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「生」を感じる、とっておきの3冊。

  • 2021.6.20
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著者にとって初の青春小説、静謐な筆致に触れてほしい。

『泡』

高校2年生になって学校に行けなくなった薫は、大叔父の兼定が営むジャズ喫茶を手伝いながら、ひと夏を過ごす。淡々と生きているように見える兼定も、シベリア抑留から復員後、居場所がなかった東京から海辺の町に移り住んできた。不登校という言葉もまだなかった1970年代、移動すること、出会うこと、音楽に触れることで閉じていた世界がほどけていく。読むことで心が調律されていくような静謐な筆致に、新作を心待ちにするファンが多い著者の初めての青春小説。

旅するように生きている、人気漫画家の旅エッセイ。

『ヤマザキマリの世界逍遥録』

世界9カ国で暮らし、イタリア人の夫とハワイ大学に通う息子のいるこの人にとって旅は日常の延長線上にあるのかも。リオのダンスホールで古いサンバに身体を揺らしていた中年女性のカッコよさ。カイロの市場で「リラーックス」と声をかけてきたおじさんの愛嬌。旅先の出会いを切り取った挿画も楽しい。アマゾンの大自然に触れ、リスボンのイワシ祭りで舌鼓、スペインの古代遺跡を巡る。引き出しの多さにも脱帽。旅がままならないいま、余計にこのフットワークのよさに憧れる。

ガールズパワーが詰まった、フォト&メッセージ。

『わたしは無敵の女の子』

表紙の女の子はトライアスロンに挑戦している12歳のエマ。「どんなにこわくても、どうってことないって顔をしてなさい」とママに言われて、この不敵な表情。10歳のヘイリーは言う。「大切なのは人の目より中身。あたしは、気にしないことで、たくさんのつよさを見つけた」。本物の美しさとは、きれいに着かざることでも、お行儀よくふるまうことでもない。ありのままの自分でいて、その自分を大切にすること。女の子たちのいきいきとした表情とパワフルなメッセージがまぶしい一冊。

*「フィガロジャポン」2021年7月号より抜粋

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