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イラストで世界観まるわかり!『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』ガンダムはじめて講座

  • 2021.6.14
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「機動戦士ガンダム」40周年記念作品にして、宇宙世紀を舞台としたガンダム作品の最新作『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』(公開中)。本作は 『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』(88)での戦いから12年後、ジオン公国軍から派生した軍隊勢力は力を失い、表面上は戦争が無くなった時代の物語だが、そうした情勢だからこそ起こる「組織の腐敗」と人々の不満という問題がクローズアップされている。

【画像を見る】ガンダムの世界観をイラストで解説。物語は地球へ向かうシャトルの中から始まる

そのため劇中で描かれる世界の情勢は、異なる思想を持つ国家による軍隊同士の戦争状況に比べてやや複雑だ。こうした背景を持つ『閃光のハサウェイ』は予備知識を知っておいたほうが、より楽しめると言えるだろう。今回は、『閃光のハサウェイ』の理解を深めるための3つの基礎知識を紹介していく。

背景となる設定と宇宙世紀0105年の情勢

【画像を見る】ガンダムの世界観をイラストで解説。物語は地球へ向かうシャトルの中から始まる イラスト/にーやん [c]創通・サンライズ
【画像を見る】ガンダムの世界観をイラストで解説。物語は地球へ向かうシャトルの中から始まる イラスト/にーやん [c]創通・サンライズ

宇宙世紀では、地球の人口増加を解消するために、宇宙に浮かぶ人工の生活空間「スペースコロニー」に人々が移住していることが一般化し、100年以上の月日が経過している。スペースコロニーの大きさは直径6.3km、全長40kmほどの円柱状で、気候や天候はしっかりと管理され、生活環境としては快適だ。スペースコロニーは複数基ごとに地球と月の間の重力均衡点の軌道に設置され、それらのスペースコロニー群は「サイド」と呼ばれている。

スペースコロニーは住環境としては快適だが、周囲は人工物で覆われ、戦争での侵略攻撃や小惑星の衝突のような破損事故が発生すると逃げ場がなく、多くの住人が死亡してしまう危険性もはらんでいる。そして、スペースコロニーに住む宇宙生活者=「スペースノイド」にとって、最大の問題は地球連邦政府によるサイドへの抑圧。地球連邦政府は、サイドごとの自治独立を認めず、植民地のように扱い統治していた。地球上に住む一部の特権階級を持つ政府関係者が、スペースノイドに圧政を強いる構図だ。

主人公ハサウェイ・ノア。彼が月から地球へ向かうシャトルの中で、運命的な出会いを果たす [c]創通・サンライズ
主人公ハサウェイ・ノア。彼が月から地球へ向かうシャトルの中で、運命的な出会いを果たす [c]創通・サンライズ

そうした状況への反感が、ジオン公国による独立戦争=一年戦争の原因になっていく。ジオン公国は一年戦争で敗れたものの、その後も残存勢力の抵抗が繰り返され、争いは20年近く続いた。しかし地球連邦軍による残党の排除が進み、宇宙世紀0100年になる頃にはジオン公国の政治的な影響を受けた軍隊はほぼ姿を消してしる。世界は変わらず、また一年戦争以前のような状況に戻ったのが『閃光のハサウェイ』の背景なのだ。

キャラクターの関係性とその背景

ハサウェイに影響を与えた人物たちの詳細は『逆襲のシャア』を観ておくと、より理解が深まる! イラスト/にーやん [c]創通・サンライズ
ハサウェイに影響を与えた人物たちの詳細は『逆襲のシャア』を観ておくと、より理解が深まる! イラスト/にーやん [c]創通・サンライズ

主人公のハサウェイ・ノアは複雑な環境に置かれた青年である。彼は、一年戦争で伝説的な働きをみせた地球連邦軍の強襲揚陸艦ホワイトベースの艦長で、その後、地球連邦宇宙軍ロンド・ベルの司令を務めたブライト・ノアの息子。ハサウェイは、シャア・アズナブルが宇宙世紀0093年に起こした「シャアの反乱」とも呼ばれる第二次ネオ・ジオン戦争で民間人ながら戦場に身を置き、その戦いを目の当たりにした。

ジオンの名の由来となったジオン・ズム・ダイクンの息子でもあるキャスバル・レム・ダイクン=シャアは、この戦いで地球からスペースノイドを支配し続ける地球連邦政府の体制を崩壊させる作戦を決行。その作戦は、小惑星を地球へ落下させ地上を人類の住めない環境にするというもの。人類が分け隔てなくスペースコロニーで暮らす状況を無理矢理作り、格差を無くすことを狙ったのだ。

多くの戦争を経ても変わろうとしない人類に絶望し、強攻的な行動を取るシャアに対し、ライバルであるアムロ・レイは、人類にはまだ変われる可能性があると、この作戦を阻止すべくシャアと戦いを繰り広げた。一方、ハサウェイは連邦政府高官の娘ながら高い感受性を持つ少女、クェス・パラヤと出会い、彼女に惹かれていく。しかし、クェスはシャアの考えに共感し、シャアの元で戦う選択をする。ハサウェイはクェスを自分の元へ連れ戻そうとするが、戦いのなかで彼女を失ってしまう。ハサウェイは、恋愛感情を抱いた女性を失うというトラウマを抱えながらも、アムロの人類に対する考え方、シャアの世界を変えようという思想の両方の影響を受けた人物となったのだ。

ハサウェイの回想の中で登場するクェス・パラヤ(右) [c]創通・サンライズ
ハサウェイの回想の中で登場するクェス・パラヤ(右) [c]創通・サンライズ

アムロやブライトの活躍で地球は死の星となることを逃れたが、地球連邦政府の首脳陣はこの危機を経ても改心することはなかった。時は流れ、ハサウェイはシャアの思想へより理解を示し、世界を変えるための行動を起こしていく。それが、本作で重要な組織となる、反地球連邦政府運動「マフティー」だ。

進化したモビルスーツの技術

ガンダムでは、モビルスーツの進化の歴史も描かれてきており、理解するとこれもドラマチックな要素に! イラスト/にーやん [c]創通・サンライズ
ガンダムでは、モビルスーツの進化の歴史も描かれてきており、理解するとこれもドラマチックな要素に! イラスト/にーやん [c]創通・サンライズ

『閃光のハサウェイ』の舞台、宇宙世紀0105年は、政治状況が悪化しているが、「モビルスーツ」の技術はどんどん進化を遂げている。モビルスーツは、宇宙空間での戦闘で様々な戦況に対応できる汎用性の高さを求めて開発された人型兵器。もともとが無重力空間=宇宙での使用が前提で、地球での運用時には飛行できない、または制約される問題が発生する。一年戦争では、推進剤を使用して大きくジャンプすることしかできず、単独移動時は歩くしか手段がなかった。

そこから、地上での行動範囲や運用の幅を広げるための研究が進められる。当初はモビルスーツを載せて移動する輸送補助用の「サブ・フライト・システム」を使用。その後、技術革新により航空機形態や飛行形態に変形させて空中を移動する技術が登場する。しかし変形は機体構造の複雑化や整備の負担、運用性の悪さなどのデメリットも生じさせていた。

その後も「モビルスーツを単独で飛行させる」研究が続けられ、『閃光のハサウェイ』の時代には、大型の艦船を浮揚させる技術を小型化し、モビルスーツに組み込む「ミノフスキー・フライト」という技術が完成する。この技術によりモビルスーツは変形しなくても空を自在に飛ぶことができるようになったのだ。ただ、ミノフスキー・フライトはまだ初期段階のため、一部の試作機にしか搭載されておらず、それが劇中に登場する「ペーネロペー」と「Ξ(クスィー)ガンダム」になる。

ミノフスキー・フライトを内蔵した地球連邦軍のモビルスーツ、ペーネロペー [c]創通・サンライズ
ミノフスキー・フライトを内蔵した地球連邦軍のモビルスーツ、ペーネロペー [c]創通・サンライズ

劇中での他のモビルスーツとの違いが強調される戦闘シーンの背景にはこうした“技術の進化”というバックグラウンドを頭に入れておくと、より本作を楽しめるはずだ。

あらためて『閃光のハサウェイ』の概要を知る

以上が覚えておきたい3つの基礎知識である。それらを踏まえて、本作のストーリーについて触れておこう。第二次ネオ・ジオン戦争から12年後の宇宙世紀0105年。地球連邦政府の腐敗は地球の汚染を加速させ、地球連邦政府は民間人を宇宙へ連行する非人道的な「人狩り」政策を行ってきた。そんな連邦政府に対し高官を暗殺する苛烈な行為で抵抗するのが、先述した反地球連邦政府運動「マフティー」だ。そのリーダーであるハサウェイは、アムロとシャアの理念と意志を宿した戦士として道を切り拓こうとする。だが連邦軍大佐のケネス・スレッグと謎の美少女ギギ・アンダルシアとの出会いが彼の運命を大きく変えていくことに…。

これまでのガンダム作品の多くは「戦争」を主軸に物語が作られてきた。しかし、『閃光のハサウェイ』では、表立った「戦争」を描かず、戦争の後の状況が抱える政治や社会的な問題に踏み込むような物語となっている。架空の世界の社会情勢ながら、自分たちが住む現実社会とも重なる問題点をどのように受け止めるのか?今回の基礎知識をもとにモビルスーツの迫力ある戦闘を楽しむ一方で、ガンダム作品らしいリアリティと深みのある物語をぜひ劇場で味わってほしい。

文/石井誠 イラスト/にーやん

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