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「金メダル連発でも政治不信は挽回できない」若者たちがそう断言する理由

  • 2021.6.20
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コロナ下で東京オリンピック・パラリンピックが開催されたら、Z世代の若者たちは期間中をどう過ごすのでしょうか。若者の価値観に詳しい原田曜平さんが、大学生9人に聞きました――。

記者会見する東京五輪・パラリンピック組織委員会の橋本聖子会長
記者会見する東京五輪・パラリンピック組織委員会の橋本聖子会長=2021年6月11日、東京都中央区

【座談会参加者】
安田 愛麻/慶應義塾大学総合政策学部3年生
鈴木 かのん/桜美林大学ビジネスマネジメント学群3年生
國武 那汰莉/立教大学文学部3年生
鈴木 俊太朗/慶應義塾大学法学部4年生
矢追 耕太郎/早稲田大学政治経済学部3年生
土井 大紀/立教大学文学部2年生
青野 弘基/専修大学経営学部2年生
森 慧太郎/青山学院大学地球社会共生学部4年生
山田 智子(仮名)

盛り上がれないなら何のためにやるのかわからない

【原田】東京五輪が開催された場合、みんなや周囲の若者たちはその期間をどう過ごすと思いますか? ほとんどの人が開催に反対でしたが、学生にとっては夏休みに入って開放感が増す時期。どうせ開催されるなら一緒に盛り上がろうと思うのか、それとも街に人出が増えるから逆に家にこもろうと思うのか。

【矢追】若者の間ではお祭り騒ぎになるんだろうなと予想しています。緊急事態宣言が延長された時も、渋谷にはたくさんの若者がいたから。開催前は反対していても、結局は渋谷でスポーツバーに集まったり外国の人とはしゃいだりすると思います。僕はおとなしく過ごそうと思ってはいますが、皆が楽しくお祭り騒ぎしていたら、やっぱり行きたいなあ、一緒に盛り上がりたいなあって気になっちゃいますね。

【鈴木俊太朗】僕も皆に混じっちゃうと思います。スタジアムには行かなくても友達とテレビや携帯で観戦する機会が増えそうです。

【山田】私も皆と盛り上がりたいという気持ちがあります。でも、思ったより簡易的な、想像よりつまらない五輪になりそうですよね。規制がかかって、あまりお祭り騒ぎができないんじゃないかなって。どうせなら盛り上がりたいのに。個人的にはスポーツにも五輪にもあまり興味がないので、盛り上がれないなら何のためにやるのかわからないです。

開催するなら飲食店は閉めてほしい

【青野】僕も心の中では外出を自粛しようとは思っても、友達や先輩に「一緒に見よう」って誘われたりしたらつられて行っちゃう気がします。だから個人的には、五輪期間中はお店を全部閉めることにしてくれたほうがありがたいです。そうすれば行かなくて当然という形がつくれるので。

【原田】でも、若者の場合はエアビーや一人暮らしの人の家に集まったりという手もあるから、お店を閉めてもあまり人流の抑制にはならないのでは? コンビニや酒店も閉めるぐらいのことをやらないと、渋谷で缶ビール片手にハイタッチとか、そういう若者が増える可能性は大いにありますよね。

【青野】確かに。お店が閉まっても友達の家には行きそうだし、家で観戦するならコンビニは絶対開いていてほしい。そうなると、缶ビール買って渋谷で騒ぐとか普通に起こっちゃいそうですね。

【原田】居酒屋だけでなくコンビニを閉めるぐらいまでやらないと、若者は抜け道を探して騒いでしまいそうだと。それはそうかもしれませんね。コンビニは売り上げが落ちているし、飲食業界は本当に長い間、めちゃくちゃ苦しんでいるから、そんなことしてほしくないしするなら大きな補償を出すべきだと思うけれど。

【土井】僕は五輪を楽しみにしていて観戦チケットも持っているので、開催されたら会場に行くのは間違いないです。でも、現時点の若者の暮らしって、授業があれば学校に行くし、ご飯を食べたかったら普通に外に出る。もうそういう生活になっているので、これは五輪期間中も、外出自粛を呼びかけられても特に変わらないと思いますね。今はスポーツイベントに行っても「これでどうやったら感染するんだろう」というぐらいきちんと対策がとられているから、自分もしっかり対策したうえで観戦に行くと思います。

スポーツ観戦する二人の日本人
※写真はイメージです
流されず自粛を続ける若者も

【鈴木かのん】私は本当にコロナが怖いので、どれだけ周りが盛り上がっていても基本的には家にいたいです。他の人とあまり接触したくないですね。

【原田】五輪期間中も引き続き外出は自粛しようという若者もいるわけですね。それに、今は昔に比べて親子仲が密接になってきているから、親に外出を止められたら言うことを聞くし、親にうつしたら悪いと考える人もいる。そういう若者はつられて騒いだりはしないのかもしれません。

選手が活躍しても盛り上がりは一瞬だけ

【原田】では次に、五輪に関して今は批判の声が多いですが、これは日本人選手が大活躍したら変わると思いますか? 今回、海外の選手はコロナ禍で入国やコンディション調整などが大変だから、日本が金メダルラッシュになるのではという予測もあります。

【土井】金メダルラッシュになったら、五輪自体は成功したということで終わるんじゃないかと思います。日本人って逆境からの復活劇が好きだから、「あんなに無理そうだったのに成功した、やっぱりやってよかったね」ってなるんじゃないかな。その後に爆発的に感染が広がったとしても、のちのちドキュメンタリー作品とかで美化される形になりそうです。

【矢追】僕は一時的には「やってよかった」と盛り上がる気がしますが、感染状況は間違いなく悪化すると思うんですよ。そうしたら、世論は「やっぱりやるんじゃなかった」という方向に戻るんじゃないでしょうか。

冬に再度の緊急事態宣言で暗いムードに

【安田】私も同じです。五輪直後は盛り上がっても、冬になったらまた緊急事態宣言が出て今度は変異株も増えて……という暗いムードになりそう。でも、若者のスポーツへの関心は高まるのかなと思います。スポーツってほとんどがテレビ中継なので、若い人はそんなに見ないですよね。私も今は水泳の池江璃花子さんぐらいしか知らないんですが、ほかの選手もメダルをとって知名度が上がったら、SNSでフォローしたりして追いかけるようになる気がします。だから、コロナ禍とは別に、選手を応援したりスポーツに熱狂したりするムードは五輪後も維持されるのかなと。

【森】僕も、金メダルラッシュで盛り上がってもそれは一時的だと思います。数年前には日本でラグビーW杯がありましたよね。その時は友達も皆ラグビーで盛り上がっていたけど、今は全然話に出ないから。それと、政治に対しては、今回の強行開催への批判は五輪直後には一時的に収まるかもしれませんが、感染者数が増えればネガティブな声も増えると思います。

【原田】しばらくは肯定的なムードが続くけど、その後は政治への批判や不信感がぶり返しそうだと。そうすると皆さんの意見としては、金メダルラッシュになっても、プラス面は若者のスポーツへの興味が高まるという1点だけと言えそうですね。

「感染拡大は若者のせい」に怒り

【原田】政治への不信感という点では、今年は衆院選というかなり大きな選挙がありますね。若者の政治離れが言われて久しいけれど、今回は五輪の強行開催やコロナ対策などで政治に不満を感じた人もいるかと思います。今回、若者の投票率は上がると思いますか?

【國武】若者の投票率はどうかな……あまり変わらない気がします。ただ、私自身は投票に行くつもりですし、LGBTQ問題や入管法改正などにどんな意見を持っているか、そこを見て選ぶと思います。

【矢追】僕は投票率は上がると思います。五輪が終わったら、きっとまた「若者が騒ぎまくってコロナが感染爆発した」「結局若者が悪い」みたいな話が出てくると思うんですよ。今までまったく政治に興味がなかった人も、そんな世間の声に対して反発というか、怒りを覚えて投票に行くんじゃないかと予想しています。

【鈴木かのん】私の周りでは最近、若者が悪いって言われたり緊急事態宣言をダラダラ続けたりされるたびに、会話の中で政治家への文句が出るようになりました。その中で「でもうちら、政治家さんたちを選ぶのに協力とかしてないしね」って話も出るようになって。文句を言うからには自分たちもちゃんと政治家を選んだほうがいいんじゃないか、そう意識する人は増えているような気がします。

何を言っても意見が通らない諦めの境地

【森】僕は変わらないと思います。そもそも政治の話って若者の間では一切出ない。政治と若者が乖離しちゃってるのかな。僕の周りは、コロナ対策に不満があっても、政治がどうってことよりコロナがクソだってことしか言わないです。政治に対しては圧倒的に知識も興味もないんですよ。だから、批判の矛先が政治家よりコロナになっちゃうんです。政治の知識がある人も少しはいるけど、「自民党の代わりはいない」って思い込んでいるところがあります。

【山田】私の周りだと、コロナへの不満と政府への不満は切り離されてるってほどではないですね。緊急事態宣言が延長されたり、若者の行動を規制するような判断が出たりするたびに、政府に怒りを覚える人が多かった気がします。でも逆に、もう諦めの域と言うか……。何を言っても宣言は延長されるし、何を言っても若者の意見は通らない。そう思っているから、今回も若者の投票率は上がらない気がします。

【鈴木俊太朗】コロナで色々な政治のボロが見えてきて、「何だこれ」って怒りを覚えている若者は結構多いと思うんですよ。でも「だからこうしたい」「こういう人に投票しよう」って、そこまでのモチベーションはまだ生まれていない気がします。だから、投票率もそこまで変わらないのかなと思っています。

【原田】コロナ禍や五輪を機に政治への関心が高まった若者もいるけれど、大多数はあまり身近に感じていないし、投票しても何も変わらないと思っているわけですね。でも、若者はコロナ禍でバイトを失ったり、感染拡大で悪者にされたりと、打撃を受けた当事者でもあるはず。皆さんの世代は数としては少ないけれど、それでも皆で行動すれば一定のインパクトは与えられると思います。少しずつ意識が高まっている、投票率は上がるだろうという意見もあったので、次回の選挙ではぜひ若者にも声をあげてほしいですね。

構成=辻村洋子

原田 曜平(はらだ・ようへい)
マーケティングアナリスト
1977年生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂に入社。ストラテジックプランニング局、博報堂生活総合研究所、研究開発局を経て、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。2018年よりマーケティングアナリストとして活動。信州大学特任教授。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。著書に『平成トレンド史』『それ、なんで流行ってるの?』『新・オタク経済』『Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?』などがある。2019年1月より渡辺プロダクションに所属し、現在、TBS「ひるおび」、フジテレビ「新週刊フジテレビ批評」「Live News it!」、日本テレビ「バンキシャ」等に出演中。「原田曜平マーケティング研究所」のYouTubeチャンネルでは、コロナ禍において若者の間で流行っていることを紹介中。

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