手な決めつけかもよ? だれかの正解にしばられない「解釈」の練習』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

「レディー・我々」私が! 私が! と我が強く、あまりにも主張が激しい人

「揚げ足鳥太郎」良いところに目を向けず、人の揚げ足ばかりを取ろうとしてくる人

「言い訳大臣」言い訳しているばかりか、ふんぞり返って偉そうな人

「縁の下の太鼓持ち」縁の下で支えるというより、媚びへつらってばかりいる人

「妖怪二枚舌」あっちこっちで人を欺くような都合の良いことばかり言っている人

「嫌い」という感情の取りあつかいには気をつけたい。

このワークショップをやってみて感じたことがある。

「粗探しをする人」「傲慢な人」「自慢話ばかりする人」など、ダイレクトな表現で「嫌い」を表現する人が多かった。人は、好きよりも嫌いなことを言う方が饒舌になるし、歯止めがきかなくなるのだと思う。悪口で盛り上がることも、だれしも一度は経験したことがあるのではないだろうか。

だからこそ、オブラートに包むことを心がけたい。

それはつまり、ユーモアに包むということだと考えている。

まず、自分にとっての嫌いな人とは何か?を捉える。

そこから、「レディー・ガガ」「大臣」「妖怪」のようにみんなの知っている名称にひもづけてみたり、「揚げ足鳥太郎」のように擬人化してみたり、自分の口から外に出る時に、やわらかく包む。

「ああ、なるほど!」と自分にも相手にも受け取りやすくしてあげる。というのも、「嫌いだ」というどす黒い感情は、放置しておくと炎症が広がっていくし、抱えていると支配されてしまう。棘をつくり心の中を転がり出してチクチクするし、考えたくもないのに気になってしまう。そういう時こそむしろ「嫌い」を見つめよう。

生々しい感情との対峙

「人の振り見て我が振り直せ」という言葉には、なるほど、と思う。

「嫌いな人は鏡に映った自分」という言葉もある。「そんなことあるかな?」と思うし半信半疑ではあるけど、その人を見て嫌だと思う時に自分の心の何かが反応しているのは間違いない。

似た部分があるとしても、絶対に遠ざけたいと思うにしても、それを考えることは、自分の生々しい感情と対峙することに他ならない。

そこに痛みが伴うかもしれない。けれど、正体が見えて、輪郭をつけて、言葉にできたら楽になる。

そこからさらにユーモアに包むことで、壺に蓋をして「封印」の張り紙を貼ることができたような安心感が生まれる。

「こんな人がいてね」と、身近な人に伝えたら共感が生まれてもっと楽になれるかもしれない。

阿部 広太郎(あべ・こうたろう)
コピーライター、「企画でメシを食っていく」主宰
2008年、慶應義塾大学経済学部を卒業し、電通入社。人事局に配属されるも、クリエーティブ試験を突破し、入社2年目からコピーライターとして活動を開始。「今でしょ!」が話題になった東進ハイスクールのCM「生徒への檄文」篇の制作に携わる。著書に『待っていても、はじまらない。ー潔く前に進め』(弘文堂)、『コピーライターじゃなくても知っておきたい 心をつかむ超言葉術』(ダイヤモンド社)、『それ、勝手な決めつけかもよ?だれかの正解にしばられない「解釈」の練習』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。

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