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リナ・サワヤマの赤裸々で強い言葉と熱意に鼓舞されて。

  • 2021.6.19
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自身の経験や想いを赤裸々に綴り、音楽に昇華するリナ・サワヤマ。その率直でパワフルな姿勢は、人種や性差別で傷ついた人を鼓舞し、その道を照らす。

Rina Sawayama|シンガーソングライター

リナ・サワヤマのデビューアルバム『SAWAYAMA』は、さまざまな物語を収めた珠玉の短編集のようだ。R&B、カントリー、ニューメタルなど、幅広くカラフルな音色にのせた詞は、彼女自身の体験やアイデンティティを宿す。「最も語りたいストーリーだったから」と言うが、その歌詞は決して明るく華やかなものではない。両親との衝突、イギリスに暮らすアジア人として受けてきた差別、疎遠になってしまった友人への懺悔のような想いが赤裸々に綴られている。

「もちろん想いを形にするのは容易ではありませんでした。でも幼い頃から歌を作り続けてきた経験が、感情をコントロールして音楽に昇華することに役立ってくれた。そして、それが私自身の癒やしにもなりました」

丁寧に描かれたセルフポートレートともいえるこのアルバムが、これほどまでに幅広く受け入れられるとは、実はリナ自身も考えていなかったという。

「とても個人的な内容だったから、ここまでの反響を想定していなかった。でもリスナーは、自身を投影できる余白を歌詞の中に見つけてくれたのだと思います」

4月には、「チョーズン・ファミリー」をエルトン・ジョンとのコラボバージョンでリリース。本来この曲は、性的マイノリティのクイアたちが血縁者以外と深い人間関係を結ぶことへの祝福の歌だ。だが捉え方によっては、異性のカップルや養子縁組の親子にも当てはまる。「シンプルな歌詞」とリナは言うが、明確な言葉で強く肯定し、美しい歌に昇華させた彼女の功績は限りなく大きい。

英国の音楽賞をも動かした、赤裸々で強い言葉と熱意。

『SAWAYAMA』は高評価ながらも、昨年、イギリスの権威ある音楽賞ブリットアワードにノミネートされなかった。その理由は、彼女が英国籍ではなかったから。リナはその失意を隠すことなくツイッターで表明。そして「ピクセル」と呼ばれるファンたちは、「サワヤマ・イズ・ブリティッシュ」というハッシュタグで彼女を支援した。今年になって、賞を運営する英国レコード産業協会は、リナとの話し合いをもとにその規定を変更。リナの言葉と彼女に同意する人々の熱意が権威を動かし、「ブリティッシュ」とはイギリスのパスポートを持つ人たちだけではないという新たな概念をも生み出した。

「大学で政治学を専攻していたこともあるけれど、ロンドンでは率直に意見を述べる友人たちに囲まれて過ごしてきました。それが、自分にとって大切な事柄は、もっとも効果的な方法で周りに伝えていくことが大事だ、という考え方に繋がっています」

彼女が美しいと感じる女性は、「私の母や祖母のように、自分をまっすぐに見つめながらもパワフルで、他人の声にも注意深く耳を傾ける人たち」。苦悩や葛藤に研磨されて、さらに光り輝くリナの感性。そこから紡がれるストーリーに、これからも耳を傾けていきたい。

DynastyAnd if that’s all that I’m gonna beWon’t you break the chain with me?…………「Dynasty」

Dynastyいずれ私もそうなるのならこの連鎖を一緒に崩さない?

Not never naturally negative,No I don’t wanna be that girl again,cos I’ve been done and beenthrough more friendsThan I can count on my fingertips…………「STFU!」

「生来のネガティブ」になんてもう2度となりたくないあの時の自分には戻りたくないからあまりにもたくさんのことを超えて両手じゃ数えきれないほど多くの人を通り過ぎてきた

「STFU!」エイベックス デジタル配信のみ

We don’t need to be related to relateWe don’t need to share genes or a surnameYou are, you areMy chosen, chosen family…………「Chosen Family」

共感のための共感はいらない苗字や遺伝子を共有しなくたっていいあなたはあなたは私のチョイス選ばれた家族

リナ・サワヤマ1990 年、新潟県生まれ。幼い頃に家族とロンドンへ移住。7歳から作曲を始め、ケンブリッジ大学卒業後に活動スタート。作詞作曲、MVも自ら手がける。ファーストアルバム『SAWAYAMA』(エイベックス ¥2,970)が発売中。

*「フィガロジャポン」2021年7月号より抜粋

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