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『コントが始まる』は解散をポジティブに描く? 中村倫也とマクベスの関係が伝えること

  • 2021.6.7
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『コントが始まる』(c)日本テレビ

『コントが始まる』(日本テレビ系)が最終話を迎える6月19日は、劇中でマクベスの解散ライブに設定されている日でもある。第1話で解散を決めたトリオのその後の道のりを、2カ月の間、視聴者と併走しながら見せてくれている本作。第8話は、マクベスの存在をかたどるように、彼らと関わりを持った周縁の人物たちのドラマが描かれる。

瞬太(神木隆之介)がバイトする居酒屋「ボギーパット」に訪れたマクベスのマネージャー・楠木(中村倫也)は、初めてマクベスの3人と会った日のことを思い出していた。楠木は前々からこの居酒屋の常連客。なんでも、最初はゴルフが好きだから店名に惹かれて入ってみたという(でも大将はゴルフが嫌いだった)。当時フリーで活動していたマクベスと芸能事務所のマネージャーとの関係はそんな偶然から始まった。

事務所に所属するようになってからは、「4人目のマクベス」と言ってもいいほど親密になり、同じ未来を見据えるようになる。ネタの方向性や単独ライブでのネタ順をともに決め、稽古を見てくれと言われれば朝まで付き合うこともあった。青春時代に戻ったような日々。しかし結果が出ないまま2年3年と月日は経過し、マクベスの3人との距離感も徐々に遠のいてしまう。「マクベスを最初に諦めてしまったのは、俺だったのかもしれない」。そう楠木が語るように、熱意が失われていく虚しさのなかに身を沈めていたのかもしれない。しかし第2話では相談なしに解散を決めてしまった彼らに寂しさを覚えながら引き止める場面もあり、マクベスの可能性をいちばん信じ続けてきた人であることに違いはなかった。

第8話の終盤には、楠木が解散ライブのネタ順を提案する場面が用意されていた。ずいぶんと時間は空いてしまったものの、マクベスと楠木の信頼関係はなくなっていなかった。その紙に記されていた10のネタ順は、これまで『コントが始まる』の開幕コントを飾ってきた順番そのもの。第10話は新ネタの「引っ越し」で閉じられることが予言される。楠木が再びマクベスにアタックしてみたのには、会社の面接にやってきたつむぎ(古川琴音)の存在も大きかったのではないだろうか。「私が絶対に甲子園に連れていくんだって気持ちで、一緒に戦ってましたから」と、つむぎは高校時代のマネージャー経験を自信満々に振り返っていた。

ネタ順を確認した春斗(菅田将暉)はすかさず「俺これでいいと思います。ありがとうございます」と答える。そこには、ずっと側で見てきてくれたことへの感謝と、何よりも優先すべき強固な信頼のつながりが垣間見えた。

楠木とマクベスの関係によって示された、「評価されなくても誰かが見てくれている」という救い(掬い)と、「自分の感覚、直感を信じる」というマインドは、第8話のとても大事なテーマだった。

誰かが見てくれている。それはたとえば、父親にガミガミ言われているところを横で庇ってくれる潤平(仲野太賀)の姉(木村文乃)の存在。コント師として頑張ってきた10年も決して無駄ではなく、酒屋の仕事にもきっと活かされると彼女は強く主張してくれる。

里穂子(有村架純)とつむぎの関係性にも、やはりそうした信頼関係がある。「マネージャーになったら?」という姉のふとした言葉(でも決して適当に言っているわけではない時間をかけたアドバイス)を受けて、つむぎは楠木が務める会社に入社した。

里穂子が“マクベス部部長”として彼らを応援している行為もまた、「誰かが見てくれている」ことをずっと体現し続けている。ファンになることや誰かを真剣に推すという行為まで肯定してくれているドラマだ。

楠木がふらっと直感に従って入った居酒屋でマクベスと出会ったように、里穂子もまた、受付に生け花が飾ってあったことに惹かれて受けた会社で素晴らしい出会いがあるかもしれない。大事なのは、自分の感覚を信じること。何に心を奪われているのかじっくり考え、誰の言葉を信用して生きていくかを見極めること。ひとりきりで生きていくには心もとないこの世界で、それでも仲間と離れ一歩踏み出してみることの意味。ひと組の姉妹の別れ、そしてもうすぐ離れ離れになるマクベスの3人の姿には、離れてもなお決して消えることのない連帯が貫かれている。解散や別れがポジティブに映り出しているのは、登場人物たちの顔が自信で満ちてきているからだ。 (文=原航平)

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