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バレエのオリンピック!? 「世界バレエフェスティバル」

  • 2015.6.29
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3年に一度、日本を舞台に開催される「世界バレエフェスティバル」は、世界の名だたるバレエ団からスターを集めて開催されるガラ公演だ。

第13回WBFカーテンコール photo:KIYONORI HASEGAWA

ガラ公演、というのは、いろいろな作品のクライマックスシーンを集めて行う公演のこと。クライマックスシーンには、フェッテ(回転)やジャンプなど超絶技巧の数々や、情緒あふれる表現がどっさり組み込まれている。つまり、多彩な名作の名場面を、代わる代わる登場するスターたちの名演技の連発で、楽しめてしまうのだ。


■こんな豪華なラインナップ、日本でしか見られないのでは?

「世界バレエフェスティバル」は1970年代にスタートし、かつてはジョルジュ・ドンがM.ベジャールの名作『ボレロ』で日本中を熱狂させた。後にシルヴィ・ギエムも数回参加しているが、私は黒髪のボブスタイル(ウィッグ)に黒いチュチュをまとい、不敵な笑みを浮かべながら凛と踊った『グラン・パ・クラシック』が今でも忘れられない。バレエってこんなに凛として、カッコいいんだ!! と鳥肌が立った。私のバレエファン道(??)はここからスタートしたといってもいい。

スティーヴン・マックレー『海賊』 photo:KIYONORI HASEGAWA

歴史に名を刻む大スターたちがもれなく参加している「世界バレエフェスティバル」だが、14回目を迎える今回は、新旧さまざまなスターが肩を並べている。

往年の大スター、偉大なバレエ・マスターとしても活躍する(元パリ・オペラ座エトワール、現ウィーン国立バレエ団芸術監督)マニュエル・ルグリや(元ベルリン国立バレエ団プリンシパル・芸術監督)ウラジーミル・マラーホフ、この春パリ・オペラ座を退団したばかりのオーレリー・デュポンも参加。英国ロイヤルバレエ団で活躍していた時代から、圧倒的なテクニックと安定感でサプライズを繰り広げてきたイングリッシュ・ナショナル・バレエのタマラ・ロホは『黒鳥のパ・ド・ドウ』を再び見られるというのもワクワクする。

一方でオペラ座の新しいエトワール、アマンディーヌ・アルビッソン、透明感あふれる繊細な表現で高く評価されている英国ロイヤルバレエのサラ・ラムなど今回初参加のスターの瑞々しい輝きにも期待したいところ。

参加するスターたちの出身カンパニーは、世界三大バレエと称されるマリインスキーバレエ団、パリ・オペラ座バレエ団、英国ロイヤルバレエ団はじめ、シュツットガルト、ハンブルグ、モーリス・ベジャール、アメリカンバレエシアター、イングリッシュ・ナショナル・バレエなどなど、名だたるバレエ団を網羅。


■成熟した感性が醸し出す表現と、瑞々しいテクニックの応酬と

ダンサーたちは(基本的に)Aプログラムと、Bプログラム、それぞれ異なる演目で参加し、最終日にはフィナーレを飾るガラが行われる(......フィギュアスケートのコンペティションで家、エキシビションに当たるものととらえていただくとわかりやすいかも)。

ラインナップされている演目は、『白鳥の湖』『ジゼル』『ドン・キホーテ』のような古典作品から、『椿姫』『マノン』『ロミオとジュリエット』などドラマティックバレエまで、幅広い。もちろん参加するスターは今のバレエ界を代表する面々、めったにない機会である。いつの日からか、ファンの間で「バレエのオリンピック」なんて呼ばれるようになったのも然り、である。

オーレリー・デュポン『アザー・ダンス』 photo:KIYONORI HASEGAWA

個人的には、この春、惜しまれながらパリ・オペラ座バレエ団を引退したオーレリー・デュポンの踊りをここ日本で見られること、しかも演目には期待のエトワール、エルヴェ・モローとの『マノン』もあるというから得した気分で嬉しい。大人の女性の愛と苦悩を描いた『オネーギン』、『椿姫』の、魂を揺さぶるようなパ・ド・ドゥを、それぞれ本家本元のバレエ団(前者はシュツットガルト、後者はハンブルグ)のプリンシパルが魅せてくれるのも楽しみ。さらには世界の至宝と称されるウリヤーナ・ロバートキナ(マリインスキー)の『瀕死の白鳥』も見られる!!

......他にも、ふだんなかなか日本では見られない作品からの抜粋もたくさん。チャイコフスキーをはじめ、バレエ音楽に触れることができるのもまた楽しい。中には「あっ、このメロディ、このバレエ作品で使われていたのか」というものもあるだろう。


■こうした機会を、ぜひバレエに親しむ入り口として活用してほしい

実は私個人はというと、ガラを観るより、ひとつの作品を頭から最後までじっくり味わう方が好き。特に物語性の強い作品では、演じる主役たちがその役柄をどうとらえ、自分の身体になじませているのかを、ストーリーをなぞる中で味わうことができるから。

でも、そうわかるようになったのは、何度かバレエ公演に足を運んでからのこと。やはり私も最初は何を観たらよいかわからなかったが、こうした一流のダンサーが集まるガラ公演を観ることによって、ダンサーたちの魅力や、舞踊芸術の素晴らしさに目覚めて(......というか憑りつかれて)いったのだ。だからこそ、バレエを観てみたいけれど、何から見てよいかわからない、という人には一度の公演でいろんな作品に触れることができるこういう機会はとても良いチャンスだと思う。人によって、様式美に乗っ取った古典バレエ(たとえば『白鳥の湖』)が好きな人もいれば、身体を饒舌に操りながら感情に訴えかけてくるドラマティックバレエ(たとえば『椿姫』)が好きな人もいる。自分の好みの傾向をこうした機会に知り、今後のバレエ鑑賞の目安にするのは、効率のいいバレエ鑑賞のスタートにもなる。

コジョカル&コボー「ロミオとジュリエット」 photo:KIYONORI HASEGAWA

......なんてことはさておき、これだけの面々が日本に集まるなんてことはまずないのだから。身体が奏でる、多彩な言葉と深みのある物語。それが舞台空間に拡がり、客席へとひたひた押し寄せてきたとき、私たちがふだん使っている"言葉"がいかに薄っぺらいものか、きっと感じていただけることだろう。

第14回 世界バレエフェスティバル
日程:Aプログラム/2015年8月1日(土)〜6日(木)、Bプログラム/8日(土)〜13日(木)、ガラ公演/16日(日)
会場:東京文化会館
料金:S席¥26,000、A席¥23,000、B席¥19,000、C席¥16,000 ※ガラ公演は別料金
●問い合わせ
NBSチケットセンター
Tel.03-3791-8888
http://www.nbs.or.jp/stages/2015/wbf/

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