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2021年は菅田将暉イヤーに! スターにもバイプレイヤーにもなれる、特異な才能を読む

  • 2021.6.6
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『コントが始まる』(c)日本テレビ

ある作品で少年のような表情を見せたと思えば、また違う作品では年相応の落ち着いた雰囲気を醸し出す。ミステリアスでクールな二枚目を演じたかと思えば、ばかに実直で泥くさい三枚目にも成り代わる。脇に立てば主演を引き立て、主演に立てば驚異的なスターパワーを放つ。菅田将暉という俳優を見ていると、俳優に必要な素質とはどんな役柄にも染まりながらも決して“個”を崩さない、“汎用性と独自性の両立“なのだと改めて感じてしまう。

現在放送中の日本テレビ系列ドラマ『コントが始まる』では、鳴かず飛ばずのお笑いトリオ「マクベス」のメンバーのひとり高岩春斗を演じている菅田。今年1月に公開され大ヒットを記録した『花束みたいな恋をした』では2010年代カルチャーにどっぷり浸かった主人公を演じ、6月11日から公開される『キャラクター』では殺人事件を目撃したことから売れっ子漫画家への扉を開いてしまう漫画家を演じるなど、この上半期だけを掬いあげてもすべて違うタイプの菅田将暉がそこに存在し、その一方で常に菅田将暉以外の何者でもない無二の才を見せつける。

そんな菅田のキャリアを振り返ってみれば、たしかにデビュー作が『仮面ライダーW』という時点で、スター俳優特有の我の強さを持たない俳優に成長するということは証明されていたといえよう。見せ場となる場面では顔が隠れ、“仮面ライダー”というヒーローそれ自体に真実味を持たせなくてはならない。同シリーズでは平成期に入ってから副次的に主人公格の俳優人気が高まり、若手男性俳優のブレイク登竜門的な位置付けになったわけだが、オダギリジョーや佐藤健、瀬戸康史に竹内涼真と、たしかに他の“ライダー出身俳優”も皆、与えられた役に染まりきることができるセンスの持ち主ばかりだ。

また菅田の映画出演歴をたどってみると、ひたすらそのバラエティの豊かさに驚かされる。『暗殺教室』での赤羽業や『銀魂』での志村新八といった“番手役”で良い味を出し、『帝一の國』や『アルキメデスの大戦』では一風変わった主人公を演じる。その一方、青山真治監督の『共喰い』における負のエネルギーを爆発させるようなナイーブさや、原作コミックから飛び出してきたようなエキセントリックな魅力を放った山戸結希監督の『溺れるナイフ』と、強烈な作家性に満ちた世界観にもうまく浸透していく。もちろんそれは抜群のコメディセンスをもって演じた福田雄一監督の『明烏 あけがらす』でも同様だ。単なる“カメレオン俳優”ではなく、もはや俳優としての技量を測るための“基準点”のようなものが存在していないということが、菅田の特異性というわけだ。

それが最も顕著に現れていたのはやはり、キネマ旬報ベスト・テンから日本アカデミー賞に至るまであらゆる映画賞を総なめにした『あゝ、荒野』だろう。前後篇あわせて約5時間に及ぶ長尺の中にありとあらゆるテーマが詰め込まれており、当然キャストが優れていなければ保たれないし、だからといって1人のスターパワーで押し通せるはずもない。菅田はそのなかでヤン・イクチュンとW主演を張り、共演者たちの魅力をしっかりと引き出しながらもここぞという時に観客をぐっと惹きつける爆発力をもって寺山修司の精神性を体現していく。『前篇』のクライマックスの時点で、もうこの俳優に不可能はないのだと確証が持てたほどだ。

インパクトのある役柄ならば、そこにのめり込むようにして入り我が物にする。そうでない役柄であれば自然体にこなし、作品全体の偏差値を高める役割を果たす。森川葵と共演し、フェデリコ・フェリーニの『道』にオマージュを捧げた『チョコリエッタ』でのちょっと変わった先輩役や、同世代の俳優たちと共演して切磋琢磨する姿を映した『キセキ ~あの日のソビト~』あたりがその代表的な例か。シンプルな役柄の中に「本来の菅田将暉はこういう雰囲気なのだろうか」と思える瞬間が何度も見え隠れするのだから興味が尽きない。前述した『あゝ、荒野』で役作りのために増量したというエピソードがあったから言うわけではないが、まるでロバート・デ・ニーロのような俳優という表現が一番しっくりくる。

もちろんその才は、スクリーンだけでなくテレビドラマにおいても健在だ。『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』(日本テレビ系)の柊一颯しかり、『MIU404』(TBS系)の久住しかり。むしろそういったインパクトのある役柄が続いたからこそ、現在の『コントが始まる』でのこの上なくナチュラルな素振りが魅力的に見えるのだろう。ここでもまた、プライベートでも親友という仲野太賀と繰り広げる、アドリブなのか台本通りなのかわからない絶妙な掛け合いに自然体な空気が宿り、それが作品をおもしろくおかしく見せていく。しかも共同生活する部屋のシーンで上半身裸でウロウロしているときに見せる、『あゝ、荒野』の時とはまるで違う、いかにも栄養状態の足りなそうな肉体。そんな些細なところにまで売れない芸人っぽさを表現しているのか。

2021年という“菅田将暉イヤー”はまだ折り返し地点にも立っておらず、下半期もまだまだ続く。山田洋次監督が手がける『キネマの神様』では、志村けんに代わって沢田研二が演じる主人公の青年時代を演じ、10月には20年以上前にカルト的人気を博した『CUBE』の日本リメイク版で主演を張る。そんなことを書いていたら、ちょうど来年1月から放送されるドラマ『ミステリと言う勿れ』(フジテレビ系)で月9初主演を果たすという報せが。来年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で源義経役を演じることも決まっているので、もしかすると“菅田将暉イヤー”は2022年も続くのかもしれない。 (文=久保田和馬)

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