1. トップ
  2. 生存難易度はさらにアップ!劇場で思わず息をひそめる…『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』をレビュー

生存難易度はさらにアップ!劇場で思わず息をひそめる…『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』をレビュー

  • 2021.6.14
  • 615 views

コロナ禍で映画館が軒並み営業休止状態だったアメリカの映画館がようやく再開し、公開されるや猛ダッシュのメガヒットを記録したのが『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』(6月18日公開)だ。3年前に「音を立てたら、即死。」という超明快なコンセプトで劇場の観客を震撼させた『クワイエット・プレイス』の続編である。

【写真を見る】廃工場で出会った男、エメットは何者…?(『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』)

いったいなぜ「音を立てたら、即死。」してしまうのか?ネタバレになるので詳細は避けるが、とにかく聴覚がすぐれた恐ろしい“なにか”が、どこからともなく襲いかかり、瞬殺で命を奪ってしまうのだ。電話などの通信手段は失われ、孤立しながらもかろうじて生き残った主人公一家は、無人の町を裸足で歩いて食料や医療品を集め、農場に閉じこもるように暮らしている。しかし、一家の母親は妊娠していて出産間近。まともな医療設備もない民家で、はたして音を立てずに出産するなんて可能なのか!?

前作で出産という無理難題に直面した母エヴリン(『クワイエット・プレイス』) [c] 2018, 2019 Paramount Pictures.
前作で出産という無理難題に直面した母エヴリン(『クワイエット・プレイス』) [c] 2018, 2019 Paramount Pictures.

1作目で、人類に降りかかった滅亡の危機に加えて、“音を立てずに出産”という不可能なミッションを抱えた一家の父親と母親を演じたのは、私生活でも夫婦である、Amazonドラマ「トム・クランシー/ CIA分析官 ジャック・ライアン」の主人公などで知られるジョン・クラシンスキーと、『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(14)や『メリー・ポピンズ リターンズ』(18)のエミリー・ブラント。さらにクラシンスキーにとっては初の監督作であり、まさに二人三脚で新感覚スリラーの傑作を生みだしたことになる。

観客の間に生まれる「一緒にサバイブしよう!」という一体感

過酷な世界を生き抜くため一家は移動を開始(『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』) [c]2021 Paramount Pictures. All rights reserved.
過酷な世界を生き抜くため一家は移動を開始(『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』) [c]2021 Paramount Pictures. All rights reserved.

「クワイエット・プレイス」シリーズには、ぜひ映画館で鑑賞してほしい理由がある。通常なら映画館では静かにするのがマナーだが、ホラーやパニック映画は、大勢の観客と一緒に怖がったり、時には悲鳴をあげて楽しんだりすることも許されるジャンルだ。ところが『クワイエット・プレイス』は、「声を出したら死ぬ!」という緊張感がビシビシ伝わってくるので、観客も必死に息を殺して観てしまうのだ。

スクリーンの中の家族も客席で観ているわれわれも、「決して声を出してはいけない」というルールを共有し、「一緒にサバイブしよう!」と一体感に包まれる。これほどまでにストイックな空間が生まれ、登場人物と観客が一つになれる作品も珍しい。映画を観終えた時には戦友同士のような絆すら生まれているという、アトラクション的エンターテインメントなのである。

ケガをしてしまった長男マーカスも家族のために奮闘する(『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』) [c]2021 Paramount Pictures. All rights reserved.
ケガをしてしまった長男マーカスも家族のために奮闘する(『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』) [c]2021 Paramount Pictures. All rights reserved.

もう一つ、『クワイエット・プレイス』には惹き込まれずにはいられない理由がある。究極のピンチを前にした家族の心情描写が、あまりにもリアルに迫ってくることだ。なんとしても子どもを守ろうと悲痛な決意を固める母親と父親、弟たちのためにしっかりしようと踏ん張る長女、恐怖を克服できずに悩む長男、そしてまだ幼すぎて危機的状況がのみ込めていない次男。どこにでもいるごく普通の家族だからこそ、彼らの頑張りに感情移入してしまうのだ。

“音を出さない”難易度がさらに増した第2作

そして、絶賛を浴びた前作に続く第2弾では、出産ミッションはなんとか乗り切ったものの、自分たちの家を失い、いつ泣き出すかわからない赤ん坊を抱えており、“音を出さない”ことに対する難易度がさらに増している。そこで、いままでは篝火を焚いて安否を確認していたご近所さんに助けを求めようとするのだが、ご近所さんにも抱えている事情があり、家族は分散して行動することになってしまう…。

【写真を見る】廃工場で出会った男、エメットは何者…?(『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』) [c]2021 Paramount Pictures. All rights reserved.
【写真を見る】廃工場で出会った男、エメットは何者…?(『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』) [c]2021 Paramount Pictures. All rights reserved.

主人公家族に襲いかかるのは、物理的な危険だけではない。農場の外の勝手がわからない変貌した世界、誰を信用していいかわからない生存者同士の疑心暗鬼、そしてなによりも、家族を想い、守りたいと願うがゆえにお互いの気持ちが行き違ってしまうことだ。誰もが家族を大事に思っているだけなのに、今回はそれぞれが決断を迫られる。

応援せずにいられない!子どもたちの活躍

耳が不自由な長女リーガンの視点で映される、緊張感に満ちた映像も必見(『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』) [c]2021 Paramount Pictures. All rights reserved.
耳が不自由な長女リーガンの視点で映される、緊張感に満ちた映像も必見(『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』) [c]2021 Paramount Pictures. All rights reserved.

今回、前作以上に大きな役割を担うことになるのが、長女のリーガン(ミリセント・シモンズ)と長男のマーカス(ノア・ジュプ)だ。聴覚障害というハンデを抱えたリーガンの決死の冒険と、ビビりがちなマーカスの精神的試練が物語の核となっている。

前作のラストで、父親とともに“なにか”の弱点を見つけたリーガンは、世界を救う方法があるのではないかと考える。しかし親にとっては世界よりもリーガンの命の方が大切。結局リーガンは母エヴリンを振り切り、たった独りで外界に飛び出していくのである。

今回のマーカスは重症を負い、ほとんど動くこともままならないのだが、イヴリンともども絶体絶命の境地が訪れる。もはや選択肢は、諦めて殺されるか武器を取って戦うかしかない。リーガンにせよマーカスにせよ、まだ幼い彼らにはあまりにも過酷な状況だが、彼らの決意が、自分だけでも家族だけでもない、希望を未来につなぐことになるのである。

つまり本作は、生きる決意をした子どもたちの勇気と成長の物語なのだ。非力だが健気な彼らの奮闘を、誰が応援せずにいられましょうか!?

ほかの生存者が多数!?彼らとの出会いによって物語は大きく動きだす(『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』) [c]2021 Paramount Pictures. All rights reserved.
ほかの生存者が多数!?彼らとの出会いによって物語は大きく動きだす(『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』) [c]2021 Paramount Pictures. All rights reserved.

ちなみに本作の原題は『A Quiet Place PartⅡ』。この「PartⅡ」は「第2章」を意味しており、すでに「第3章」が構想されていることを主演のエミリー・ブラントがインタビューで明かしている。本作が全米で大ヒットスタートを切ったことで、3作目が製作される可能性はさらに高まった。2作目のスケールアップを思えば、観客の期待値も上がる一方だろう。

コロナ禍によって日本の映画興行も打撃を受け、観客側の気持ちも以前とは同じではなくなってしまっているが、『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』は劇場でしか味わえない興奮を約束してくれる作品だ。しばらく劇場から遠ざかっていた映画ファンにも、改めて映画館で映画を観る楽しみを思い出させてくれるに違いない。

文/村山章

元記事で読む