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カジュアルなのにきちんと見える「トラッド」を知ろう【お洒落さんのためのファッション用語辞典 vol.08】

  • 2021.6.22
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カジュアルなのにきちんと見える「トラッド」を知ろう【お洒落さんのためのファッション用語辞典 vol.08】
出典 FUDGE.jp

 

連載『お洒落さんのためのファッション用語辞典』では、トラッドファッションから最新のファッションまで、FUDGEでおなじみのファッション用語についてわかりやすく解説します。第8回目は「トラディショナル・スタイル(通称トラッド)」について。この連載を読んでファッション用語の背景や起源を知れば、毎日のお洒落がより楽しくなること間違いなし!

 

【用語解説】

まずは「トラディショナル・スタイル(トラッド)」を知ろう

伝統的メンズ・スタイルのことで、とくに米国東部の伝統テキスタイルをいうことが多く、アメリカン・トラディショナルともよばれる。機能的でスポーティな感覚のオーソドックスなスタイルで質感にこだわる。広く、ブリティッシュ・トラディショナルや、さらには同様の感覚をもつ女性のファッションを含めていうこともある。服装だけでなく、背景にある特有のライフスタイルを包含(ほうがん)してつかう。略してトラッドともいう。

引用:ファッション辞典 第10版 第1刷(文化出版局)

 

【2大トラディショナル・スタイル】

FUDGE GIRLのファッションにも影響絶大な2つをレッスン

私たちが「トラッド」と呼ぶ「トラディショナル・スタイル」にはいくつかの流れがあります。そのなかで世界的にもっともポピュラーで、いまだ根強いファンを持つのが前述した2つのスタイル。ここから派生して、日本国内でも「ハマトラ」「ニュートラ」などと呼ばれた独自のトラッドスタイルへ広がっていった背景がありますが、そのお話はあらためて。まずは女性のファッションにも影響を与え続ける、2大「トラッド」を学んでいきましょう。

 

♯アメリカン・トラディショナル

ひとつめは米国東部の伝統的な服装全般をさしていう「アメリカン・トラディショナル」です。なかでもFUDGE GIRLにファッションとして親和性が高いのは、「アイビー・ルック」と呼ばれるスタイルでしょう。「アイビー・ルック」とは、アメリカ東部の名門8大学(ハーバード大学、イエール大学、ブラウン大学、ペンシルベニア大学、コロンビア大学、コーネル大学、ダートマス大学、プリンストン大学)に通う学生たちが好んで着ていた伝統的なファッションのこと。レンガ造りの校舎にからまるアイビー(=蔦〈つた〉)が各大学のシンボルとなっていたことがその名の由来で、1930年代、この8校の参加によってフットボール連盟が結成された事を報道した『ザ・ニューヨーク・ヘラルド』紙のスポーツ担当記者が命名したと言われてきました。

けれどもいっぽうで「アイビー・リーグ」とは「INTER-VARIASITY」に由来という説もあり、実はこちらの説が有力ではという見方もあります。「VARIASITY」とはスポーツ競技において一軍とか代表、レギュラーといった意味で使われる言葉。前述の8大学は日本で言うところの六大学の立ち位置に近く、その8大学間の対戦試合を「INTER-VARSITY(8大学の1軍対1軍といった意)」とうたい、それを略して「I-V-Y」と呼ぶのだそうです。それを先ほどの新聞記者が「IVY」と記して報道したため、彼らのファッションが「アイビー・ルック」と言われるようになったのだとか……。

いずれにしてもこの8校は、アメリカのエリートを育成する学校としても名高く、学生たちは家柄がよく、非常に優秀です。将来社会のリーダー的な立場となることをわきまえてもいる学生たちの服装は保守的でオーソドックス、もちろん地位や家柄をあらわすかのように上質でした。それでいて学生らしい快活さもあって。まさにFUDGE GIRLのデイリーカジュアルに通じる感じがあったんです。簡単に言えば日常的でカジュアルだけれど上品。庶民もマネのしやすいこの「アイビー・ルック」は、1950年代〜60年代に入って日本にも伝えられ、大流行しました。いまだにファンが多く、「アメリカン・トラッド」、もっと簡略化して「トラッド」など呼ぶ人が多いスタイルです。

参考:ファッション辞典 第10版 第1刷(文化出版局)

カジュアルなのにきちんと見える「トラッド」を知ろう【お洒落さんのためのファッション用語辞典 vol.08】
出典 FUDGE.jp

 

♯ブリティッシュ・トラディショナル

もうひとつは「アメリカン・トラディショナル」のルーツとも言われ、すべてのトラディショナル・スタイルの本流である「ブリティッシュ・トラディショナル」です。こちらはカントリー・ライフをベースにしたナチュラルな感覚と、スポーツ・マインドの機能性重視を基本姿勢とした英国の伝統的ライフスタイルやファッションが特徴的。アーガイル、タータンなどの柄もこの「ブリティッシュ・トラディショナル」を物語るのに欠かせないものですし、男性のエレガントなスーツスタイルも「ブリティッシュ・トラディショナル」に含まれます。「ブリティッシュ・トラッド」と呼ぶ人もいます。フィールドコートやツイードのジャケット、チェック柄のパンツやスカートなど、FUDGE GIRLのワードローブの定番といえそうなアイテムのいくつかも「ブリティッシュ・トラディショナル」を象徴するアイテムなんですよ。

参考:ファッション辞典 第10版 第1刷(文化出版局)

カジュアルなのにきちんと見える「トラッド」を知ろう【お洒落さんのためのファッション用語辞典 vol.08】
出典 FUDGE.jp

 

【雑学】

映画に見る「トラディショナル・スタイル」

実際にトラディショナル・スタイルとはどんなものだったのか、「アメリカン・トラッド」と「ブリティッシュ・トラッド」の2つのスタイルがそれぞれ見られる映画をご紹介します。

 

アメリカン・トラッド
映画『のっぽ物語(原題:Tall Story)』1960年公開
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ヒッチコック監督の『サイコ』のノーマン・ベイツ役で知られるアンソニー・パーキンスが大学のバスケットボール選手役を、相手役をジェーン・フォンダが演じるラブコメディ。アンソニー・パーキンスのコットンパンツにスクールカーディガン、ホワイトバックス(靴)のハンサムなコーディネートは、公開当時、日本のお洒落な大学生の間でも話題になったそうですが、いまでもそのままFUDGE GIRLがマネできそうなキュートさがあります。ちなみにジェーン・フォンダは2015年から《Netflix》が制作するドラマ『グレイス&フランキー』にグレイス役で出演し、ふたたび大注目を浴びています。こちらでのラグジュアリーカジュアルもほんとうに素敵なので、一見の価値ありです。

 

ブリティッシュ・トラッド
『麦の穂を揺らす風(原題:The Wind That Shakes the Barley)』2006年公開
カジュアルなのにきちんと見える「トラッド」を知ろう【お洒落さんのためのファッション用語辞典 vol.08】
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第59回カンヌ国際映画祭でパルム・ドール賞(最高賞)を受賞したこちらの作品は1920年代のアイルランドが舞台。アイルランド独立戦争とその後の内戦による混乱、それらの戦いに翻弄される兄弟の姿がえがかれています。こちらでチェックしたいのは、ハンチングやツイーディーな2ピースやパンツ、ハイソックスや乗馬ブーツといったカントリームードやスポーティーさを反映しながらも整ったスタイル。男性も女性も身なりがきちんと見えます。フィールドホッケーのシーンなどもあり、ライフスタイルとファッションの関係性もうかがえますよ。

 

【FUDGE流解釈でコーディネート提案】

FUDGE GIRLがいま「トラディショナル・スタイル」を着るなら?

2つのスタイルを現代風に解釈したこんなスタイルはいかがでしょう?これなら明日からでもすぐにマネできそうですね。

「アメリカン・トラディショナル」なら……
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ロゴ入りスウェットにチェックのキュロットスカートをはく、3シーズンOKなトラッドスタイル。「アメリカン・トラディショナル」、通称アメリカン・トラッドのファッションの本筋「アイビー・リーグ」の学生たちも自分たちの大学のロゴやエンブレムがついたトップスを着ていました。

 

「ブリティッシュ・トラディショナル」なら……
カジュアルなのにきちんと見える「トラッド」を知ろう【お洒落さんのためのファッション用語辞典 vol.08】
出典 FUDGE.jp

2つの伝統的なチェック柄をあしらったステンカラータイプのコートにインディゴデニムを合わせるスタイルは、ボタンをきちんととめてきりりと着こなしたいですね。

 

 

監修:朝日 真(あさひ しん)

文化服装学院専任教授、専門は西洋服飾史、ファッション文化論。早稲田大学文学部卒業後、文化服装学院服飾研究科にて学ぶ。『もっとも影響力を持つ50人ファッションデザイナー』共同監修。NHK『テレビでフランス語』テキスト「あなたの知らないファッション史」連載。文化出版局『SOEN』他ファッション誌へ寄稿多数。NHK「美の壺」他テレビ出演。

 

illustration_Sakai Maori
edit&text_Koba.A

 

 

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